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ソフトバンクの22年3月期Q1は、増収増益の滑り出し

 ソフトバンクは、2022年3月期第1四半期決算を発表した。売上高は1兆3566億円、営業利益は2831億円と前年同期比で増収増益の滑り出しとなった。

 発表の場には、ソフトバンク 代表取締役社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏が登壇した。宮川氏の同社社長就任以来、自身がリードした年度として初めて決算発表の場となった。

ソフトバンク 宮川氏

増収増益、純益は減

 2021年度Q1の売上高は1兆3566億円。LINEの子会社化や携帯電話端末の販売回復が主な要因となり、前年同期比で16%の増収を達成した。

 セグメント別の要因では、コンシューマーが6932億円(前年同期比+11%)で、そのほかヤフー・LINE関連は3734億円で前年同期比+36%と、全セグメントで増収を果たした。

 営業利益は、2831億円で前年同期比では1%の増益を果たした。コンシューマー事業は、1845億円と前年同期比で3%の減益となった一方、法人事業は23%増益しており、コンシューマー事業のマイナスをカバーする形になった。

 純利益としては、減益しており宮川氏は、法人所得税の増税によるところが大きいと説明。「1年目のスタートとしては、まずまずの結果と思う」と評した。また、通期業績予測としては、順調な進捗という。

 セグメント別の営業利益は通期予想に対して、30%程度の進捗で「引き続き気を緩めることなく実現していく」とコメントした。

携帯販売が大きく回復

 コンシューマー事業は携帯電話端末の回復により11%の増収を果たした。2020年は新型コロナの影響が大きく、営業活動の遅れから伸び悩んだものの、2021年はそれらが回復したことにより増収に貢献した。

 一方で、モバイル収入は、携帯電話料金の値下げの影響が出たため減収。これについて宮川氏は、期初に年間で700億円の減収をすでに見込んでおり、こうした結果についても想定内と語った。

 営業利益については、料金値下げによるARPUの低下により減益した。スマートフォン累計契約者数は前年同期比で168万件増加し、7%増となった。累計の契約者数の増加に大きく貢献したのがワイモバイル。ソフトバンクからの移行が多く、グループ外への流出が抑制できているとした。

 他社からの転入も好調とした上で、21年度Q1の3カ月で10%増加したと明かした。ワイモバイルでは「データくりこし」を導入。さらなる競争力強化を目指してデータ増量オプションの改訂を予定している。

LINEMO

 一方、オンライン専用プランのLINEMOでは、小容量ニーズに対応した新料金を導入。MVNO並の価格を実現した。これについて宮川氏は「利用者アンケートでもう少し安価な価格帯がほしい」という声があったことを明かし、グループ外への転出を防ぐためにミニプランの提供へ踏み切ったと説明。

 「思いの外、マーケットにウケたため、他社からの流入が勢いづいてきた」としながら「これまでは、プライスリーダーだと言いながらも守りに入っていた部分があった。一度原点に戻り、攻め側に回ろうということで、今回の動きになった」と語った。

 小容量帯では、ワイモバイルが強くLINEMOの契約数は50万未満とも明かされた。これを踏まえて宮川氏は「ワイモバイル+LINEMOが我々の低料金ユーザー。700万+数十万がそのゾーン」とした。

 このほか、ソフトバンクでんきの累計契約数は188万契約となり、前年同期比で45%増となった。同サービスの契約数が明かされたのは今回が初。スマートフォンとのセット契約が解約の抑止力として働いているという。

法人事業

 法人事業の売上は、1715億円と前年同期比で6%の増収。ソリューションなどに限れば9%の伸びを見せた。営業利益は385億円で前年同期比で23%の増益だった。

 「法人ビジネスモデルは、この数年で大きく転換してきている」と宮川氏。これまでの通信の単体販売から、企業の経営課題を解決するソリューション提案を積極的に推している。

 ソリューション等の売上において、クラウドやセキュリティなど「継続収入」と位置づけられるものは全体の7割を締める。継続収入は年数を経るごとに比率が増加しており、安定的な業績拡大に貢献しているという。

 宮川氏は「これからの法人事業の成長に大きく貢献する礎になる」とした。

LINE子会社化により増収

 ヤフー・LINE事業については、売上高は3734億円と前年同期比で36%の増収。LINEの子会社化によるところが大きく、営業利益は1%増益。LINE子会社化による会計上の費用増があったもののそれを吸収した形となる。

 「1%の増益じゃ物足りないぞ、と言われるかもしれませんが、70億円の増加。率でいうと14%とビジネスとしては堅調に成長している」と語った。

 EC取扱高は6%増。2020年はコロナ禍の影響もあり、大きく伸びていたが今年も上回った形。

 また、スマホ決済サービス「PayPay」はユーザー数4000万人を突破。宮川氏によれば、2021年度Q1の決済回数は7億9000回と前年同期比で1.8倍向上した。「PayPayがスーパーアプリ化を目指す上で重要」という宮川氏。アプリを開く頻度が増えることで、画面内のみにアプリの誘導線に沿ったアプリ経済圏が広がっていくと説明。まずはたくさん使われるアプリになる必要があるとした。

 今後も決済回数を重視し、「最も使われる決済手段として末永く育てていきたい」と語った。

 決済取扱高は1兆2000億円。宮川氏は2022年度にPayPayの連結子会社化を検討していることを明かした上で、順調な基盤づくりができたとした。

QRコード決済の世界展開

 このほか、NAVERとの連携としてブロックチェーン技術への取り組みを開始。TBCASoftへの共同出資を発表した。

 TBCASoftは、QR決済の国際ネットワークを提供する企業。各国のQRコード決済事業者と連携し、自国で普段使っている決済アプリを旅行先の国でも使えるようにするといった構想が進んでおり、現在台湾の決済サービス事業者2社と取り組みを進めている。

質疑応答では

――だいたいどのような水準で値下げによる影響が出ていて、これ以降どうなっていきそうか

宮川氏
 Q1はでの値下げの影響は100億円ちょっとくらい。通常、Q1は一番影響を受けやすい。Q2になっていくと150億円をちょっと超えるくらいになっていく。それがだんだん横ばいになって影響を受けていく。ただ、秋にはiPhoneがあり、潤沢に供給されるのであれば、端末買い替えが加速する。そうなれば数十億円程度のさらなる減収を可能性として織り込んでいる。

――解約率が上がっているが、この背景は?

宮川氏
 解約率は悪化してヒヤッとしていた。4月までは他社のキャンペーンがあった。5月以降は落ち着いており、想定の範囲内まで来ている。今の解約率の状態は我々も重要なKPI(重要業績評価指標)と認識している。重視して経営をしていく。

――値下げの影響は100億円とのことだが、ソフトバンクが減っているのか、ワイモバなどの値下げの影響か?

宮川氏
 各ブランドのARPUは正直言って異なる。ソフトバンクユーザーで、価格に敏感な方はワイモバイルに移動することが多い。それによりARPUは下がるため、全体のARPUも下がる。LINEMOもソフトバンクからの移行が多い。ARPUとしては100円くらい減少した。

――5G化によるトラフィック増加などプラスの影響はあるのか?

宮川氏
 端末が5G対応になっているので、ユーザーはどんどん増えている。今は5G基地局が1万3000局を少し超えたところ。4Gは23万局なので、まだまだエリアは少ない。これを来春までに人口カバー率90%を目指して工事中。5万基地局くらいになる。そうなってくると5Gクオリティのトラフィック増加は自然に増えてくる。段々とソフトバンクの大容量プランへ戻ってくる方いると考えている。5Gは今年からSA化することで、IoTデバイスが増えてくると思う。これまでのコンシューマー事業に匹敵する規模になると考えている。

――端末販売について

宮川氏
 リアル店舗とオンラインは客層が全く違う。米国でもオンラインは伸びているというが、我々もオンラインでできるものはそれでという風に強化している。しかし実際に店舗で話をしながら端末を購入したいという声も多く、リアル店舗はコストも掛かるが維持し続けたいと考えている。そのバランスはオンラインが増えていくと思うが、最後の最後まで店舗がゼロになるということは想定していない。

 地方での店舗維持はコストがペイできるだけの費用対効果ということに尽きる。地方創生のデジタル化でつまずくのは、スマホの普及率が低いということ。ありとあらゆる手を使ってやったのがキャリア共同での店舗。自治体をデジタル化する際に受け手の市民がスマホを持っていないというようなことにあらゆるプロジェクトでぶつかる。これの解決として、地方でのスマホ教室が有効。その中で出た答えが店舗をぜひ残してくれということだった。

――総務省の販売店評価制度や在り方の議論についての受け止めは

宮川氏
 当初、ソフトバンク・ワイモバイル間の売上の点数の違いは正直言ってあった。これは全部是正して体制は整えたつもり。こういうご指摘については真摯に受け止めて常に改善していく。今が100点満点だとは思わない、指摘があればどんどん改善していく。

――半導体不足での影響はどう見込んでいるか?

宮川氏
 基地局については影響を受けていない。これからの一番の心配は、iPhone。(アップルが端末供給について)これから苦しいという会見をされていたので、供給が間に合うかが心配。

――5G基地局展開で行政指導を受けているがその後順調か?

宮川氏
 お恥ずかしい限り。確認不足だった。基地局の解説計画は地域ごとに立ち上げる予定数を申請し、ライセンスをもらっている。基地局の合計数は達していたが立ち上げるべきエリアで足りず、逆に多すぎるエリアがあった。コロナ禍で調整がリモートでうまく行かなかったという言い訳をするつもりはなく、私の確認不足だった。

 取りこぼしがあったエリアは、リカバリーした。来春までに人口カバー率90%を目指すこととしているが、今のところ順調と確認している。計画を修正する状況にはない。

――プラチナバンドの再割当ての議論があるが

宮川氏
 900MHz帯をもらうのに6年がかりで、ありとあらゆる勉強をさせてもらった。大量トラフィックの時代になると、キャパシティがたくさんできたので結果的には感謝している。プラチナバンドの再編成については我々にもユーザーがいる。使っているユーザーとの会話も必要でぜひ丁寧に行ってほしい。基地局も作ったら終わりではない。ソフトウェアのアップデートをしている。期限があまりにも短い割当をさせるとソフトの更新が滞り、サービス劣化も危惧される。

 周波数全体がキャリアにわたすと、既得権益的に一旦もらったものが5年毎に常に更新されるのではなく、ある程度次の事業者も使えるチャンスがどこかのタイミングであるべきという議論をしている。それをどう実現するかを議論しているのが現状。プラチナバンドが欲しい方の気持ちは、自分もそうだったからよく分かる。しかし、使えるようにするにもいろいろな汗を流してきたところがある。(プラチナバンドが)ないから欲しいというだけでは議論にならないかなと思うのが正直なところ。