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5G通信、4キャリアの評価はいかに? 英オープンシグナルの調査

 英国・ロンドンに本社を置くオープンシグナル(Opensignal)は14日、「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート 2021年10月」と題し、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの通信サービスに関するレポートを発表した。

 同日には「日本の5G体感およびモバイル・ネットワーク・ユーザー体感調査」に関するオンライン会見が行われ、Opensignalの分析担当バイスプレジデントであるイアン・フォッグ(Ian Fogg)氏と、同社ジャパンカントリーマネージャ―の内田真二氏が登壇した。

オープンシグナルについて

 会見ではまず、内田氏がオープンシグナルに関して紹介した。同社は世界中のネットワーク事業者に関して独自の分析を実施し、ユーザー体験に関して”真の見える化“の実現に取り組む。

 オープンシグナルが実施する調査の大きな特徴のひとつとして、「独立性」が挙げられる。内田氏は、「調査の実施や分析レポートの作成にあたって、特定の事業者から資金提供を受けているようなことは一切ない」と強調する。

「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」

 内田氏によるオープンシグナルの紹介に続き、フォッグ氏が2021年10月の「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」に関して紹介した。

フォッグ氏

 オープンシグナルは今回、6月1日~8月29日までの90日間にわたって、日本の4Gと5Gネットワークに関する調査を実施し、レポートを作成した。

 調査対象は、ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル。調査は実際のデバイスを使って実施され、部門別にユーザー体験が評価された。結果として、それぞれのキャリアが異なる賞を受賞した。

 ドコモは「ダウンロード・スピード・エクスペリエンス」で賞を受賞した。オープンシグナルの調査によれば、ドコモの平均ダウンロードスピードは52.4Mbpsとなっている。

 そしてauは、「4G利用率」で賞を受賞した。「4G利用率」は、ユーザーが4Gネットワークに接続できた割合を指しており、4キャリア中で最も高い数字となった。

 ソフトバンクは「ビデオ・エクスペリエンス」「ゲーム・エクスペリエンス」に加え、楽天モバイルとともに「音声アプリ・エクスペリエンス」で賞を受けた。なお「音声アプリ」は、LINEやFaceTimeなどを指している。

 楽天モバイルは先述の音声アプリ部門と「アップロード・スピード・エクスペリエンス」の2部門で受賞した。平均ダウンロードスピードは4キャリア中最下位となったが、平均アップロードスピードは頭ひとつ抜きん出る結果となった。

「5Gエクスペリエンス・レポート」

 続いてフォッグ氏は「5Gエクスペリエンス・レポート」の紹介に移った。日本国内で4Gから5Gへの移行が進んでいることを踏まえ、各キャリアの5Gサービスの状況が調査された。

 「5Gエクスペリエンス・レポート」では、ドコモが「5G利用率」「5G到達率」で賞を受賞した。

 ソフトバンクが受賞したのは、「5Gビデオ・エクスペリエンス」「5Gゲーム・エクスペリエンス」「5G音声アプリ・エクスペリエンス」。このうち、「5Gビデオ・エクスペリエンス」は楽天モバイルとの同時受賞となっている。

 楽天モバイルは、「5Gビデオ・エクスペリエンス」に加えて「5Gダウンロード・スピード」「5Gアップロード・スピード」でも賞を受賞した。

「5G利用率」「5G到達率」

 ドコモが受賞した「5G利用率」は、ユーザーが5Gネットワークに接続している時間の割合のこと。また、「5G到達率」は、ユーザーが5Gネットワークに接続できた場所の割合を示している。

 ドコモは「5G利用率」で3.1%のスコアを記録。また、「5G到達率」で10段階評価中2.2という評価を得て、両方で4キャリア中トップとなった。

 フォッグ氏は、「5G到達率」の評価が0.3となった楽天モバイルについて、「(楽天モバイルに関しては)5Gネットワークのローンチが他社と比べて遅かったことに加えて、既存の4Gネットワークの拡大に注力してきたことが影響した」とコメントした。

「5Gビデオ・エクスペリエンス」

 「5Gビデオ・エクスペリエンス」では、5G対応のスマートフォンを持っているユーザーの動画視聴体験が評価された。評価スコアは100ポイントが満点となっており、75ポイントを超えると「Excellent」と評価される。

 この部門で同時受賞したソフトバンクと楽天モバイルに関して、フォッグ氏は「ソフトバンクのスコアが78.6、楽天モバイルが74.9と開きがあるように見えるが、両者のスコアは統計的には同点。これは、5Gでビデオを視聴した楽天モバイルのユーザーが少なく、ユーザーごとのスコアが大きく異なったため。将来的に5Gのユーザーが増えれば、状況はまた変わってくる可能性がある」とコメントした。

「5Gゲーム・エクスペリエンス」

 「5Gゲーム・エクスペリエンス」では、マルチプレイヤーのモバイルゲーム体験に関する評価が実施された。

 評価は最大100ポイントで、ソフトバンクが89.8ポイントを獲得し、同部門で賞を受賞した。

「5G音声アプリ・エクスペリエンス」

 「5G音声アプリ・エクスペリエンス」では、LINEやSkype、Facebook Messengerなどの音声アプリを対象として、その体験に関する評価が実施された。

 この部門でもソフトバンクが賞を受賞した。最大100ポイントの評価において、同社は85ポイントを獲得した。

「5Gダウンロード・スピード」

 「5Gダウンロード・スピード」で賞を受賞したのは楽天モバイルで、平均ダウンロードスピードは224.3Mbpsを記録した。

 フォッグ氏は「4キャリアすべてが100Mbps以上のスピードを記録し、4Gよりもスピードは大幅に向上していることがわかる」とコメントした。

 なお、5Gに接続している5Gユーザーに限定せず、4Gを含めて何らかのネットワークに接続している5Gユーザーのダウンロードスピードを見た場合、ドコモがトップとなっている。

 フォッグ氏によると、この理由に関して「楽天モバイルの5Gユーザーは5Gに接続できれば高速でダウンロードできるが、接続可能な時間の割合が少ない。そのため、全体を見た場合は4Gのスピードなどのほかの要素も影響し、ドコモなどの他社が楽天モバイルを上回る結果になった」と説明した。

「5Gアップロード・スピード」

 「5Gアップロード・スピード」でも、楽天モバイルが平均32Mbpsの速度でトップとなった。

 次点は23.7Mbpsのソフトバンク。そのあとに、13.8Mbpsのau、7.9Mbpsのドコモが続く結果となった。

総括

 フォッグ氏は日本の状況について「5Gの時代はまだ始まったばかり。今後は5Gの時代が少なくとも10年は続くと見ている。我々は今後も半年ごとにレポートを出していく予定で、5G体験について分析して皆さんにご報告できることを楽しみにしている」とし、会見を締めくくった。

質疑応答

――今回のレポートの中で、楽天モバイルのスコアが比較的良いという印象を受けた。4社の中では楽天モバイルの契約者数が少ない状況で、たとえばダウンロードやアップロードのスピードが速くなるというのは、契約者数が少なければ当たり前のことだと感じる。その点は加味した上で評価をしているのか。

フォッグ氏
 まず、我々は(評価というよりも)ユーザーの体感としてどうなのかというところを”計測“していることはお伝えしたい。

 また、楽天モバイルは、5Gの利用率や到達率に関しては低いスコアとなっている。

 ただ、楽天モバイルはネットワークを拡大しようとしている最中であり、今後は状況が変わることも予想される。それが、我々が6カ月ごとにレポートを出す意義になる。

 強調したいのは、オープンシグナルとしては「ある事業者がベストだ」と言いたいわけではないということ。異なる切り口で見た場合に、事業者ごとに優れたカテゴリーがある、ということをお伝えしている。

――ドコモの5Gにおいては、データ通信がうまくできない「パケ止まり」という事象などが報告されているが、こうした事象も今回の調査に影響したのか。

フォッグ氏
 我々は実際のモバイルデバイスの測定値を使用しているので、実際に「パケ止まり」という事象が起きていた場合、ゲームやビデオの体験、あるいはダウンロードスピードなどの結果において影響が出ている可能性がある。

 ただし、「5G利用率」「5G到達率」に関しては(「パケ止まり」の)影響を受けづらいため、ドコモが良いスコアを出したと考えられる。