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KDDIとNEC、NICTと共同で「先進的仮想化ネットワークの基盤技術」の研究開発内容を発表

 KDDIとNECは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と共同で、総務省の研究開発課題「先進的仮想化ネットワークの基盤技術の研究開発(本研究開発)」を実施している。

 また、本研究開発の取り組み内容について、9月10日まで実施している「ネットワーク運用管理に関する国際会議」で発表する。

背景

 5GおよびBeyond 5G時代では、5Gの特長である「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を最大限に活用するため、柔軟性と効率性を備えた通信ネットワークの実現が求められている。

 柔軟性と効率性を備えた通信ネットワークの実現に向け、従来の仮想化技術であるバーチャルネットワークファンクション(VNF)と比べ「起動時間が短い」「リソース消費の効率がよい」「可搬性が高い」などのメリットがあるクラウドネイティブネットワークファンクション(CNF)が、期待されている。

 CNFは2022年から急激に需要が増加し、2025年にはVNFと同程度まで拡大される見込みで、5GおよびBeyond 5G時代では、VNFとCNFが混在した先進的仮想化ネットワークが想定されている。

本研究開発について

 CNFの導入機運が高まる一方、CNF導入には運用面などの課題がある。

 本研究開発では、「障害事前予測技術」「超高速化ICTシステム設計技術」「基盤計算機リソースの動的かつ最適制御技術」の研究開発が実施される。

 CNF導入に向けての課題を解決することで、従来の仮想化ネットワーク以上に安定で迅速なデジタル・トランスフォーメーション(DX)サービスの提供と、CNF導入により複雑化する通信ネットワークの耐障害性の向上を図る。

CNF導入に向けての課題
  • 原因特定や障害復旧が容易でない障害の発生、監視運用の複雑化する環境における通信事業者に求められる品質の維持
  • 複数の小さなサービスを連携させるアーキテクチャによる設計対象数・種別の増加
  • CNFとVNFが混在した2階層型のネットワーク環境における複雑なリソース調整

本研究開発の技術概要

(1)障害事前予測技術 (担当:KDDI)
 CNFで増加する運用対象において、AI自動化に必要となる指標を網羅的に観測できるよう、未知の障害を能動的に探索することで、監視を超えた事前予測技術の確立を目指す。また、オートヒーリングなどの自動化技術により、発見が難しい障害予兆を観測可能とする技術の確立を目指す。

(2)超高速化ICTシステム設計技術 (担当:NEC)
 マイクロサービス化による設計の複雑化に対して、要件の快適な調整や障害によるネットワークサービスに対する影響の回避を実現するため、豊富な要件/障害事例を整備すると共に、これに対応する設計導出を高速化することで、分単位でサービスを再構築可能な超高速化ICTシステム設計技術の確立を目指す。

(3)基盤計算機リソースの動的かつ最適制御技術 (担当:NICT)
 CNFとVNFが混在したネットワーク環境において、ネットワーク機能が動作するサーバー環境の利用状況を常時把握し、障害や輻輳が発生したサーバーの計算機リソース自動調停や、余剰があるサーバーへのネットワーク機能の自動移行を実行することで、データ転送基盤の再構成を高速に実行可能な基盤計算機リソースの動的かつ最適制御技術の確立を目指す。

3者の役割
  • KDDI:「障害事前予測技術」の研究および2023年度を目途とした商用環境への展開
  • NEC:「超高速化ICTシステム設計技術」の研究および2022年度中のITシステムの運用管理製品への実装、2023年度を目途とした5Gコア設備を対象とするキャリアインフラ市場への展開
  • NICT:「基盤計算機リソースの動的かつ最適制御技術」の研究および企画提案や寄書提出などによる国際標準化機関における標準化活動の推進、及びテストベッドによる実証環境構築

 なお、3者は2022年3月までに本研究開発の完了を目指すとしている。