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ドコモが「AWS」活用で進めるコスト削減、その手法とは

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンとNTTドコモは、クラウドサービスの「アマゾン ウェブ サービス(AWS、Amazon Web Services)」によるコスト最適化支援とドコモでの活用事例について、報道陣向けに説明した。

AWSの課題

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 事業開発統括本部 統括本部長の佐藤有紀子氏は、AWSのサービスについて2006年以来、107回の値下げを行っていることや200以上のサービスを提供していることなどを紹介。月間アクティブユーザー数は数百万(日本国内:数十万)にのぼるという。

 日本独自の取組みとして4月から提供している「ITトランスフォーメーションパッケージ」では、クラウド移行前の検討段階から計画立案、実際の移行までをワンストップで支援するといったサービスも提供されている。

 同社では、ユーザーのコスト問題についても解決に取り組んでいる。佐藤氏は従来、移行前の評価段階でもさまざまな支援が必要だったが、移行後にもコスト関連の課題があることが分かってきたと説明する。

 ひとつは「移行段階でおもったほどクラウド移行のコスト効果を実感できない」、ふたつ目には「限られたチームでしかコスト効果を実感できない」というものだという。

 こうした課題に対して、AWSで提供するのはクラウド以降後のコスト最適化支援「Cloud Financial Management(CFM)」とコスト効果をひとつのチームだけで留まらせない組織横断的かつ持続的なコスト最適化支援「Financial Hackathon ワークショップ(FinHack)」の2つだ。

2つの対策を展開

 従来の課題は、主にAWSの経験の浅いユーザーがオンプレミス(自社でハード・ソフトを用意する手法)と同じ考え方でクラウドを利用するため、その特性を十分に活かし切れていないことだったという。

 AWSのサービスはさまざまあり、オプションもまた多く用意されている。佐藤氏は「適切なオプションを組み合わせないと、コストが下がりにくい」と語る。作業内容の特性に応じてオプションを組み合わせる必要を訴え、1年・3年契約で割引が得られる「Saving Plans」やリザーブドインスタンスなどを紹介。

 新規サービス開発や需要予測が困難な場合は「オンデマンド」や90%の割引もある「スポットインスタンス」などもあり「ユーザーが適切に選んでほしい」と語る。

 また、もうひとつの課題である「組織横断的なコスト削減の難しさ」について、クラウドの導入のほかにも、人材や組織体制をクラウド向けに作り上げることを対策として挙げる。

支援の流れ

 CFMは、AWSを使い始めて間もないユーザーに対して提供される。その支援の流れは、同社により利用状況の分析を実施し、実行計画がユーザーに提示される。

 その後、実施兄ユーザーがコスト削減を実行し、数ヵ月後にその結果を報告するとAWSからその後どう支援するかを報告するというもの。

 一方、FinHackでは最初にどのような課題があるかをヒアリングしていく。それをもとにAWS内の専門家を招集した上で、ワークショップを開催。その内容に基づいてユーザーがどの程度コスト削減ができるかなどを発表する。

 佐藤氏は、社内のさまざまな役割の人間がこのワークシップに参加することが効果的であると説明する。

ドコモのサービスでもAWSを利用

 自社サービスにもさまざまな形でAWSを取り入れているNTTドコモ。当初はR&D部門で先行利用し、その後コンシューマー向けのサービスや一部の業務系システムなどでも利用が広まっているという。

 AWSを利用したサービスの一例としては、「d払い」や「dポイント」など「d○○」系のサービスをはじめとして「iD」や「my Daiz」などさまざまなサービスで利用されているという。

 NTTドコモ ネットワーク本部 サービスデザイン部長の伊藤孝史氏は「迅速性・柔軟性がメリット」と語る。一方で簡単に使えるが故にコストに対する管理や意識付けがしづらく、プロジェクトによってコストの最適化の対策にばらつきがあると課題点を挙げる。

 そこで、同社ではコスト最適化、技術支援、各社に向けた要望とりまとめなどを「クラウドCoE(Cloud Center of Ecellence)」として実施してきた。

ドコモのコスト削減取組例

 オンプレミスに近い形でAWSを使ったところ、コストはかさんだ。そこでCFMを通じて改善を図ったところ、開発環境については、スタート時点の2018年と比較して60%ほどのコスト削減につながったと紹介。

 一方、商用環境ではアクティブユーザー数が増えるにつれてサーバーのコストも増える傾向にあったが、同様にCFMを通じてコスト削減につながり、サーバー台数も開始当初から17%削減できたという。

 コストを可視化したところ、EC2(Elastic Compute Cloud)が大きく割合を占めていたことが分かった。ここに対して最小スペック+アルファにとどめ、Spotインスタンスを導入、夜間・休日は自動停止することでコストを下げることに成功したという。

 また、そのほかの例では、未使用時にも常時サーバーを起動してたところ、スケジューリングの厳格化により、ECS(Elastic Container Service)コストを37%削減。Saving Planesの適用によりさらに17%、全体で48%ものコスト削減になった。

 このほか、オートスケールの状況やメモリー・CPUの使用率を確認し、ECSのタスク数の最適化を図ったところコストは55%削減された。

 加えて「AWS Glue2.0」(データ抽出・検証サービス)を導入したチームでは、Amazon Cloud Watchのログのライフサイクルや保存方法を変更することで、Glue 2.0で27%、Cloud Watchで35%の削減に成功したとしている。

 また、商用環境については当初、土日・夜間なども常時起動していたが、サービスの提供が進むにつれ、使用しない時間は停止することで35%の削減につなげたという。「それぞれのチームが作ったアーキテクチャーに対して自分たちがコスト意識をもって取り組むことが大事ではないか」と伊藤氏は語る。

 また「継続的なチェック項目」(画像参照)を社内で用意。それらを満たすようにクラウドサービスを使うよう呼びかけているという。また、チェック項目だけでは意図などが分かりづらい部分もあるため、Financial Hackathon(FinHack)と呼ばれるワークショップのようなワークショップで共有することで、こうした項目を実行・意識を向けていくようにしていると説明した。

 こうしたことの実現のため、FinHackを撮影した動画を社内で共有し、当日参加できなかった人や事後に確認するという取組みも行っている。