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「中小店舗にも取り組んでいく」、楽天ペイが決済手数料実質0円などの施策を始める理由

 楽天ペイメントは、新規加盟店およびユーザーに対して、手数料キャッシュバックや利用金額の全額還元などの新規施策を発表した。

楽天ペイメント 小林氏

楽天ペイの事業環境は

 楽天ペイ事業本部 本部長 小林重信氏は、楽天ポイントの年間発行数が4700億ポイント(2020年)に、累計発行数も2兆ポイントに到達したことを紹介。

 また、フィンテック領域の売り上げが全体の3割超を占めているという。楽天IDを軸とした多用な支払いの選択肢を提供する「オープン戦略」により楽天ペイが伸長してきたと説明する。

加盟店とユーザーに向け新施策

 小林氏は「楽天ペイは、まだまだ日本の中小事業者は始まったばかり」とコメント。導入に踏み切れていない店がたくさんあると聞いている」とした上で、新規加盟店に向けて1年間決済手数料と自動振込手数料を実質無料とするキャンペーンを発表した。

 「(この施策により)楽天ペイを導入しない理由はない。1人でも多くの事業者に届いてくれれば」と語った。

 これに加えて、楽天ペイアプリを利用するユーザー向けにも、消費を盛り上げる狙いで楽天ポイントでの全額還元(抽選)と楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VI」を契約し、一定の条件を満たすことで20%の還元が受けられるキャンペーンの2つがスタートする。

 小林氏はスピーディな支払い手段の提供、また加盟店に対しては新規顧客の獲得やオペレーション改善を手助けし、こうしたことを通じて楽天の強みであるデータ活用やニーズに合わせたサービスを提供していきたいと語る。

 楽天経済圏におけるロイヤリティの高いユーザーは加盟店を訪れる傾向が高いという。

質疑応答

 質疑応答には、楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部 副本部長 諸伏勇人氏も加わった。

――現状の決済手数料は?

諸伏氏
 アプリ決済は、3.24%となっている。

――決済シェアはPayPayが大きいが、楽天ペイの取扱高・決済回数などは。送客効果はどれほどのものか。

諸伏氏
 実績に関しては非公開だが、シェアは各社で異なる定義で出しているため各社に聞いてほしい。層客効果について言えば、年間4700億のポイント発行をフックに多くの送客を生み出していると思う。

――今回のキャンペーン終了後に加盟店が払う手数料は通常に戻るのか。他社に比べると高額になると思うが値下げの予定は?

小林氏
 キャッシュレス決済は発展途上だと思う。まずは1年間、楽天ペイの良さを実感してもらいたい。1年後(キャンペーン終了後)以降のことはその時の状況を踏まえて検討したい。

 加盟店は、手数料負担の変わりに何を得られるかを考えて選択されると思う。その時に楽天ペイを選んでもらえるとしたら、それは楽天ペイの強みである送客効果。ポイントは無料でばらまいているものではなく、ユーザーの各サービスでの購買行動の結果取得されているもの。一過性ではなく、恒常的な利用客の集客につなげられる。それをしっかり提供して、負担に対する対価として納得できるように努力していきたい。

――今回のキャンペーンはMPMが対象と思うがJPQRのものも対象になるのか。また、具体的な目標加盟店数を教えてほしい。

小林氏
 楽天ペイ自身が提供するQRコードと加盟店アプリを通じたものおよびJPQRにも対応する。他社ゲートウェイを通じた決済はキャンペーン対象にならない。開拓目標については、キャッシュレスについて、クレジット・電子マネーも含めて進めている。(今回の施策により)中小店舗については、楽天ペイ導入の障壁はゼロだと思う。すべてのお店に申し込んでもらえるサービスだと思う。Webサイトなどグループの導線を活用してしっかり届けていきたい。

――全加盟店数のうち、中小規模の事業者はどの程度か? またポイントでの送客で好循環を生み出せるということだが、楽天ポイントで支払うユーザーはどの程度いるのか

諸伏氏
 加盟店数は公開していない。全体としては全国500万カ所、鉄道100万カ所の600万カ所で利用できる。年商10億円以下というターゲットであれば、中小規模事業者の90%をカバーできる。そのすべての事業者に申し込んでもらえるよう努力したい。

 ポイントで払うユーザーは、実数は控えさせていただくが相当数いる。楽天ペイは開始当初から指先一つでポイントが貯まる・使えるというのを意識してきた。バーコード決済ではチェックボックスを操作するだけでポイントが使える。次もこの設定を使うようにしておけば、QR決済の店でも使えるため、利用が簡単。このため、ポイントで決済するユーザーが多いのではないか。

――今、手数料ゼロに踏み切った理由は? これまでの姿勢とは違うが戦略の転換があったのか

小林氏
 方針に変更があったわけではない。状況に応じてフレキシブルにやっているということの一環。(大手の)コンビニ、ドラッグストアなど生活導線を抑える部分ではしっかりやれて来た。いよいよ中小規模のお店についても取り組む段階になった。楽天ペイを導入していないお店を効率よく開拓できるタイミングになっていると思う。

 変動費の施策が今回。固定費については、他社のように多数の営業マンを投入することはしないので、増加はない。

――手数料に対する価値が送客効果とあったが、他社のように店舗のデジタルトランスフォーメーションの施策や取組などは?

諸伏氏
 楽天銀行を振込口座にすると、最短翌日に入金といったサポートを行ってきており、楽天ペイ開始当初もMPMだけだったものが、プリントしたQRなど店舗のニーズに応じてサービスを投入してきた。これからも店舗様の声ファーストで新しいサービスを開発していく。

小林氏
 楽天ペイの機能追加により、チェックインやクーポンの集客や予約などそういった店頭に関わるツールを決済機能と合わせて拡充していく。我々はもともとネットから始まったため、さまざまなツールを持っている。こうしたものを楽天ペイを通じて提供できる段階になったと思う。DXをサポートするツールは楽天ペイを通じて提供していく。

――営業マンは大量投入しないということだが、これまではどう開拓してきたのか。今後さらなる開拓でどう変わっていくのか

小林氏
 ひとつはタイミング。いまだからこそ効率的に増やせる条件がある。1年間無料でという分かりやすいメッセージを楽天の媒体力をフル活用して加盟を募る。さまざまな開拓パートナーもいるので、そういった戦力も活用するが、Webで伝えることで理解してもらえると思う。

――中小企業ではそれほどITリテラシーが高くない場合もある。サポートについてはどうするか

小林氏
 店舗サポートについては、加盟店用のコールセンターが用意してある。申込みの増加が予想されるので体制を増強しており、滞りなくサポートできる。

――ユーザー向け施策について、どの程度の頻度で抽選に当たるのか?

諸伏氏
 1年間実施するキャンペーン。多くのユーザーの利用が見込まれ、母数が分からない部分があるが、少なくとも12回分の当選チャンスがある。

【訂正】
 記事初出時、JPQRはキャンペーン対象に含まれない旨を記載していましたが、楽天ペイメントより、実際にはJPQRも対象になると訂正がありましたので、本稿も訂正いたしました。