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イオンモバイル井原氏、「さいてきプラン」開始後の状況と今後の展望について語る

 イオンリテールは、MVNO型の携帯電話サービス「イオンモバイル」について、4月1日に提供を開始した新プラン「さいてきプラン」に関するオンライン説明会を実施した。

 説明会には、同社の住宅余暇本部 イオンモバイルユニット イオンモバイル商品マネージャーの井原龍二氏が登壇した。

イオンリテール 住宅余暇本部 イオンモバイルユニット イオンモバイル商品マネージャー 井原龍二氏

回線数は微増、販売チャネルはオンラインが伸びる

 井原氏はまず、2020年度の状況を説明した。同氏は2020年度を振り返り、「コロナとアクションプランにゆれた激動の2020年」と表現した。

 回線数の推移に関して、回線数は微増(純増)という結果になった。販売チャネルは、新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインチャネルが伸びた。

 井原氏によれば、「実店舗が落ちたというよりは、オンラインが伸びた」とのことで、この傾向は2021年度も続いているという。

 同氏は、「全体としては30%を超えるEC比率ではあるが、他のMVNO事業者と比べると比率は低い」とコメントした。

有料サポートの効果もあり、シニア層の契約が増える

 世代別の傾向として、シニア層の契約比率が伸びた。井原氏が要因として挙げたのは、シニア層向けの料金プランや有料サポートサービス提供など。

 ほかにも、3G停波によるフィーチャーフォンからの乗り換えユーザーが多かったことが挙げられる。

 シニア層向けには、有料の店頭サポートとして、スマートフォンの初期設定を店舗スタッフが代行するキャリアフリーのサービスを提供している。

 2020年度は1万7000件以上の実績があり、緊急事態宣言が発令された2020年4月と5月を除き、サービスの業績は右肩上がりとなっている。

イオンモバイルが大切にする「お客さま第一主義」

 イオンモバイルは今後の差別化戦略として、直営店舗を核に「お客さま第一主義」を徹底していくことを強調した。

 基本的な戦略は大きく変わっていないが、環境が変化し、多くの競合サービスが出てきている中で、正しい情報をユーザーへ届けることを重視する。イオンモバイルのメリットだけでなく、デメリットもユーザーへ知らせていく。

 その一例として、イオンモバイルは通信速度の可視化にも取り組む。同ブランドの公式Webサイトでは、参考速度の計測結果が公開されている。

昨年4月度との比較で収入はダウンしたが、収益はアップ

 「さいてきプラン」提供開始による料金改定に伴い、通話料金などを含まない基本料金は、平均21%の値下げとなった。

 これを受け、昨年4月との比較で、2021年4月は14.6%の減収を記録した。しかし、契約数自体は増えているため、同時期の比較で収益は19.6%増加している。

 4月以降の獲得契約数に関しては、2021年4月・5月ともに、2019年度および2020年度を上回る結果となった。

「さいてきプラン」における取り組みと、契約容量の変化

 「さいてきプラン」では、プラン変更の手続きが簡単にできるよう、「マイページ」のトップ画面上部に「料金プラン変更手続き」の入り口が設置された。

 同プラン提供開始後の、ユーザーの契約容量の変化も明らかになった。2021年4月は、前年度との比較で低容量帯の契約が減り、中~高容量の契約が増加した。

 プラン変更に関しても、やや上の容量のプランに変更するユーザーが多かった。

今後の展望

 井原氏は最後に、イオンモバイルの今後の展望についてコメントした。同ブランドが現時点で提供していない「オートプレフィックス」「eSIM」「5G」に関しては、将来的な提供開始を目指す。

 「無制限かけ放題」に関しては、「ユーザーのニーズを見極めた上で、ニーズが多ければ検討したい」とのコメントがあった。

 現状で提供する予定がないとされたのは、「データ無制限」と「パケットカウントフリー」。通信量をなるべく安くしたいユーザーニーズとのアンマッチが、その理由として挙げられた。

質疑応答

――「さいてきプラン」では1GB刻みで料金を設定しているが、業務が煩雑になるなど、管理側のデメリットはあるか。

井原氏
 強いて言えば、店舗ポップや印刷物を手配する時に、種類が多くて大変になることくらい。管理上、システム上の大変さは特に感じていない。

――他社はなぜ「さいてきプラン」のような細かいプランを提供しないのか。

井原氏
 おそらくビジネス構造上の問題が大きいと考えている。我々は二次卸というポジションにいて、いわゆる「帯域ビジネス」として速度をMNOから買っている一次卸とは異なり、容量(バイト)を買っている。そうなると「何GBでいくら」というような形で容量を仕入れ、ユーザーへ販売するという形になる。

 それに対して、帯域で買う場合は、ユーザーの契約が1GBであろうが50GBであろうが、基本的に顧客原価は大きく違わないと認識している。そこで「なるべく売上が高いほうがベター」という意識があり、他社は「さいてきプラン」のようなプランを提供しないのではないか。

――現在、総務省がMVNOに電話番号を直接割り当てる方向で進めているが、どう受け止めているか。

井原氏
 業界としても検討を開始したばかりであるが、電話番号がMVNOに付与されることで、メリットがあるのはフルMVNOをやっている事業者だと認識している。これによって、新しいサービスが生まれるのではと思っているが、何ができるかというのはまだ具体的にわかっておらず、ちょうど勉強している最中になる。

――マイページでプランを簡単に変えられるという話があったが、これを積極的に活用しているユーザーの割合は。

井原氏
 イオンモバイルの契約数は50万回線を超えているが、そのうち約2万~2万5000件の契約で、毎月プラン変更が行われている状況。

――実際の使用状況に合わせてうまくプランを切り替えているユーザーはどれだけいるのか。

井原氏
 ユーザーが利用している容量の分布と、契約している容量プランの分布はだいたい一致している。ずれているところは4GB以下のプランのあたりだが、それ以上の容量のプランに関しては、おおよそユーザー側でうまく切り替えながら使っていると認識している。

――中~高容量では、20GBのプランの契約が増えているということだったが。

井原氏
 20GBのプランといっても、個人で20GBを使う形はあまり見られない。4人家族で20GBをシェアして使い、料金を安くするケースが非常に多い。

――スマートフォン端末の売れ筋はどのような感じなのか。

井原氏
 イオンモバイルのメインの商材は、価格帯が2万~2万5000円のスマートフォン。

 実は昨年からiPhoneの未使用品の取り扱いも開始しており、iPhone 8とiPhone XSを提供している。今まで取り扱ってきたものよりも価格が高いが、売れ行きは好調。ただしこれは、「iPhoneだから」だと考えている。

 それ以外に、シャープ製のスマートフォンはよく売れている。一番伸びているのは、3万円前後の機種。

――iPhone 8やiPhone XSは旧モデルだが、特にiPhoneに関して、最新モデルの導入予定は。

井原氏
 iPhoneの最新モデルは当然意識しており、iPhone 12を発売したサブブランドのことを羨ましいと思う部分はある。我々もアップル(Apple)に掛け合っているが、少し難しいというのが現状。

 したがって、現在取り扱っているiPhone 8やiPhone XSの未使用品は、市場からかき集めて提供している。これらのモデルは、「旧モデルではあるが、SIMフリーのiPhoneを安く持てる」という点で、我々のスタンスに合っていると考える。

 iOSは比較的前のモデルまでアップデートをサポートしているので、その環境が続く限り、5~6万円以下のiPhoneを頑張って用意していきたい。6万円以上の端末になると、さすがに厳しいと思っている。

――5Gサービスの提供について教えてほしい。

井原氏
 5Gサービスは我々の判断だけで提供できるものではないが、年内には確実に提供開始できると考えている。

 一方でMVNOで5Gを出した結果、ユーザーに対してどのようなメリットがあるかというのは、現状ではまだ見いだせていない。スピードが速くなる、というわけではないので。ただ、アンテナピクトに「5G」が入るというだけで面白いとは思っている。

――回線数の目標として、具体的な数字はあるか。

井原氏
 目標として掲げるのは、100万回線。現時点で我々は規制対象事業者ではないが、将来的にはその位置を目指したい。

 規制対象事業者になったからといって、2万円の割引を実施できるほどのお金はないのであまり関係はないが、まずは早期の100万回線突破を目指していく。

――大手の格安プランが脅威になって流出もあったかと推察されるが、解約数の状況について開示できることはあるか。

井原氏
 実は2~4月に関しては、今までにないくらい解約が増えた。最も影響が大きかったのは、実は「ahamo」などの格安プランではなく、楽天モバイルの1年無料キャンペーンが4月7日で終了することだったと思う。これにより、感度が高いユーザーが3月や4月で転出したと認識している。

 それ以降については解約数が落ち着いてきたため、6月からは平常通りになり、MNPの転入や転出は一段落したのではと考えている。

――たとえば「イオンカードで支払うと料金が安くなる」など、イオンカードとの連携に関して何か予定はあるか。

井原氏
 連携に関して動きは進めているが、別会社であることや、顧客情報の連携方法などが障壁となって、まだ実現はしていない。ただ、実現に向けて積極的に動いていきたいと考えている。

――ソフトバンク回線への対応は。

井原氏
 すでにMVNEとは協議を進めている。全てのユーザーが安心して使えるサービスを目指すために、ソフトバンク回線の取り扱いも視野に入っている。