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総務省、eSIM普及に向けた会合――MNO4社が抱える課題とは

 総務省は8日、「スイッチング円滑化タスクフォース(第2回)」を開催した。

 同タスクフォースは総務省がとりまとめた「アクション・プラン」に基づいて、ユーザーが携帯電話キャリアを円滑に乗り換えら得れる環境の整備を目指すとしているもの。第2回ではeSIMの普及に向けて携帯電話各社からヒアリングが行われた。

NTTドコモ

 NTTドコモは、スマートフォンでeSIMに対応していない理由について「eSIMベンダーの乱立によるセキュリティリスク」と「利用者の利便性向上につながらない可能性」の2点を指摘。

 物理SIMであれば、キャリア側でSIMカードのベンダーを選定し調達できるものの、端末に内蔵されるeSIMの場合、ベンダーはメーカー側で選定することになるため、ドコモ側がセキュリティリスクを担保できないという問題がある。

 何らかの理由で鍵情報が漏洩した場合、クローンSIMが作成される可能性があり、特に音声通話SIMの場合、特殊詐欺などへの悪用などが懸念されるとした。

 加えて、ユーザーがeSIMの利便性を享受するにはeKYC(オンライン本人確認)が必須であり、スマートフォンでのeSIM対応は、セキュリティリスク対策が必須であり、そのメリットを活かすにはeKYCが広く普及している環境が必要とした。SIMロック解除については、物理SIMでの条件に準じるという。

 具体的な提供時期については、今後検討するため現時点では未定。

 MVNOへの機能開放は、提供先のMVNO事業者がHLR/HSS連携している場合、自社で用意したサーバーからeSIMプロファイルを書き込めるようにする。

KDDI

 KDDIは、eSIMについて、アップルの「Apple SIM」で他社に先んじてコンシューマー向けサービスを提供してきたことをアピール。

 現状でスマートフォンで対応していない原因としては「設定時の対応」と「eSIMデータの誤消去の可能性」と、リテラシーが低いユーザーのハードルを指摘。加えて、プロファイルの漏洩や不正利用などのセキュリティリスクの課題を挙げた。

 ユーザーの理解促進、セキュリテイ問題に留意しながら検討をすすめるとしている。同社では、eSIMを活用した新しいスタイルのMVNOサービスの提供を目指している。そのほかのMVNOについてもeSIMサーバーのRSP機能を来春以降に提供するという。

ソフトバンク

 ソフトバンクは、スマートフォンなどでeSIMに対応していない理由について、物理SIMと比較した際のサービス品質や運用コスト、セキュリティ面を含めた判断としている。eSIMサービス提供には、新たなシステム開発や運用構築が必要という。対応については、タスクフォース構成員のみに公開された。

 こうしたことにより、eSIM対応は現在検討中であり。MVNOへの開放についても現時点では対応は未定とした。

 セキュリティについては今後、多様な端末や事業者のサービスが普及した場合にプロフィル漏洩によるクローンSIM作成や不正契約のリスクが高まる可能性があることを指摘した。

 以上のことから、eSIMの本格普及に向けては、オンライン手続きの普及によりユーザーにも一定のITリテラシーが求められることやサポート面でこれまで以上に時間や詳細な説明が必要になる可能性など多数ある課題を検討する必要があるとした。

楽天モバイル

 楽天モバイルでは、オリジナル端末「Rakuten Mini」「Rakuten BIG」「Rakuten Hand」がいずれもeSIM対応。また、そのほかの取り扱い端末においてもeSIM対応のスマートフォンを取り揃えており、他3社とは異なる対応となっている。

 eKYCとの組み合わせでショップやコールセンター終業後の夜間早朝でも利用をスタートできるなどの利便性をアピール。

 MVNOへの開放についても、要望があれば応じる方向で検討するという。ただしMVNO間とのプロファイルやり取りに際してセキュリティが十分に担保される事が前提としている。

 アクティベーション時におけるセキュリティについては、GSMAの規定に準じた仕組みを活用し、通常のHTTPS通信に加えてeUICCとSm-DP+間のE2E暗号化、端末側にもセキュリティ対策を講じることで、安全性を担保しているという。

 またeSIMの普及を促進する上で制作要望として、「通信事業者によるSIMロック解除の一層の推進」「端末事業者に対してすべてのMNOへの対応義務付け」を訴えた。

 日本で流通する携帯電話の大多数がSIMロック端末という中でeSIMを利用するにはロック解除を行う必要がある。米ベライゾンが購入後60日経過した端末を自動的にロック解除するという施策を例に上げ、同様の仕組みの導入が必要ではないかと主張した。

 また、一部の端末に置いてはISMロックを解除しても楽天モバイルのネットワークが利用できないケースがあり、国内で一定のシェアを持つ端末メーカーは、すべてのMNOへの対応を義務付けるべきとした。