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古河電工とKDDI総研、海底ケーブル用のマルチコア光ファイバーを開発

通常の光ファイバーと同様の外形サイズで低損失かつ低干渉を実現

 古河電気工業とKDDI総合研究所は、総務省委託研究の一部として、世界最小級に伝送損失を低減した低クロストークマルチコアファイバーの開発に成功し(古河電工)、独立した4つの各コアを用いて、太平洋横断を上回る距離で、超高速な光信号の光ファイバー伝送に成功した(KDDI総研)ことを発表した。

 世界中のデータトラフィックとデータセンター間の通信需要の増大により、国際通信を担う光海底通信の容量は増大を続けていることから、ケーブル内のファイバー心数を増大させる空間多重システムの採用が進められている。

海底ケーブルイメージ

 ケーブルの外形サイズは、敷設工事の困難さやコスト上昇の観点から現状以上に拡大することは非現実的で、ケーブルの外径サイズをそのままにケーブル内の心数を増やすことが必要不可欠とされてきた。

 マルチコアファイバー(MCF)は、通常の光ファイバーと同一の形状ながら、光が伝搬するコアの数を複数実装したファイバー。今回開発したMCFは4つのコアを搭載し、通常の光ファイバーよりも4倍の容量を伝送できる。

マルチコアファイバの構造
ケーブル構造例

 MCFではファイバー内のコア間の信号干渉であるクロストークが課題で、これまで低損失かつ低クロストークなMCFの実現は困難だったという。

 クロストークは、信号を入力したコア以外のコアから出力される不要な雑音成分。通信品質の劣化につながることから、クロストークは低減することが好ましいとされる。

クロストークのイメージ

 ファイバー構造と製法の最適化により、通常の海底伝送用光ファイバーと同等でかつ低クロストークなMCFの中では世界最小級損失の0.155dB/kmを実現しつつ、-60dB/100km以下の低クロストーク性も確保したMCF開発に成功した。

 同ファイバーは長距離海底光ケーブルへの適用が想定され、最大距離は太平洋横断級の9000kmとされている。また、今回の光ファイバーにより、超高速な光信号を1万2000km以上の伝送が可能なことも実証した。

 光海底システムで大きな課題となっている増幅器の省電力化を目指すマルチコア増幅器の開発も進めているという。今後は、今回開発した低損失マルチコアファイバーと、マルチコア光増幅器の技術を活用した空間多重光海底システムを推進していく。