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KDDI高橋氏「マルチブランドで多様なニーズに応える」――21年3月期第2四半期は減収増益

 KDDIは30日、2021年3月期第2四半期決算を発表した。連結売上高は2兆5372億円で前年同期比1.1%減だったものの、営業利益は5888億円で前年同期比6.4%増という結果になった。

 売上高に占めるライフデザイン領域の売上額は、6030億円(前年同期比5.1%増)、ビジネスセグメントは4762億円(3.7%増)。それぞれの通期の売上目標1.5兆円と1兆円に対して46.7%、50.1%と順調な拡大を見せており、中期目標に対して順調な進捗だという。

 成長領域の売上は309億円の増益。モバイルの通信量収入は16億円減という結果になった。その他収入は、端末販売コスト減などがあり60億円のプラス成長。KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏は「来季へ向けての取り組みを強化、成長領域の拡大を強化し、通信料金の値下げ影響を吸収、期初予想の着実な達成を目指す」とした。

 このほか、2000億円を上限とした自己株式取得を発表した。

KDDI 高橋氏(高ははしご高)

「みんなの5G」を推進

 決算の中で、高橋氏はあらためてKDDIが推し進める「みんなの5G」について説明。auは今後、全機種5Gという形で5Gの浸透を図っていく狙い。

 他社とは大きく異なり、ハイエンドモデルからミドルレンジまで幅広い価格帯で5G機種を揃え、5Gを特定の人だけに向けたものだけでなく文字通り「みんな」のものとしていく。

 エリア展開については、4G周波数帯を5Gへ転用することにより、さらに加速させていく方針。

 これにより、5G用として獲得した28GHz帯と3.7GHz/4.0GHz帯に合わせて4G用周波数帯である700MHz帯と1.7GHz帯が5G用として用いられる。4Gを転用エリアでは、低遅延性は期待できるものの、多くのユーザーが期待する大容量・高速という特性は実現が難しい。

 KDDI広報部によると、示す形は未定だが、転用エリアとそれ以外のSub6帯、ミリ波の5Gエリアは、ユーザーに分かりやすい形で提供するとしている。

 同社の計画では2021年3月末時点で1万局、2022年3月で約5万局の5G基地局の展開の予定。

 料金プランについても、使い放題プランを拡充。大容量だけではなく、それによって享受できるサービスもバンドル。ネットフリックスやTELASA、Apple Musicなどをバンドルしたプランを多数用意しつつ、29歳以下と広い間口を持つ「au 学割ワイド」を展開。

auのiPhone 12シリーズ限定のサービスも

 また、「au 5Gエクスペリエンス」という新たな取り組みも実施。

 使い放題プランと広い5Gエリアという強みにより実現できるという同サービスは、5G対応のiPhone 12シリーズにネットワーク側からそれを判定できる仕組みを導入。「データMAXプラン」かつ5Gエリアに進入すると、たとえばTELASAであれば、自動的に高解像度のストリーミングに切り替えられるという。

 今後も、11月には「SPORTSBULL」が、12月以降にはSHOWROOMが提供する「smash.」がこれに対応する見込み。

マルチブランドで多様なニーズに応える

 今後は、auだけではなくサブブランド化したUQ mobile、MVNOのBIGLOBE モバイルとJ:COMモバイルで幅広い層に応えていく。

 使い放題で徹底的に5Gにこだわるフラグシップ的なポジションにはau。また、シンプルでお手頃価格を求めるユーザーにはUQ mobileという組み合わせ。特に2021年2月以降には新たに20GBで3980円の「スマホプランV」が加わる。

 新たなプランを新設した理由として高橋氏は「シンプルでわかりやすいプランはUQ mobileが適しているだろう」としたためと語る。

 MVNOの2ブランドについても、それぞれの持つユーザー層の特色を活かしていくとしつつ、新たな試みとして「KDDI Digital Life」を11月に設立。シンガポールに拠点を持つCircles Lifeとの取り組みで、主にデジタルネイティブな層に向けてeSIMを活用した契約を含む完全オンライン型のサービスを展開する。

 これらの5ブランドを駆使し、ID基盤の拡大を図るというKDDI。さまざまな需要に多数のブランドで応えることで、グループ外への顧客流出を防ぎ、auへのアップセルも狙っていくと高橋氏は説明した。

 UQ mobileからauへのアップセル実績は昨年と比較して3.5倍超と、マルチブランド戦略は順調な成果を挙げているようだ。

KDDI Accelerate 5.0

 政府が提言する「Society 5.0」の実現に向けた取り組みとして「KDDI Accelerate 5.0」を策定した。

 オンラインとリアルな世界の融合を目指したもので、具体的には7つの技術分野について、注力。5GやIoTなどの環境整備を進めつつ、さまざまな企業とのコラボレーションによりデジタルトランスフォーメーションを推進していく。

 30日の決算の中では、トヨタ自動車との業務資本提携が発表。KDDIではこれまでもトヨタ自動車と協業してきたが、今回の定形では通信プラットフォームの研究開発の共同実施やコネクテッドカー用システムの共同開発、ビッグデータ活用による社会課題解決、自動車の内外にとらわれないサービスプラットフォームを開発していくという。

 また、KDDIでは法人部門の拠点を虎ノ門に移したり、ビジネス開発拠点のKDDI DIGITAL GATEを開設したりしているが、12月には新たに「KDDI research atlier」が開設予定。ふじみ野のKDDI総合研究所では、5Gや6Gなど基礎研究を中心に、KDDI research atlierでは、応用研究を中心に進めていくという。

質疑では

 総務省によるアクション・プランに対しての受け止めを聞かれた高橋氏は「思ったより細かいことがいっぱい書いてあった」としつつも一つひとつ対応していくとした。さらに、NTTドコモが決算の中で発表したようにオンラインでのMNP手数料はKDDIでも無料としていく方針だという。

 また、auへのアップセル戦略について、料金重視のユーザーのダウンセルという可能性もあるのではないかという指摘に対して、高橋氏は「一定数、そのようなユーザーもいるだろう」という見通しを示した上で「実際にどうなっていくかはその時にならないとわからない。様子を見ていきたい。そうしたユーザーにも5Gの魅力をアピールしまたauへ戻ってもらうという循環を作れれば」とした。