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KDDI、20年3月期は増収増益――新型コロナ影響も持続的成長を目標に

 KDDIは14日、20年3月期決算を発表した。連結売上高は5兆2372億円で、前年比3.1%増。営業利益は1兆252億円で前年比1.1%増で増収増益の決算となった。

 営業利益は、前年比で115億円の増益。ライフデザイン領域とビジネスセグメント領域の成長領域でそれぞれ330億円、254億円の増益が要因となった。一時的な減益要因として、ミャンマーの決算期変更や3Gの加速償却など168億円に加えて、au PAYのキャンペーン費用や新型コロナウイルスの影響など301億円を減益要因とした。

 オンラインでの開催となった今回の場に登壇したKDDI 代表取締役社長の髙橋誠氏は、持続的成長に向けて着実に推進していくとコメント。

KDDI髙橋誠氏

ユーザーの信頼を第一に

 グループID(au、UQほか)×エンゲージメント×総合ARPUの最大化を目指すに当たり、今期はエンゲージメントを重視していると髙橋氏。エンゲージメントは、ユーザーとの信頼であり、向上すれば同社のサービスの利用頻度は上がり、解約率は低下、長く利用してもらえる結果につながると見込む。

 エンゲージメント向上に向けて、ユーザー接点の拡大を目標としていく。auショップに始まり、au PAYやau PAYカードやau じぶん銀行などの金融サービスもふくめてユーザーの生活に欠かせない存在となることで長期利用、ARPUの向上を狙う。

 髙橋氏によると、ユーザーとの接点が増えることでNPS(顧客推奨度)が向上することが数年来の分析でわかってきたという。

 ユーザー接点拡大の中心であるau PAYは、2月のキャンペーンで決済件数は2倍超の増加を見せた。なお、5月末にはPontaとの統合が予定されている。

UQ mobileはKDDIが継承へ

 ID基盤の強化も図っていく。グループからの流出の抑止、競合他社からの新規ユーザーの獲得強化に加えて、UQやBIGLOBE、J:COMなどのサブブランドからauへのアップセルという構造でさまざまなニーズに応える。

 その強化策の一環として、KDDIはUQ コミュニケーションズからUQ mobile事業を継承する。これにより販売チャネル再編や統合、わかりやすいサービスの提供、重複する事業の効率化などでさらなる競争力強化をめざす。

 auブランドでも、幅広い価格レンジの端末を備え、データ使い放題や「NetFlix」や「TELASA」などのOTTバンドルプラン、「auスマートパスプレミアム」での新たな体験の提供で、5G移行促進を進めていく。

 成長領域における、中期目標に対しての進捗は、売上高が1兆2180億円で進捗率は49%。決済・金融取扱高は6兆5370億円で進捗率は134%。au PAYでの決済増加やじぶん銀行の決済総額の高進捗で中期目標の前倒し達成を実現した。

IoT回線数が好調

 ビジネスセグメントでは、法人ユーザーのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を継続。既存の通信事業に加えて、IoTや5G事業などは共に成長を見せているという。

 KDDIでは、日立物流と5GやAIを活用した次世代の物流センターの構築や三愛石油とのAIなどを活用した「KDDI ガスプラットフォーム」提供によるインフラの次世代化といった課題解決を行っている。

 ビジネスセグメントの中期目標に対しての進捗は、売上高が9235億円で進捗率は33%。IoT累計回線数は、1150万回線で進捗率は35%とどちらも順調な推移で、IoT回線数については、計画を上回っているという。

新型コロナ影響も、中期的に成長を見込む

 2021年3月期の業績予想については、売りげ高5兆2500億円。営業利益は1兆300億円。現時点で見通せる新型コロナウイルスの影響は織り込んだ数字という。

 中期経営計画に対しては、前年度と同等程度の売上見込となるが、持続的に成長を目指すことに変わりはないとした。また、2030年度を見据えた「KSSI Ssutainable Action」として事業に根ざした活動でSDGsを推進していくという。

 また、新型コロナウイルス後の安心な国民生活・経済回復に向けて、需要が増すと思われるテレワークやオンライン教育・医療などを支えるネットワークを含めたネットワーク整備や国内経済力の回復・成長のための新たなビジネスモデルの創出や新しい社会基盤の整備などを推し進める。

質疑応答では

 KDDIによる、UQモバイルの継承について髙橋氏は「営業・サポート体制の統合により、グループIDの増加を狙う。多様化が進んでいる現在の市場に対しては、(auのみの)1ブランドで対応するよりも、複数ブランドでアプローチするのは自然なやり方。また、サブブランドにもライフデザインサービスを載せることはエンゲージメントを高めるために重要」と重複業務の効率化の面も含めてUQ mobile継承の意義を説明。

 UQ コミュニケーションズについては、5Gへ対応し今後もWiMAXサービスを継続していく方針。

 新型コロナウイルス収束後の5G展開については、「技術の進歩だけではなく、さまざまな体験価値を広げるために5Gを使っていきたい。遠隔医療・教育・テレワークなどの基盤になる。新型コロナの状況は注視しつつ、もう一度しっかり盛り上げていかなくてはいけないといけない」と語った。

 このほか、楽天モバイルが発表したパートナーエリア(auローミング)の2GBから5GBの容量アップについては「寝耳に水だった」と応える一幕も見られた。

 5Gの契約件数については、公表できないとしてNTTドコモと同様の傾向だったとコメントするに留まった。新型コロナウイルスの影響により、5G基地局の工事で一部に滞りが見られるものの、推移は順調であり、パートナー企業と協力しながら進めていくという。

 また、新型コロナウイルスによりネットワークトラフィックは、音声通話は増加、モバイルデータは、外出自粛やテレワークの増加などにより減少しているとした。