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明太子がいつもある「ふくやIoT」の裏側はSORACOMが支えていた

 4月1日に発表され、まるでエイプリルフールかと反響を呼んだ明太子自動配送サービス「ふくやIoT」。その裏側には、IoT向けの通信回線~データ収集・見える化などのソリューションをまとめて提供するSORACOM(ソラコム)が支えている。

ふくやIoTの仕組み

 「ふくやIoT」では、残量を重さで検知し、それにあわせて自動発注する。ソラコムによれば、消費量の推移をチェックする仕組みとして当初から重量計測で開発することは決まっていたという。

 重量データは、NTTドコモ網を利用するIoT向け通信サービス「SORACOM Air for セルラーplan-D」経由で送信される。そのデータはソラコムのソリューション「SORACOM Harvest」へ送られ、蓄積されていく。

 現時点では、消費によって、所定の値(しきい値)を下回ると、ソラコム提供のソリューションのひとつである「SORACOM Lagoon」でアラートを発信。ふくや側へ通知して、発注する形。ちなみにセンサーデバイスは今後、変更される可能性もあるため、現時点では非公開とされている。

 まずは、消費傾向の情報が蓄積されていくとのことで、今後消費量の予測を行うかどうか検討するという。

きっかけはふくや社長が「明太子を切らしていたから」

 「ふくやIoT」はどうして誕生したのか。本誌があらためて質問したところ、実は、ふくや社長の自宅へ、友人が訪れた際、たまたま明太子を切らしていたことがきっかけになったという。

 辛子明太子メーカーとして代表格とも言えるふくやの社長の自宅にもかかわらず、明太子がないという事態。「ふくやIoT」の発表時にアナウンスされていた「冷蔵庫にあったはずの明太子がいつの間にか無くなっているという悲劇的な事象」は本当のことだったのだ。

 明太子会社の社長の家には、いつも潤沢に明太子があるものと思っていましたが、まだまだ、明太子が提供できていないタイミングがあるとはと気づき、この状況を変えていくため、明太子が自動計測できる仕組みがあればというのがきっかけ

ふくやの立元氏

 とはいえ、冷蔵庫に保管される明太子の重量計測などが技術的に可能なのか。まずはスモールスタートすることになり、回線、可視化、アラートなどを一手に引き受けられるSORACOMのサービスが活用されることになった。

 業界初のチャレンジとあって、まずは福岡県内、20名という規模で提供される。ユーザーに対しては、自宅を訪問してサービスの概要を説明し、継続したサポートができるようにしており、そうしたこから地域や規模を限定しているのだという。

さらなる進化も視野に

 ふくやでは今後、明太子がないリスクをより最小化、安定化していくことが課題と説明。今後は米、卵、水といった重さがあり、宅配サービスを利用しがちな商材と組み合わせるサービスの展開を模索していく。またサービス提供エリアも、福岡県内だけではなく、首都圏などへの拡大も視野に入れる。

 開発を支援したメカトラックス社では、ハードウェアの小型化や低消費電力化、センターと通信ゲートウェイの構成などに対して、改良をはかっていく。

 まるで冗談のようなサービスに受け止められた「ふくやIoT」。その一方で、いつも消費するアイテムを自動発注するというアイデアは、日本国内でも既に法人向けのコピー用紙や、お菓子などの補充サービスとして登場している。また海外ではAmazonが日用品の自動発注を手がけていることは知られている。IoTのわかりやすい事例とも言え、今後も新たなサービスが続々と登場することになりそうだ。