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小林政務官が語る、総務省が仕掛ける「5G利活用アイディアコンテスト」の狙い

 この秋、総務省が「5G利活用アイデアコンテスト」を実施する。2020年頃に商用化される、次世代の携帯電話向け通信技術「5G(第5世代の通信規格)」で、社会的な課題を解決できないか、アイデアを広く募るというものだ。

 総務省の若手スタッフからの発案でスタートするという同コンテストについて、小林史明総務大臣政務官は「スタートアップや個人も応募できる。総務省が座組をマッチングする幅広くチャレンジして欲しい」と大きな期待感を示す。

小林政務官

5Gとは

 5Gの特徴は、「超高速大容量」「超低遅延」「超多数接続」という3つのワードで表現される。通信速度は現在の100倍となる10Gbps、遅延は1ミリ秒程度(LTEの10倍)。で、1平方kmあたり100万台のデバイスが繋がるというスペックだ。

5Gの特徴
5Gの利用想定
各国での5Gの導入スケジュール
日本でのスケジュール

 5Gの商用化に向けて、大手キャリア各社は、異業種のパートナーシップを積極的に模索している。総務省でも2017年度からの3年間、実証実験をリードしており、今回の「5G利活用アイデアコンテスト」で優れたアイデアがあれば、2019年度の総務省の実証実験でも採用される見通しだ。

5Gで利用される周波数帯
今後はあらゆる分野で通信が活用される
通信キャリアはさまざまな事業者との連携が求められる
5G時代を見据えた実験は社会課題の解決に繋がる形

コンテストの概要

 5G利活用アイデアコンテストに応募できるのは、自治体、大学、企業、その他の法人、個人とされている。連名やコンソーシアムといった形でも応募できる。5Gの特徴を活かすオリジナルのアイデアを求めており、応募はしたくとも一般に公開してほしくない場合は、応募書類に「非開示希望」とわかりやすく書くだけでいいという。

コンテストの概要

 電波の活用例として、一般からニーズを募り、実証実験に繋げていくのは総務省として初めての試み。まずは一次選考として、2018年12月ごろを目途に、全国で地方選抜が実施される。このときは総務省の職員や大手キャリア、地元の有識者として大学教授や金融機関、地域ブランディングに携わる人などが審査員になると想定されている。

コンテストのスケジュール

 地方選抜を勝ち上がったアイデアは2019年1月~3月に実施される二次選考の対象となる。最も優秀なものには総務大臣賞が贈られ、そのほか優秀賞、特別アイデア賞などが選定される見込み。5~6個のアイデアがそこまで残るのではと小林政務官は語り、受賞したアイデアは2019年度の総務省の実証実験に採用されると見られる。

 2年後ではまだ現実にするのが難しいアイデアであっても、優れたものであれば審査で選抜すると小林政務官。コンテストを通じて、新たなニーズ、課題を見つけられたら総務省としては成功と位置づける。

企業のリードではなくユーザー視点で課題の解決へ

 既に大手キャリアが中心となって、さまざまな5Gのユースケースの実験が進められている。たとえば遠隔操作でショベルカーなど建設機械を操作する、自宅などオフィスから離れた場所で仕事する際にまるでその場に自分自身がいるかのように振る舞えるテレイグジスタンス、僻地での診察に4K/8Kといった高精細な映像を用いるといったユースケースが想定されている。

 このほかにも、大規模なスポーツイベントを会場の外でも、これまでにない臨場感で体験できる試みや、自動運転技術を用いたトラックの隊列走行などは、新たなエンターテイメントの価値、物流の効率化、地方での公共交通機関の新たな手段などに繋がっていく可能性がある。

2017年度の分として大手企業が主体となって進められている実験例

 これまでのユースケースの想定は、大手企業が中心となって、5G時代にも商用化されるとみられるが、今回の「5G利活用アイデアコンテスト」について、小林政務官は「企業起点から、課題起点に変わるという認識を持ってほしい」と語る。ユーザー視点でのニーズに基づいたアイデアを求めることで、社会課題の解決に繋げていく、という考え。

 通常であれば自治体やスタートアップ企業、個人といった立場で、5Gを何らかの実験に使うことは難しい。だが、「5G利活用アイデアコンテスト」で優れたアイデアに選ばれれば、パートナー企業と総務省がマッチングしてくれる。小林政務官は「ここがチャンス。プロトタイプを一緒に使おうよと、一緒に作る側にまわるのは今ですよと伝えたい」とその意義をあらためてアピールする。