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登山口の混雑や気温を可視化、KDDIが富士山の御殿場口でサービス

 KDDIは、富士山の御殿場口新五合目にIoTセンサーを設置し、登下山者数と温湿度の情報を、スマートフォンなどに向けてほぼリアルタイムで提供するサービス「ミエル フジトザン」の提供を開始した。提供期間は、開山期間いっぱいの9月10日まで。

 今回の「見える化プロジェクト」の取り組みは、静岡県御殿場市、小山町、KDDI、KDDI総合研究所が共同で行う。LPWAのセンサーを登山口に設置して、登山者数、下山者数を計測し、温度・湿度とともに情報をクラウドにアップロード。30分おきのほぼリアルタイムの情報として、登山口の混雑具合や気温などの情報が、専用Webサイトにてスマートフォンなどから確認できる。

「ミエル フジトザン」
「ミエル フジトザン」の情報(左)と、設置されるLPWAのセンサー(右)

 また、御殿場口にある情報提供施設「Mt.FUJI TRAIL STATION」(トレイルステーション)では、望遠鏡型の装置でVR映像を見られる「VR View Scope」が設置され、雲がかかって五合目から富士山が見えない日でも、付近で晴れの日に撮影した富士山の様子を臨場感のある映像で体験できる。これは、五合目までは観光バスで来て、登山はせずに帰る観光客などもターゲットにしているという。視聴は2分の映像で300円。料金の一部は寄付に回される。

御殿場口にある情報提供施設「Mt.FUJI TRAIL STATION」(トレイルステーション)。タクシーやバスなど車で来られる場所だ
「御殿場口ヒルクライム」などに対応するサイクルステーションも設置された
山の天候は目まぐるしく変化するが、この日、山頂付近の雲は晴れなかった
トレイルステーションに設置された望遠鏡型のVR視聴装置「VR View Scope」
300円で2分の映像を楽しめる
後ろのモニターは報道陣向けに設置されたもので、通常は設置されない
この日のように曇った日には、晴れた日の富士山をVRで見られる

 ほかにも、トレイルステーションをはじめとした山小屋など9カ所の案内カウンターには“翻訳タブレット”が設置され、増加している訪日外国人観光客への対応を目的に、タブレットとアプリを使った翻訳機能が提供される。

「KDDI AI翻訳・音声翻訳」アプリ
「音声翻訳」アプリ。背景にバス停の時刻表なども表示して、問い合わせの多い内容にも対応

センサーを刷新して設置

 同社は2017年にも同じコンセプトで実証実験を行っていたが、2018年の正式サービスの開始にあたり、通信モジュールの通信方式を変更したり、設置場所を拡充したりするなどの改善を施した。

 提供期間は、前回が8月から閉山までの1カ月間だったのに対し、今回は開山する2カ月間すべてが対象。通信方式は前回がLPWAのLoRaだったところを、追加的な基地局の設置が不要で既存の通信エリアを活用するLTE-Mを新たに採用。加えて、人感センサーだけでなく温度と湿度のセンサーも追加し情報を提供するようにした。

 センサーの設置場所は、前回は御殿場口に5カ所だったが、今回は御殿場口に2カ所、宝永山馬の背に2カ所、須走口に1カ所となっている。その上で、今回は(山頂を目指さない)ハイキング向けのルート、4カ所にも設置された。

 センサーの電源は、前回の実証実験ではリチウムイオン充電池が使われていたが、昼夜の気温差や湿度などの影響で、1回の充電で想定よりも短い時間しか利用できなかったとのこと。このことから、今回は単1形アルカリ乾電池が用いられている。センサー1台につき16本を使用し、約1カ月間駆動できるとのことで、開山期間中に1回の交換で済む形。

御殿場口新五合目の鳥居をくぐり、登りはじめてすぐに大石茶屋(のぼりが立っている所)がある。標高は1500m
大石茶屋の前から御殿場口・御殿場市方面を望む
大石茶屋からの登山道
IoTセンサーは大石茶屋から登山道に入ってすぐのところに設置されている
設置されたIoTセンサー。グレーのボックス2つがKDDIが設置したセンサーとバッテリーボックス。ベージュの設備は御殿場市が設置したカウンターで今回の取り組みとは別のもの
赤外線・人感センサーと下部にLiDARセンサーを備える
センサーの内部。環境耐性から乾電池駆動に変更されている。電池近くでボックス下部に付いているのが温湿度センサー。LTE-Mのアンテナは天面に内蔵されている
こちらは登山道の隣、下山道側に設置されたIoTセンサー
LTE-M(800MHz)を使うため専用の基地局は不要。写真奥の御殿場市に設置されているLTE基地局の圏内という

 富士山の登山において、御殿場口からの登山は登頂までの距離と必要な時間が長く(約8時間)、富士登山の中心的な入り口にはなっていないが、KDDIでは、ほかの登山口、ほかの山でもセンサー設置などの「見える化」を展開できるよう検討していく。