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沖縄セルラー、空手発祥の地・沖縄伝統の型をVRで継承

 沖縄セルラーとIMAGICAウェストは、沖縄文化観光スポーツ部空手振興課からの委託を受け、3D CGモーションキャプチャーVR技術を活用し、沖縄空手の型を継承することに取り組んでいる。

 空手は沖縄(琉球)が発祥の地とされているが、こうした事実を知らない人も多く、沖縄県の沖縄空手広報事業の一環として、最新のテクノロジーを活用したプロモーション動画が作成されることになった。

 モーションキャプチャーにより沖縄空手の型を撮影。空手が沖縄伝統の文化であることを意識させつつ、手指や足先の細かな動作や素早い動きをリアルで迫力あるVRで再現した。

伝統空手をVRコンテンツにした理由

 沖縄県文化観光スポーツ部空手振興課 課長の山川哲男氏は、なぜ県の空手広報事業の中で今回のような取り組みを行うのかについて、「遠くから離れて安全な場所から見たのでは、なかなか沖縄伝統空手の一撃必殺の迫力を体感できない。県として沖縄の伝統空手のすばらしさを県民のみならず世界の人々に知っていただきたい。型の迫力、武術性のすばらしさを体感していただきたい。何とかVRの中で型演武を再現できないかと取り組んできた」と説明する。

 委託を受けた沖縄セルラー電話 理事 営業本部 副本部長 ソリューション営業担当の甲斐田裕史氏は、「デジタルにすることで新城先生(の型)が100年も200年も残っていく。空手発祥の地の沖縄から世界に発信していきたい。絶対に本物を作るんだという強い思いで頑張った。自画自賛になるが、指の1本1本を再現できている」と語る。

 IMAGICAウェスト チーフプロデューサーの堀野洵氏によれば、沖縄伝統空手の達人、新城清秀氏(沖縄県空手道連盟理事長 上地流空手道拳優会会長)に協力してもらい、京都のD4Aスキャンスタジオで約100台のスチルカメラで撮影したボディと顔のモデルデータを使用し、沖縄県内のCGCGスタジオでモーションキャプチャーの撮影を行ったという。

沖縄県文化観光スポーツ部空手振興課 課長の山川哲男氏
沖縄セルラー電話 理事 営業本部 副本部長 ソリューション営業担当の甲斐田裕史氏
IMAGICAウェスト チーフプロデューサーの堀野洵氏(左)と富田修康氏(右)
モデルとなった沖縄県空手道連盟理事長 上地流空手道拳優会会長の新城清秀氏

 モデルとなった新城氏は、「もうちょっとのびのびした方がよかった。手足がもう少し伸びていればよかった。最新の技術なので編集の段階でうまくやってほしかったが(笑)、突きが短く感じた。緊張が動きに出ている」と振り返る。これを編集し、沖縄の雰囲気があふれるオープニングと型演武で構成される体験用コンテンツと、コントローラーで細部を確認できるレクチャー用コンテンツの2つを用意した。VRシステムとしてはHTC Viveを使用する。

 今回収録したのは「三十六(サンセイリュウ)」という型。県では他の型の記録・保存も検討しており、「昨年度の成果を検証しつつ、他の流派の達人にもお願いしていきたい」(山川氏)という。

収録の模様

 こうしたVRコンテンツをオンラインで公開するかどうかについては、山川氏は「大会のホームページなどで公開するのも方策の一つではあるが、平面で刷り込みをするよりも会場に行って体感してみたいというところを目的にしている」と語り、あくまで“体験”にこだわる。

 甲斐田も「簡便にVRを体験できる世界が間近にあるというのは事実だが、アミューズメントの世界とこうした伝統的なものを文化として後世に残していくというものでは質が違う。一般的なVRの世界とは、指先の動きなど、クオリティの差がかなりある。この作品は達人を残すという気概で取り組んでおり、より本物に近づけるために品質を上げている」と語る。

 県では、まず8月に開催される沖縄空手国際大会の100日前に県民ホールで開催される事前イベントに体験コーナーを設ける。8月の本大会でも同様の取り組みを行うほか、各地で開催される物産展や旅行博などでも体験できるようにする。

HTC Viveを使用
体験用コンテンツ
レクチャー用コンテンツでは細部のチェックも可能