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KDDIとナビタイム、自転車ながらスマホの危険性を訴えるプロジェクト第2弾

VRを活用した体験コンテンツも京都で披露

 KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険は、3月20日より「自転車安全・安心プロジェクト第2弾」を開始する。

 3社では、昨年9月に自転車ながらスマホの撲滅や高額賠償への備えへの意識向上を目指し、同プロジェクトの第1弾を実施していた。今回の取り組みは、その第2弾となるもので、VR(バーチャルリアリティー)技術を活用し、自転車ながらスマホの危険性を疑似体験できるコンテンツ「STOP!自転車ながらスマホ体験VR」を制作。

「STOP!自転車ながらスマホ体験VR」のイメージ
Gear VRを使って自転車ながらスマホの危険性を体験。左ハンドルに取り付けられたコントローラーのボタンを押してブレーキをかける
スマホのチャットに気を取られていると、直前まで飛び出してくる歩行者に気が付かない

 通常の運転時とながらスマホ時で視野やブレーキの反応速度がどれくらい異なるかを比較体験できるというもの。飛び出してくる歩行者に気づき、ブレーキをかけるまでの反応速度の違いが如実に表れる。

 今回の発表会は4月1日から自転車損害保険への加入が義務化される京都で開催されており、同コンテンツは、4月6日に京都市左京区の岡崎公園で行われる「春の全国交通安全運動スタート式」(京都府交通対策協議会主催)で体験できる。

 発表に先立ち、2月24日には京都府庁において、スマートフォンを使いながら自転車で走行した場合の危険性を検証する実証実験も行われた。同実験によれば、通常1.3回だった歩行者の見落とし回数が、ながらスマホ時には2.0回に、通常1.0秒だった歩行者認識時間が、ながらスマホ時には1.7秒になった。また、歩行者を注視する時間は、ながらスマホ時には通常時の23%に減少したという。

啓発動画「自転車ながらスマホの危険性を検証!」

 3月20日13時~4月19日15時にかけては、auの公式Twitterアカウントでつぶやかれる対象のツイートをリツイートしたユーザーのうち抽選で1000名にローソン ウチカフェ プレミアムロールケーキをプレゼントするキャンペーンも実施される。

交通事故の2割は自転車事故

京都府 府民生活部 安心・安全まちづくり推進課長の犬井勇司氏

 京都府 府民生活部 安心・安全まちづくり推進課長の犬井勇司氏は、自転車が関連する人身事故の状況について、「交通事故全体は13年連続で減少しており、自転車事故も減ってきてはいるが、全体に占める自転車事故の割合は約2割を占めている。交通事故全体の約2割が自賠責保険のない自転車事故ということで危険性が高い」と説明。

 その上で同氏は、「自転車側に責任がある事故も増えてきており、運転者の年齢は30歳未満が半分を占め、若年層に事故が多いことから、スマホ世代に向けての交通安全教育の必要性が高い。小学生から高齢者まで、年齢層別に参加体験実践型の交通安全教室を行ってきたが、体験することが重要で、今回の取り組みは効果的な疑似体験を提供できることから、今後の活動に期待している」と述べた。

500万円以上の賠償は月に1件以上

au損害保険 営業開発部 営業企画室長の田中尚氏

 au損害保険 営業開発部 営業企画室長の田中尚氏は、「自転車は免許も不要で誰でも気軽に利用できる交通手段だが、軽車両として自動車同様に交通規則が定められている。万が一、加害者になると民事上の責任と刑事上の責任、さらに道義的な責任も伴う」と法律上での自転車の位置づけを説明する。

 そうした責任があるにも関わらず、「自動車には強制保険(自賠責保険)があり、任意保険も普及しており、多くの場合、被害者も加害者も何らかの経済的な補償を受けられる可能性が高いが、自転車の場合はというと、2013年には自転車事故で9500万円もの賠償判決が出た。この加害者は保険に入っておらず、自己破産されていると聞いている。一方、被害者の方も生活が困難な状態ということで、民事上の責任を取ってもらうことができず、双方が困っている」(田中氏)というのが実態だ。

 こうした背景から、自転車保険への加入を求める声が大きくなってきたが、実際、au損保の場合、損害賠償の実績として、500万円以上の事故が月に1件以上あり、さらに約8000万円という事例もあったという。

 田中氏は、「au損保では、自治体と連携協定を締結しており、今後も啓発活動に努めるとともに、事故を未然に防ぐことにも引き続き取り組んでいきたい」と語った。

0.7秒の遅れが危険を呼ぶ

 実証実験を指揮した愛知工科大学 名誉・特任教授の小塚一宏氏は「歩行者を認識するまでの時間は、適正な運転時の1秒に対して、ながらスマホの場合は0.7秒遅れるという結果だが、10km/hでは約2メートル余分に進むことになる。この2メートルの差が結構大きく、事故に至るか回避できるかの差につながる」と指摘した上で、「実験の結果を通して、自転車に乗りながらスマホがいかに危険かを知っていただきたい」と語った。

愛知工科大学 名誉・特任教授の小塚一宏氏
実証実験の結果

一人でも多くの人に危険性を体感してほしい

KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎氏

 今回で2回目となる啓発キャンペーンだが、KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎氏は「第1弾も多くの方に参加いただき、一定の啓発にはつながったが、ナビタイムのアプリを使うというのが参加の条件となっていたこともあり、対象が少し狭まってしまっていた」と振り返る。それを踏まえ、「今回はTwitterでリツイートするということ多くの人に参加いただける形にした。さらに、実証実験やVRで目で理解して体感できるという施策を用意し、より多くの人に啓発できる」(鳥光氏)と、第2弾で工夫したポイントを説明する。

 鳥光氏は、今回用意したVRコンテンツについて、「多少の危険を感じながらも、これぐらいだったら大丈夫だと思っている人も多いが、反応速度の差を数値として確認でき、視野も確認できる。一人でも多くの人に体験いただきたい」と述べ、京都以外でも同コンテンツを体験できる場を用意していく意向を示した。