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災害時の情報リテラシーを実機で体験、KDDIの高校生向け出張講座

共立女子中学高等学校の高校3年生のクラスで開催された「スマホ de 防災リテラシー」。スマートフォンが1人1台用意され、専用アプリで、災害時の情報収集の難しさを体験できた

 KDDIは、青少年向けのワークショップ型出前講座「スマホ de 防災リテラシー」を都内の高校で開催した。

 「スマホ de 防災リテラシー」は、トライアルとしてこれまで何度か提供されてきたものをベースに、9月から正式に提供されているサービス。座学が基本の「KDDI スマホ・ケータイ安全教室」に加えてラインナップされたもので、主に災害時のスマートフォンの活用や、どうように情報を扱うべきかといった情報リテラシーについて、実機と専用のコミュニケーションアプリを使いながら学べるようになっている。

 「スマホ de 防災リテラシー」の対象は高校生で、学校がKDDIに開催を申し込む形。スマートフォンや専用アプリ、講師などはすべてKDDIが提供する。

 すでに兵庫県の高校で正式パッケージになった「スマホ de 防災リテラシー」が開催されていたが、1月11日には都内の高校では初めての実施となる、共立女子中学高等学校の高校3年生のクラスで開催され、その模様が報道関係者にも公開された。2017年度内はほかに5校程度での開催を見込んでおり、2018年度は実施数を拡大していく方針。

 「スマホ de 防災リテラシー」のねらいとして、災害発生後に飛び交う情報から必要な情報や正確な情報を見極めて選択できる必要性があるという教訓から「リテラシー教育」が掲げられている。また、対面ではないSNSなどでのコミュニケーションスキルの向上も図る。さらに、実際の被災地では、体力・地の利・スマートフォンなどでの情報取得、といった面で高校生が“頼りにされる”ことがあるとし、救助活動を含めたスマートフォンの活用を想定する。

 こうした狙いを実際に体験できるものとして、講座ではSNSアプリを模したチャットアプリ「チャットレ」を専用に開発。人数分のスマートフォンも用意して、実際にアプリでコミュニケーションを図りながら、災害時の情報の取り扱いの難しさや気をつけるべきポイントも体験できるようになっている。

被災後の避難や救助のための情報交換を体験

 講座では、1班を4~5名で構成。自分たちが行動する場所(被災地点)が記された地図と、被災状況などの“設定”を記した情報シートが配られる。なおこの情報シートには、自分の班の避難や救助活動には不要な情報も含まれている。

各班に配布される地図。スタート地点は班により異なる
被災状況などが書かれた情報シート。これも班により異なる

 班のメンバーは対面で一緒に行動する友達同士という想定で、情報シートに書かれた内容に基いて、通行できない場所を把握したり、避難場所を探したり、助けが必要な施設に立ち寄ったりなどの行動をしていく。ミッションのゴールは、スマートフォンで情報を収集・発信しながら、安全な避難場所と避難ルートと特定すること。

 ほかの班とは会話などでコミュニケーションは取れないが、ほかの班には自分の家族がおり、家族とはアプリ(チャットレ)を通じてコミュニケーションが図れるようになっている。

 ミッションがスタートすると、生徒は手元の情報シートの内容に基いて、通れない場所や、避難場所らしき施設を確認・特定していく。また、各自が持つアプリ上には、それぞれの家族経由でほかの班が把握している、通行止めなどの避難ルートの選定に必要な重要な情報や、救助活動に必要な情報が次々に舞い込みはじめる。

 アプリ上では、言葉が足らず、あいまいになってしまっている情報や、「ペットショップの動物が道路に逃げ出している」といった、不要な情報も流れ始めると、班の中の対面のコミュニケーションでも、持ち寄った情報の整理に一苦労するといった塩梅に。

 共立女子中学高等学校で実施されたこの回では、最終的にすべての班が、必要とされた救助活動を行え、行くべきではない施設には立ち寄らないという、パーフェクトな結果に。一方で、自分たちの避難ルートについては、情報が揃わなかったのか、選定に失敗してしまった班もあった。

ミッション開始。避難にふさわしい場所や避難ルートを選定していく
アプリ上でも情報が続々と集まるが……
ペットショップから動物が逃げたという情報も
班内でも各自がスマホで持ち寄る情報の整理に一苦労
ミッション終了、透明シートで答え合わせ
成功した班。救助活動を行った後、避難場所の正解である市民球場に避難するルートを選定できた
避難ルートの選定に失敗してしまった班。ほかの班からの情報不足からか、通行できなかったルートを選び、避難に適した場所も特定できなかった

ミッション終了、感想は

 ミッション終了後には、KDDIの講師から、実際にやりとりされたデータを基にして、情報の発信は具体的にすることや、情報を求めるばかりでなく、必要に応じて正しくほかの人にも共有することなどが重要と指摘された。また、実際の災害発生時には、使える情報を得ることは難しく、自分には関係のない情報も格段に多いとし、正しい情報を選別できることの重要性が改めて指摘された。

 講座を担当した学校側の教諭は、生徒の多くがスマートフォンを所有し、校内では電源オフという決まりになっているというが、(同校は中高一貫校で)中学校ではトラブルも散見されるため、正しい使い方について学べる機会が欲しかったとしていた。

 講座を体験した生徒からは、アプリで質問しても、思ったようなタイミングで返事が返ってこないことや、「自分が思った以上にパニックになってしまった」「情報の収集と発信の両方を行うのが難しい」と、情報の整理に苦労した感想も。「自分の言いたいことは、端的にまとめられるようにしたい」とも話しており、情報の正確さの重要性について早速実感していた様子だった。