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スマホで減災、山梨で富士山噴火を想定した高校生向け授業

研究授業の様子

 富士山が噴火したら、どうする?――山梨県総合教育センターは7月27日、スマートフォンを減災に役立てることを目的に高校生を対象とした研究授業の模様を公開した。授業の実施にあたっては、KDDIおよびKDDI研究所が協力している。

 授業が行われたのは、山梨県都留市にある山梨県立都留興譲館高等学校。工業科1年生(120名)のうち40名が参加した。ちなみに、今回の授業を受けた生徒のスマートフォン所有率は実に98%という。同校では、学校への携帯電話・スマートフォンの持ち込みはOKだが、校内での使用はNGというルールになっているとのこと。

 生徒たちは、大規模災害時の心得などの講義を受けた上で、下校時に富士山が噴火したという設定で、スマートフォンのチャット機能を活用して情報収集しながら、安全に避難所に向かう、という流れを体験した。

共助の中心は高校生

安全に避難し、周囲の人を助けるためには緻密な情報収集が必要となる

 避難体験に際しては、生徒全員に災害地図とスマートフォンが配布され、4人1組のチームに分かれた。被災した地点から自分が目指す避難所まで、制限時間内に安全にたどり着くとゴールとなる。

 公的機関からの支援(公助)を待っているだけではなく、自分で自分の命を守ること(自助)、さらには互いに助け合うこと(共助)を学ぶということで、避難途中には、けが人や高齢者、幼児などの社会的弱者が現れ、救済しなければならないというシーンも用意されていた。

 体力や行動力に優れ、他の世代よりもスマートフォンを使いこなせる高校生が「共助」の主役となれるということで、情報収集力や情報発信力に磨きをかけようということになるが、授業ではまず、不正確な情報は混乱の元になるとされた。その上で、人の命を救うためには、方角・場所・規模状況・時間経過といった事柄を具体的に示す必要があり、必ずしも自分には関係ない情報でも共有することで他の人が助かる場合があることも説明された。

正しいコミュニケーションが命を救う

授業を行った山梨県総合教育センター 主幹・研修主事の吉田恵子氏

 こうした説明を聞いた後、生徒たちは訓練用の地図と各組ごとに与えられた情報シートの内容を元に情報を整理。そこから具体的な事実を抜き出して他の組と情報共有を図り、他の組や周囲の人々を助ける段取りをテキストチャットを用いて相談しながらゴールを目指した。

 結果としては、ほとんどの組がゴールを果たしたが、厳しい条件設定が設けられた組が避難に失敗する場面も見られた。自分たちの命を守るためにどのように情報を発信し、時によっては他の組を説得して協力してもらえるように交渉を進めるなど、生徒たちはコミュニケーション能力が生死を左右することを学んだ。

 今回の授業を担当した山梨県総合教育センター 主幹・研修主事の吉田恵子氏は、最後に生徒たちに向かって「“いじめ”や“はずし”というネガティブな面もあるが、スマホに罪は無い。スマホは使い方次第で人の命を救えるツール。スマホのポジティブな使い方を身につけてほしい」とアドバイスしていた。

湯野 康隆