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クアルコム、Snapdragon 845実機によるデモを披露

高い臨場感のAR/VR、低消費電力、スマートスピーカーやType-Cイヤフォンなどをアピール

Snapdragon 845の実機によるデモンストレーションが実施

 米クアルコムがハワイ州マウイ島で開催した「Qualcomm Snapdragon Technology Summit 2017」。その最終日となる7日、同社は新世代チップセット「Snapdragon 845」を搭載した実機によるデモンストレーションを実施した。

 テスト用端末やリファレンスモデルのスマートフォン、スマートスピーカー、VRヘッドセットなどが展示され、現行のSnapdragon 835搭載機との性能差や、よりリアリティと没入感が増したVRを体感できるデモが用意されていた。ここではその内容を写真とともに紹介する。

完成度の高いリファレンスモデルが登場。AR/VRはリアルかつ滑らかに

 AIと“没入感”にフォーカスしたというSnapdragon 845の実力の一端に触れることができたのが、カメラの「Bokeh(ボケ)」機能やVRのデモ。これらを含め、デモの一部ではSnapdragon 845搭載スマートフォンのリファレンスモデルを使用していた。完成度は高く、一般のスマートフォンと全く変わらないサイズ・重量感どころか、むしろ薄いと感じるほどだった。

デモ会場で使用されたSnapdragon 845搭載スマートフォンのリファレンスモデル。かなりスタイリッシュなデザイン
OSの端末情報にも「SDM845」と表記されている
こちらはSnapdragon 845搭載のテスト用端末。リファレンスモデルと比べて縦横サイズは二回りほど大きく、厚みも4〜5倍はありそう
この検証機を使って、カメラのボケ機能を実演。人物を認識し、それ以外の背景をぼかすという、一眼カメラのような被写界深度の浅い写真を再現する。ぼかすだけでなく、全く別の背景に差し替えることも可能
Snapdragon 845搭載のVRヘッドセットのリファレンスモデル。見た目にゴツく、実際に装着しても若干の重量感がある。GPUのAdreno 630により、Room-scale 6DoF(部屋規模の6自由度)を実現。近未来のメディカルセンターのような場所を歩き回ることができるデモだったが、ユーザーの挙動に合わせて映像が違和感なく追従した
こちらはSnapdragon 835を搭載しているARグラス。マネキンに選んだ服や靴を試着させて購入可能なコンテンツを試すことができた。購入時は登録済みのクレジットカードを使い、虹彩認証により本人確認する想定になっている
視力の弱い人のために交換式のレンズも用意されていた。簡単に取り替えることが可能

1.2Gbpsの高速LTE通信と、ミドルレンジチップセットを超える電力効率の高さ

 Snapdragon 845は、チップセットにSnapdragon X20 LTE modemを統合している。これは、Snapdragon 835に統合されていたX16 LTE modemの次の世代となる最新4G LTE対応モデムで、最大通信速度は1.2Gbpsとなっている。

 クアルコムはすでに5G向けのモデムチップ「X50」も発表しているが、これをCPUと統合する予定は今のところ明らかにしていない。今後5G対応のフラッグシップスマートフォンが発売されるとすれば、まずはモデム機能のないSnapdragon 845(品番はSDA845になると言われている)とX50を組み合わせたものになると思われる。

Snapdragon X20 LTE modemを統合するSnapdragon 845のモバイル通信デモ。キャリアアグリゲーションにより12ストリームを同時に並行処理し、理論値に近い1.18Gbpsのダウンリンク速度でデータ通信していた
60GHz帯を用いるIEEE 802.11adによる映像伝送のデモ。4K HDR10の映像をコマ落ちやブロックノイズなどなしに、スマートフォンからテレビ画面に伝送して映し出している
Snapdragon 845はパフォーマンスを向上させているだけでなく、同じパフォーマンスを出す時の電力消費を従来より低減しているのも特徴。こちらはSnapdragon 835搭載機とSnapdragon 845搭載機で、同じ3D CGムービーを再生したときの消費電力を計測したもの。ピークはさほど変わらないようだが、835(左)より845(右)の方が全体的な消費電力の“山”は小さくなっている
今度は3種類、Snapdragon 660(左)、Snapdragon 835(中)、Snapdragon 845(右)を並べ、4K動画再生時の消費電力を比較。電力消費に対するパフォーマンスが良いとされている660と比べても、845は15%ほど電力を抑えながら同じ処理が行なえる

スマートスピーカー、Type-Cイヤフォン、360度カメラにも活きるSnapdragonのテクノロジー

 SnapdragonやSnapdragonに採用されている技術は、スマートフォンだけでなく、スピーカー、ヘッドフォン・イヤフォンなどのオーディオ機器、カメラ機器などにも活用されている。例えば、最近注目されているスマートスピーカー、ハイレゾ(Hi-Fi)再生機器、360度カメラにも搭載され、今や“モバイル”や“ネットワーク”という枠に関係なく、多様な分野に対応できる懐の深さを発揮している。

Aqstic Voice UIのデモ。モデムなしのSnapdragon 835(APQ8098)搭載のスマートスピーカー(リファレンスモデル)が内蔵する6つのマイクを活用することにより、周囲の雑音のなかでも、ユーザーの問いかけや命令をしっかり認識できる。本体はメロンほどの大きさ
「Hey Snapdragon, turn off the light.」とスマートスピーカーに命令すると家の中の照明が消える、といったデモを実演。スペースの関係からディスプレイ上での仮想的なデモとなっていた
USB Type-C接続のイヤフォン(リファレンスモデル)
Snapdragon 845に搭載されているAqstic Audioと同等性能のPCM 384kHz/32ビットをサポートするDACや、ANC(Active Noise Cancellation)などを実現する「Aqstic USB-C Headset Codec」(WHS9420)を搭載する
Snapdragon 845搭載のリファレンス端末とaptX HD対応ヘッドフォンの組み合わせで、高品質な音楽再生を試すこともできた
水槽に入った360度カメラのリコー「THETA V」
ACER「HOLO 360」、どちらもSnapdragon 625を搭載
水槽内の360度カメラの映像をVRスコープで眺めることが可能だった
Quick Charge 4+対応のUSB充電器
Snapdragon 845はQuick Charge 4/4+をサポートし、15分間で0%から50%まで充電できる。Quick Charge 4はUSB PD(Power Delivery)との互換性をもつ
現行の最新チップセットSnapdragon 835を搭載するスマートフォン製品が勢揃い