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LoRa用基地局のKerlink、「日本にはインド・中国に並ぶポテンシャル」

 IoT向けの通信技術「LPWA」(Low Power Wide Area)の一つ「LoRa」の普及を目指すLoRa Allianceの設立メンバーの1社であるKerlink。NTTデータが主催するセミナーイベント「豊洲の港から」にあわせて来日したVice President Asia-PacificのArnaud BOULAY氏らにLoRaに関する動向を伺った。

(左から)Country Managerの多々良常夫氏、Pre-sales EngineerのJeremy LE SOZ氏、Chief Sales OfficerのDidier LARRIEU氏、Vice President Asia-PacificのArnaud BOULAY氏

 「我々の一番のコンペティター(競合)はSIGFOX」と語るBOULAY氏。同氏はLoRaの特長について「Kerlinkなどによって提供されるステーション(基地局)を購入すれば、誰でも独自のネットワークを構築でき、SIGFOXとは異なりデバイスの管理も行える。AES-128をサポートすることで高い安全性も実現している」と説明する。

 同氏によれば、2020年までに500億台のIoTセンサーデバイスがネットワークに繋がり、その40%をLoRaが占めるとされているが、Kerlinkではその4分の1を狙い、全体の10%のシェアを獲得したいという。

 日本市場については過去15カ月にわたって調査を行ってきたというKerlink。日本のCountry Managerを務める多々良常夫氏は、2017年はキャリアやシステムインテグレーターがLPWAの技術評価を行ってきたテストの年で、2018年にはその結果が出て商用ベースでの市場が立ち上がると予測する。日本と韓国においては「LBT」(Listen Before Talk)への対応が求められるため、こうした市場ごとのチューニングも必要となる。

 Chief Sales OfficerのDidier LARRIEU氏は、「屋内用の小型のステーションも用意しているが、現時点では個人向けに何かを提供しようという話は無い。今後3年はBtoBが中心となって導入が進むと見ているが、それは経済的な理由で、企業ではコスト削減や生産性向上につながるのであれば導入が進む」と語る。

 普及にあたって鍵となるのは、LoRaのチップ単価よりもセンサーの単価(LARRIEU氏)。LARRIEU氏は「例えば湿度センサーなどが3~4ドル程度になれば、爆発的にこの市場が伸びる」とする。

 LoRaの利用事例としては、ヨーロッパでは、スマートパーキング、スマートライティング、スマートビルディングなどを繋ぐスマートシティ、南米では灌漑などを含むスマートアグリカルチャー、水道やガスなどの検針でも多くの使用例があるとする。今後は車両、商品、人間のトラッキングの事例が多くみられるようになるという。

 BOULAY氏は、「日本におけるLoRaの具体的な活用法についてはパートナーとなる企業にニーズを探してもらいたい」としながらも、事例の80%は全世界で共通したニーズに基づくもので、残りの20%が地域に根差したものになると見る。

 同氏は、「日本は我々にとって非常に大きなポテンシャルを持っている国で、アジア太平洋地域ではインドや中国と並ぶかそれ以上」と語り、日本への期待感を示している。