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レノボ、Tango対応の「PHAB2 Pro」で京都・二条城のARツアー
『ONE PIECE』のキャラが城内をガイド
2017年10月23日 15:43
レノボ・ジャパンは、人気漫画『ONE PIECE』とコラボし、Tango対応のファブレット「PHAB2 Pro」を使った京都・二条城のARツアーを10月7日~22日にかけて実施した。
京都市内では、ONE PIECEの連載20周年記念キャンペーンとしてスタンプラリー「京都麦わら道中記~もうひとつのワノ国~」が実施されているが、二条城ではその一環としてAR技術を駆使して観光ツアーが行われた。
ARツアーでは、ONE PIECEのキャラクターであるロビンとフランキーがアプリ内に登場し、二条城を案内してくれる。入城料(大人600円)とは別に500円の参加費がかかるが、予約受付のテント前には開城時刻の数時間前から行列ができるほどの人気ぶり。参加者には専用アプリがインストールされたPHAB2 Proが貸与され、画面内に登場するロビンとフランキーが城内を案内してくれる。
貸し出されるPHAB2 Proは、持ちやすいようにバンパーが取り付けられているが、これもフランキーが作ったという設定。通常、こうしたコラボ企画では汎用のケースや3Dプリンターで作ったバンパーが利用されることが多いが、ONE PIECEの世界観を崩さないように木製で、あえて手作り感を残したという。
入口でアプリをスタートすると、そのフランキーが登場。ツアーの概要を説明し終えると、ロビンにバトンタッチ。ロビンがガイド役となって城内の見どころを案内してくれる。
単純なARでは、キャラクターのマッピングがうまく働かず、実際の風景にめり込んで表示される場合もあるが、Tangoでは3次元空間の位置関係をきちんと認識・処理することで、こうした不自然さが解消されている。例えば、ガイド中、ロビンが立ち入り禁止エリア内に入っていくが、キャラクターがロープや柱の向こうにいれば、重なる部分の表示が消え、自然な見た目になる。
今回の企画の技術面を担当したNECパーソナルコンピュータ 商品企画本部 CXデザイナーの岩本義樹氏によれば、この精度を実現するためのエリアラーニングの作業が大変だったという。エリアラーニングの作業もPHAB2 Proのカメラを用いるが、一般客が入らない早朝の時間帯に1週間ほどかけて入念に行われた。こうした高精度のオクルージョンはTangoの特長とも言え、「iOSのARKitでは実現できないクオリティ」(岩本氏)になっている。
ガイド中、ロビンは立ち入り禁止エリアに入って説明を行う場面があるが、一部の場所ではロビンが立っている位置からの眺めも確認できる。通常は見えない角度から天井やふすまを眺められるVR的な要素も取り入れられ、歴史的建造物を今までに無い視点で見学できる。
岩本氏によれば、場所によっては薄暗い城内にキャラクターが自然に溶け込むように、周囲の明るさに合わせてキャラクターの色も変化するように工夫するなど、パッと見ただけでは気が付かないような細かな部分にまでこだわって開発したのだとか。光源の位置が分かれば、影をつけることで、さらに自然な見た目を実現できるが、その辺りは今後の課題だという。
また、今回のガイドアプリでは、参加者がツアーの行程から遅れると、ロビンが立ち止まって待ってくれるようになっている。ただ、ロビンを呼び戻してもう一度案内してもらったり、より詳しい質問をしたりすることはできない。これを実現するには、チャットボットなどのAIの実装が必要となるが、そこも今後の課題と言えるだろう。
今回の企画に協力した元離宮二条城事務所 事業推進係長の大畑真太郎氏は、「文化財を理解していただくツールとして、これまでは本やパンプレット、音声ガイドなどを提供してきたが、タブレットという新たな可能性が感じられた」と振り返る。また、ONE PIECEとコラボすることで、修学旅行以来訪れる機会が無かったというような20代~40代のONE PIECE世代への関心が高められたことも大きいという。
レノボ・ジャパンでは、さまざまな観光資源で応用可能なパッケージとして提供できるように、こうした取り組みを通してTangoの技術を磨き、ノウハウを蓄積していきたいとしている。
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