ニュース

ホテルの客室に通話・データ使い放題のスマホ「handy」日本進出

 handy Japanは、ホテル宿泊者が無料で使えるスマートフォンのレンタルサービス「handy」を日本で提供する。7月1日より、東京都のロイヤルパークホテルが国内で初めて導入する。

 「handy」は、ホテルの客室に備え付けられ、宿泊している間は自由に持ち出して使えるAndroidスマートフォン。国内通話と国際電話の通話料、データ通信料が無制限で無料となっている。

 データ通信はブラウザのほか、Google マップやYouTubeなどを利用できる。ユーザーのGoogleアカウントを登録すれば、自由にアプリをインストール可能。撮影した写真はユーザーのGoogle フォトなどにバックアップできる。

 独自のホーム画面を搭載しており、ホテルのホームページやhandyが作成した周辺の観光・グルメ情報、Google マップなどにアクセスできる。また、ホテルが配信する情報やクーポンなどお店が配信する情報が、プッシュ通知で端末に表示される。

 電話機能は国内通話・国際電話が無料で使い放題。ホテルの内線電話として、部屋同士の通話に利用したり、外出先からホテルのコンシェルジュサービスに通話したりできる。なお、日本ではIP電話(050番号)で提供される。これは国内の法令で090番号などの音声通話サービスの利用には本人確認が必須となっているため。

 スマートフォンで利用したデータは、チェックアウト時に抹消される。ユーザーが操作して登録したデータを削除することもできる。

利用開始時にチェックアウト日を登録
ホテルの内線電話としても使える電話アプリ
観光ガイド、クーポンを提供
ユーザーのGoogleアカウントを登録してアプリをインストールできる。ユーザーによるデータ削除も可能

ホテル側の料金は1部屋あたり月額980円~

 ホテルが「handy」を導入する際の料金は、1部屋あたり月額980円(税抜)。この料金で端末・ソフトウェアの利用料、ホテル従業員向けの導入教育、コールセンターによるサポートが含まれる。

 また、交換保証として、ホテルの部屋数あたり最大10%の端末が無償で提供される。例えば100部屋あるホテルの場合、100部屋分のhandyを契約すると110台の端末が納入される。予備の端末は、宿泊客が端末を紛失したり、端末が故障したりしたときの交換用として利用できる。

 一部の追加機能はオプションとして提供される。例えば、テザリング機能や、多言語対応(初期状態では日英中の3カ国語)、国際電話の通話先国の追加(初期状態では5カ国)などがオプションとなっており、ホテル側がhandyと契約すると、宿泊客に無料で提供される。

 日本進出にあわせて、9月30日までに申し込んだホテル・旅館などには、1年間無料で基本サービスが提供される。無料期間中の解約でも違約金は発生しないという。

収益源はホテルの利用料+広告収入

左から、シャープ 取締役 兼 専務執行役員 長谷川祥典氏、handy Japan 代表取締役 勝瀬博則氏、ロイヤルパークホテル 常務取締役総支配人 笹井高志氏

 発表会ではhandy Japan 代表取締役の勝瀬博則氏が登壇し、handyのサービスとビジネスモデルを紹介した。

 「handy」は、ベンチャー企業 Tink Labs(ティンク・ラボ)が2012年9月に香港で提供を開始。世界中に展開し、ヒルトンやハイアットなどのハイクラスホテルを中心に導入が進んでいるという。日本ではTink Labsとシャープが出資した合弁会社のhandy Japanがサービスを提供する。

 ホテル側のメリットは、handyのスマートフォンを通じて宿泊客とコミュニケーションを取れることや、レストランなど周辺施設への送客、ユーザー満足度の向上、災害時の安否確認に使えることなどを紹介。口コミサイトのトリップアドバイザーと連携していることも特徴で、handyを導入したホテルの平均では、同サイトでの口コミが50%増加し、評価も向上しているという。

 また、ホテルは宿泊客の行動履歴を匿名化した形で、マーケティングデータとして利用できる。旅の目的や記事の閲覧履歴、言語選択などの統計を把握し、効果的なプロモーションに活用できるという。

 handyの収益源はホテル側から得る利用料と、スマートフォンを通して提供する広告収入が2本柱となっている。広告機能は位置情報などを活用し、ユーザーが求めているサービスを先回りして表示することで効果を高めている。すでに香港では広告収入がホテルの利用料を上回っていると紹介された。

 勝瀬氏はhandyの月額980円という料金について「1日あたり33円。これはホテルのアメニティとして提供されるペットボトルの水1本と同じ値段」とそのコストパフォーマンスの高さを強調。新しいホテルインフラとして普及を狙うとした。

シャープが出資・端末納入、今後は販売協力も

 続いて登壇したシャープの取締役 兼 専務執行役員 長谷川祥典氏は、出資を決めた背景を紹介した。

 海外でhandyサービスを提供するTink Labsは、シャープの親会社となった鴻海(フォックスコン)から出資を受けている。日本進出にあたって、鴻海より紹介を受けて、シャープの将来構想との親和性の高さを評価して合弁での決めたという。

 シャープがスマートフォンやロボホン、家電で掲げる「AIoT(AI×IoT)」構想は、機器とサービス、クラウドを初めとしたプラットフォームを三位一体で提供するもの。handyも同様に機器、サービス、プラットフォームを一体として展開している。

 handy Japanが採用する端末は、シャープが納入する。鴻海がhandyの海外向けサービス用に開発した端末をODMとしてシャープブランドで提供する形となっている。日本のネットワークに最適化させた上で、日本向けの品質管理の元で製造しているという。通信サービスはNTTドコモ系のMVNOを利用している。

 シャープは今後、handyとの連携を深めていく。長谷川氏は一例として、シャープがホテル向けに納入している空気清浄機などとの販売連携を紹介。日本向けの機能を搭載した独自端末の開発についても、handy側からの要望があれば行っていくとした。