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「ドローン基地局」飛翔~UQも初参加のKDDI防災訓練

 KDDIは、大規模災害を想定した災害対策公開訓練を実施した。「ドローン基地局」の飛行訓練が実施されたほか、UQコミュニケーションズが初めて参加した。

「ドローン基地局」飛翔

 今回、初披露された「無人航空機型基地局(ドローン基地局)」。被災直後、通信が途絶えた山間部を上空からLTEエリア化する非常用基地局だ。

 あわせて、空中撮影用ドローンによって、被災地域の上空を撮影し、映像で確認するデモンストレーションも披露された。将来的には、この2つの機能が、1つのドローンに統合されるという。

 防災訓練では、伊豆大島が大規模災害で孤立したという想定。ヘリコプターで上陸後、空撮用ドローンで状況を観察し、基地局ドローンを飛行させるという訓練が行われた。到着からドローン基地局の組み立てにかかる時間は、15分程度としている。

【「ドローン基地局」の離陸(約57秒)】
ドローン基地局
上部にLTE対応の基地局装置、下部にWi-Fi中継器を備える
ヘリコプターで3名が上陸
ドローンをセットアップ
空撮用のドローンは市販品を使用している

山間部を空からエリア化

KDDI 電波部 マネージャーの遠藤晃氏

 防災訓練にあわせ、KDDI 電波部 マネージャーの遠藤晃氏が「ドローン基地局」のコンセプトを紹介した。

 災害発生時にライフラインとなる携帯電話ネットワーク。途切れさせないための対策として、自動車に基地局を搭載し、臨時にエリア化する移動基地局車の配備が進められてきた。

 しかし、2011年3月に発生した東日本大震災では、道路が通行不能となり、陸からのネットワーク復旧が困難となった。その教訓として、KDDIは、非常時に「海」「空」からエリア化するための対策の実用化を進めている。

 「海」からの対策は、船舶に搭載できる衛星回線をバックホールとした基地局だ。23日、系列会社のケーブル敷設船「KDDIオーシャンリンク」に実践配備が発表された(※関連記事

船舶型基地局(左)。バックホールは衛星で、衛星アンテナ(右)をベースに、揺れる海上でも追随する、スタビライザーのような機能を備える

 一方、「空」からの対策となるのが、今回披露された「ドローン基地局」。陸からも海からも対策が困難な場合に出動する方針だ。

 auの「ドローン基地局」は、飛行しているドローンの周囲1km程度を携帯電話エリアにする。主に山間部の“谷間”となる場所など、障害物が多い場所を空中からエリア化するためのツールだ。

 見通しのよい空中では、電波はより遠くまで届く。ドローン基地局では、地上の基地局からのLTE電波を中継してエリア化する。

 また、Wi-Fiの中継器を搭載することで、地上から光回線などをWi-Fiで中継して、LTEエリア化することもできる。将来的には、ドローンを編隊飛行させ、数珠つなぎにWi-Fiを中継することで、より遠くの地点もエリア化可能とする。

 ドローンの連続飛行時間に制約があり、1回の飛行では30分程度の利用に留まる。今後、ドローン自体のバッテリー効率の改善進める一方で、同じ役割を担うドローンを2基用意し、交互に飛ばすことで利用時間を延ばす試みも行っていく。

 ドローンを活用した基地局としては、NTTドコモも開発しているが、地上に設置した基地局車のアンテナを、空中に運ぶためにドローンを利用している。KDDIのドローン基地局は、ドローン自体が中継局として機能するというコンセプトの違いがある。

 KDDIは、3月以降に全国10カ所の保守拠点ににドローン基地局を配備し、実証実験を進める。各地域の気象条件などのデータを収集し、実際の現場で使いやすいドローンへと改良するという。

 なお、ドローン基地局は、現在は法制度の整備されていないため、実際の被災地で利用することはできない。同社は実証実験と並行して、法制度化に向けた働きかけも行っていく。

UQコミュニケーションズがKDDI防災訓練に初参加

 今回のKDDI防災訓練では、グループ傘下のUQコミュニケーションズが初めて参加した。2017年2月に両社は防災協定を締結し、災害時の相互支援体制を強化する。

 防災訓練では、KDDIの基地局車のアンテナやバックホール回線を共用し、au LTEとWiMAX 2+の両サービスを提供するという想定で、基地局車を展開していた。

 UQコミュニケーションズはWiMAX 2+のネットワークを独自に運用しており、基地局車をKDDIとは別に展開している。大規模なイベントなどのネットワーク対策では、KDDIの基地局車で共用することもあったが、災害時の出動実績はなかった。

 共用とすることで、KDDIの基地局車にWiMAX 2+の制御装置を接続するだけで両方のネットワークが提供でき、被災時の効率化につながる。

制御装置を運ぶだけになるため、UQ側は専用車両が不要となる

その他の取り組み

 防災協定を結んでいる、イオングループも訓練に参加。風船を膨らませて臨時避難所を屋根にする「バルーンシェルター」を披露する予定だったが、風が強かったため中止となった。バルーンシェルターは、仕様上は風速10m/sまでの環境で組み立て可能としている。

 そのほか、移動基地局車や、レンタルしたトラックに搭載できる可般型基地局、船舶型基地局などが公開された。

ロボットアーム付きドローンも展示されていた
基地局車は大小さまざま。一般的なトラックに搭載できる可搬式基地局もある
災害時Wi-Fi「00000JAPAN」を簡単に展開できるスーツケース型のWi-Fiアクセスポイント。WiMAX 2+をバックホールとして利用すれば、電源に繋ぐだけで展開できる
イオングループからは、イオン銀行のATM搭載車が展開。実際に現金が引き出せるようになっていた