ニュース

ソフトバンク、ヤフオクドームで「LTE-Broadcast」の実証実験

 ソフトバンクは9月17~19日、福岡ヤフオクドームにおいて、映像をリアルタイムに一斉配信する「LTE-Broadcast」の実証実験を行った。

 この3日間は、福岡ソフトバンクホークスと、オリックスバファローズの3連戦。3塁側のシートに、クラブホークス会員の中から3500名以上が応募し、1試合あたり50組100名が実証実験に参加した。

 参加者には、実験用にカスタマイズされたシャープ製のAndroid端末「AQUOS Xx2」を配布。1塁側の屋根に設置されたZTEのLTE-Broadcast専用TD-LTEアンテナから、3塁側に向けてLTE-Broadcastの電波が飛ばされていた。

1塁側の屋根に設置されたZTEのLTE-Broadcast専用TD-LTEアンテナ

 通常のLTE通信は、ユニキャストとして、基地局と端末が1対1で通信を行っている。そのため、ドーム内で多数の観客が同時に映像コンテンツを視聴すると、ネットワークに負荷がかかり、混雑してしまい、満足な映像品質を得られなくなってしまう。仮に100人のユーザーがアクセスすれば、100本のリソースが必要になってしまうからだ。

 LTE-Broadcastであれば、基地局側から一方的に端末に映像が配信されるため、ユーザーからの通信要求を受けることなく、基地局側からの1本のリソースで済む。野球場のような多数の観客が集まる場所での映像配信に向いた技術とされている。

 今回の実証実験では、球場内にある6台のカメラを活用。TVBankが持つテレビ放送と同じアングルの映像と音声に加え、ソフトバンクホークスが持つ投手映像の一塁側と三塁側からのカメラ、打者を被写体とした一塁側と三塁側のカメラ、さらに天井から本塁を撮した計6台となる。

 実証実験の参加者は、AQUOS Xx2の専用アプリ上で、カメラアングルを切り替えたり、選手の成績情報を確認できる。実際のプレイと比べて、7~8秒ほどの遅延が発生していた(それでもスポナビライブの映像と比べると20~30秒ほど速い)。

 球場内で撮影された映像は、ドーム内に設置されたクイックプレイ社のサーバーでエンコードを行い、一度、VPN経由で東京にあるZTEが持つコアネットワークに送られる。その後、データスタジアムの選手情報などを付加し、同じVPNを通って、ヤフオクドームに戻ってきて基地局から配される流れとなる。

 配信されている映像は「H.265で、30fpsで720pHD画質での配信となる。1チャンネルあたり1Mbpsぐらい」(クアルコムジャパン、ビジネスデベロップメント・臼田昌史スタッフマネージャー)という。

 AQUOS Xx2が実証実験用端末に選ばれた理由について、ソフトバンク・プロダクト本部戦略・企画統括部スマートデバイス企画部スマートデバイス企画2課、瀧川裕之課長は「もともとチップセットが対応しており、ミドルウェアを入れることで対応が可能となった。ハードウェア的な改修は行っていない」という。

 クアルコムによれば「すでに普及しているSnapdragonであればハードウェア的に対応は可能。あとはサービスを受信できるようにソフトウェアをインストールすれば良い。これはメーカーやキャリア側で実装してもらうことにある」(臼田氏)という。対応しているSnapdragonは「型番でいえば800から。2013年から商用化されはじめている」(クアルコムテクノロジーズ、Hans Agardhプロダクトマネージャー)という。

 今回の実証実験は、ソフトバンクがプロジェクトのとりまとめを行い、基地局はZTE、LTE-Broadcast機能を持つチップセットはクアルコム、サーバーはクイックプレイ、アプリ開発はフランスのintellicore社、端末はシャープ、選手情報はデータスタジアムなど、全10社の協力により実施されてた。

 瀧川氏は「今回の実験で、技術的な検証をするだけでなく、ユーザーがサービスとして受け入れてくれるものかの反応を見てみたい」と語る。

 今のところ、次回の実証実験や商用サービスの具体的なスケジュールは未定。ソフトバンクでは、スマホ向けに「スポナビライブ」というスポーツコンテンツの配信サービスをすでに手がけているが、将来的には、スポーツライブ観戦の新たな楽しみ方をLTE-Broadcastで提供したい考えだ。