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クアルコムがLTE対応モデムの優位性を猛アピール
上りキャリアアグリゲーションのデモも
(2015/6/2 17:39)
6月2日に開幕した「COMPUTEX TAIPEI」に合わせ、米クアルコムはプレスカンファレンスを開催。同社が発売するLTE対応モデムの性能をアピールした。クアルコムは普段、こうしたプレスカンファレンスで他社との比較は行ってこなかったが、今回は名前を伏せつつも、メディアテック、インテル、サムスンのモデムを挙げ、実測値を比較。対応機能の違いも一覧表にまとめるなど異例の対応で、ライバル心をむき出しにしていた。
クアルコムのマーケティング担当VP、ティム・マクドノー氏は、「おそらくもっとも重要なのは、製品がどのようなパフォーマンスを示すか」と述べた上で、データ通信の重要性が上がっていることを強調。その一例として、端末上で撮影できる動画のサイズ(解像度)が年々上がり、2012年には4Kに達しているとした。それに伴い、端末に搭載されるディスプレイの解像度も上がっている。
こうした状況に対応すべく、LTEはキャリアアグリゲーションを採用し、速度や容量が拡大されている。そのキャリアアグリゲーションをはじめとする技術に、いち早く対応しているのがクアルコムのモデムだ。「Snapdragon 810」に対応する「X10 LTEモデム」は、カテゴリー9のLTEに対応。放送のような一斉配信にLTEを使う「LTEブロードキャスト」や、日本で普及しつつあるVoLTEなど、LTEに関する主要な技術を網羅しているのはクアルコムのモデムだけだという。
また、「依然として西洋諸国では3Gも重要な方式」だといい、アップロードのピーク速度が他社より速いことを強調。中国移動が採用するTD-SCDMAや、日本、米国で一般的なCDMA2000に対応しているのも、クアルコムモデムの強みとなる。こうした特長を述べた上で、通信速度のパフォーマンスや、省電力性を比較したスライドを公開。メディアテック、インテル、サムスンと比べ、スループットや通信時の消費電力、待機時の消費電力に優れていることを解説した。
ただし、スライドに掲載されていた比較項目は、競合他社ごとに異なっている。たとえば、省電力については、対インテルの場合、通信時で最大14%、待機時で最大142%の省電力を実現していると説明する一方で、対サムスンの場合は最大10%という通信時の結果しか掲載されていなかった。待機時の消費電力はほぼ同じか、むしろサムスンの方が優れている可能性もある。そもそも、データはクアルコムが選定した環境で取得しているため、参考にする際には注意が必要だ。
続けて登壇したマーケティング部門 シニアディレクターのピーター・カーソン氏は、LTEモデムの特徴を改めて解説した。すでに発表されている製品として、改めて紹介したのが「X12 LTEモデム」。2015年中の発売が予定されており、3波のキャリアアグリゲーションによって下り最大450Mbpsを実現するほか、アップリンク(上り)のキャリアアグリゲーションにも対応。最大100Mbpsでアップロードを行える。
製品のデモコーナーには、カテゴリー10対応モデムを内蔵したプロトタイプの製品が置かれており、実際に上りのキャリアアグリゲーションを行っている様子を確認できた。説明員によると、デモはTD-LTEで行っており、Band 40、20MHz幅のLTEを2波使ってキャリアアグリゲーションしているという。「技術的には、FDDでも問題ない」と述べていた。デモの説明をしていたのが、中国のクアルコムだっためTD-LTEでの紹介になっていたようだ。
クアルコムアセロスからは、IEEE 802.11acのMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)対応ラインナップが発表された。802.11acはWave1で80MHz幅の帯域に対応。Wave2ではMU-MIMOと、160MHz幅、もしくは80MHz幅×2の通信を実装している。発表されたのは、このWave2に対応したチップセットで、家庭用ルーター向けが「QCA9984」、エンタープライズ用が「QCA9994」となる。クアルコムによると、すでにサンプルが出荷されているという。