インタビュー
法林岳之×深澤真紀 AQUOS K特別対談
法林岳之×深澤真紀 AQUOS K特別対談
日本メーカーが日本人のために作った「日フォン」(にふぉん)
(2015/2/12 10:00)
折りたたみボディにAndoridを搭載したシャープの「AQUOS K」。さまざまな意味で話題のこの端末については、「ガラホ」「新世代ケータイ」などなど、呼び名もさまざま。そんな中、AQUOS Kのことを「日フォン」(にふぉん)と呼ぶのが、コラムニストで淑徳大学人文学部客員教授の深澤真紀氏だ。ガジェットオタクを自称する深澤氏と本誌コラムなどでおなじみの法林岳之氏が、AQUOS Kについて対談した。
「ガラホ」は意味不明、「日フォン」と呼ぶ理由
――先日、auからシャープのAQUOS Kが発表され、この端末を「ガラホ」と呼んだりする人がいるわけですが、深澤さんはAQUOS Kを見て「日フォン」と名付けたそうですね。なぜ「日フォン」なんでしょうか?
深澤氏
そうですね、もともと私はとてもガジェットが好きで、もう20年以上、モバイル機器を使っているオタクなんです。ただ、私の世代はガジェット音痴の人ばかり(笑)。だから私が駆け込み寺のようになっていて、相談されることが多いんですよ。「ガラケー(フィーチャーフォン)が格好悪い」って。60代くらいの人はガラケーでいいと諦めがつくんだけど、50代の前後だと「ガラケーはちょっとね」と悩んでいる人が多い。ただ、私個人的な悩みとしては「あなたたちにスマホを勧めると面倒くさい」っていう(笑)。
一同
(笑)
深澤氏
わけのわからない電話がきたとか、目覚まし時計の設定が見つからないとか、そういうのを何度も相談されるので嫌だな、と思うわけです(笑)。あともう一つ、「ガラパゴス」って言うのは全然悪いことではない、と思っていて、日本のケータイの独自の進化って私は結構好きなんです。「ガラケー」という言葉を前向きに捉えていたんですよ。だけど、私が名付けた「草食男子」という言葉のように、本当は褒め言葉だったのに、世間的には悪口になっていたりする現実もあります。「ガラケー」は“二つ折り”で“ハードキー”が付いている、ハードとして完成された形だと思うんです。
この形を捨てて、全てがスマホの形にいくのは、どうなのかな? と思っていたんです。世界的にその方向にいく流れの中で、あえてここに「半歩下がる」というか、任天堂の「枯れた技術の水平思考」ではないですけど、そういうことをやるのが“日本っぽい”のかなと思って。
法林氏
うんうん。
深澤氏
まあ、「ガラホ」っていう言葉は、ちょっと考えてみると意味が分からない。「ガラケー」の「ケー」(携帯電話)と「ガラホ」の「ホ」(Phone) って同じじゃ? って(笑)。それと「日本」とかけて、こういう考え方を「日フォン」と呼ぼう、と。AQUOS Kそのものより、AQUOS Kのようなケータイの考え方という意味で「日フォン」と名付けたんです。
――そのあたりをもっと詳しく教えてください。
深澤氏
最近のケータイは“進化”ばかりで、進化の過程でいろんなものを捨てていることを忘れているように思うんです。そこにもう一度目を向けたかった。ガラケーからスマホというのがまさにそうですよね。片手操作でアクセスしやすい、非常によくできたカタチ=ガラケーを捨てて、非常に難易度の高いインターフェイスのスマホにいっている。古いモノにも良いものがあるはずなのに。AQUOS Kは、古いけど完成されたカタチに、新しいハードやソフトが入っています。温故知新、和魂洋才というか、2つの価値観を上手に合わせている。この考え方が日本ではとくに必要になってくるのではないかな、という思いを「日フォン」という言葉にこめています。
――フィーチャーフォンの世界観を前向きに捉えているんですね。
深澤氏
ええ、「日フォン」は日本独自の進化をマイナスに考えるのではなく「面白い」という思いも込めています。日本のモノの“変な”進化は、アラブや中国、インドの富裕層にもウケるのではないかと思っています。メーカーはどうしても数を売るために安いケータイを作りがちですけど、それを日本がやるのは面白くない。グローバルには無い変なモノを作り続けたほうが日本には良いのではないかな、と私は思っているんです。AQUOS Kは私のところに相談にくる人にも勧められますしね(笑)。
法林氏
モバイル業界を常に取材している側から見ていると、テレビ、新聞で報道されている内容には少し違和感があるな、と日頃から思っていて、スマホが出てきて、従来のケータイを悪い意味で「ガラパゴス」と言うことが多くなっているんですが、それってそもそも「ガラパゴスの人(エクアドルのガラパゴス諸島の人)」に失礼だと思うんですよね。
深澤氏
そうそう、「ガラパゴス」って素晴らしいと思うんですよ。多様な進化の一つなんだから。
法林氏
そうですよね。より一人一人に、その人に合ったモノが求められるはずなのに。なにかこう「ガラパゴス」がマイナス方向にいくのはもったいないと感じています。「ガラホ」や「スマホケータイ」という呼び方もそうですが。
深澤氏
「スマケー」という呼び方も以前ありましたよね。
法林氏
ええ、そういう言葉ってお客さんに分かるの? っていつも思っていたので。AQUOS Kではもっと上手く伝えないといけないと、と感じているんですよ。
「ガラケーユーザー=リテラシーが低い」は大間違い
――ところで、AQUOS Kの“日本らしさ”とはなんでしょう?
深澤氏
日本らしいモノって、最初に出すと「変なモノ」にさらに「変なモノ」が付いていると思われますよね。「カメラに○○が付いている」とか。だけど結果的にその変なモノに収れんされていくんですよ。だから日本らしいものって必ずしも「おもてなし」や「繊細」だけではない、という気がしているんです。ユーザーがいるところに何かをやっていくだけでなく、ユーザーがいないかもしれないけど、とりあえずやってみよう、というのも日本らしさだと思っています。AQUOS Kの場合は、ユーザーがいるところだけど、そこに「これもってくるの?」というのが面白い。
私の周りはガラケーだから「LINE難民」(LINEが使えない人)ばかりで、ちょっと使える人でもLINEを(ブラウザから)呼びに行くので使うのが大変。だからチャット状態にもならない。だけどAQUOS KならLINEも普通に使えるようになる。
法林氏
フィーチャーフォンの人もLINEはしたい、と。
深澤氏
そう。そもそもガラケーの人はやりたいことが少なくて、それができれば十分という良い意味で割り切っているんですよ。今回、AQUOS KがGoogle Playとの紐付けをしませんでしたよね。これも良い割り切りだと思います。スマホの何が大変って、Google Playとか、アカウントが皆を苦しめるんですよ(笑)。
アカウントやIDがいっぱいあって大変でしょう? 「このIDはどういう関係なの?」って相談されることも多いんです。でも説明のしようがない。だから会員権みたいなもの、と説明するんですけど、やっぱり説明するのは面倒くさい。
法林氏
もともと日本のフィーチャーフォン市場が海外から5~10年は先行していたイメージがありますよね。そういう意味ではガラケーユーザーはすごく洗練されている。
深澤氏
そうなんですよ。
法林氏
そういうガラケーを使っている洗練されたユーザー向けに、AQUOS Kが出てきたのはすごく意味がある。スマホが出てきた頃に、世界のフィーチャーフォンを見ると、通話とSMSくらいしかできなかったところが多かったわけですから。
日本のフィーチャーフォンはテレビを見られるわ、電車にも乗れるわ、そんな高機能なものがあるから、最初はスマホがなかなか普及しなかった。今はスマホに一定量まで移行したけど、それでもフィーチャーフォンを使っている人たちは、たくさんの機能は使わないけど、限られた機能を深く使っているわけですよ。「通話をたくさん使う」「おサイフケータイ絶対使う」とか。AQUOS Kでも対応した「テザリング」をタブレットと組み合わせて使いたいとか。
いろんなニーズはあるんだけど、だからといってスマホみたいにたくさんの機能を使ってあれもこれもします、ではない。自分の使いたい機能をキッチリ使う、というニーズなんです。だから今AQUOS Kが出てきたことには意味がある。
あと世の中に誤解があると思うのが、フィーチャーフォンを使うユーザーがリテラシーが低いと言われていること。
深澤氏
あぁ、思われがちですよね。
法林氏
そうではありませんよね。だって10数年、なかには20年近くフィーチャーフォンをはじめとしたモバイル端末を使っているユーザーが一定数いるわけで。
そういう人たちに応えるケータイが欲しい、と前から思っていたので、AQUOS Kは面白い取り組みですよ。
深澤氏
一方で最近「アメトーーク!」(テレビ朝日の番組)で「iPhone使いこなせてない芸人」というのがやっていたけれど、ガジェット音痴の人がスマホを使うとこうなるんだな、っていうのが分かって感動的でした(笑)。「ここまで概念を理解していないのなら、持っていないほうが良い」とまで思いましたから。だから、これからiPhoneをはじめスマホにリテラシーの低い人が集まっていくのは心配。ガラケーを使いこなせてない人が、使いこなせないままスマホに移っていくわけですから。「OSのバージョンアップを全然していない」とか、怖っ! と思いましたけど。
一同
(笑)
深澤氏
その恐怖が分からないままいっているわけですよ。それにフィーチャーフォンとスマホはインターフェイスが大きく違うので、これは苦痛なんです。若い人ほどすぐに慣れるので苦痛ではなくなるんですけど、年をとると慣れるのに1カ月くらいかかる。電話にすら出られないって本当にあるんですよ。その苦痛をあえて与えてまで使う必要があるのかな? と道具としてのスマホに思うんですよ。だからAQUOS Kなら道具としての苦痛がだいぶ和らぐと思う。
ユーザーに「慣れろ」と言うのは無理があります。「iPhone使いこなせてない芸人」を見ていると、フリック入力すら無理みたいだし。「あ」「い」「う」「え」「お」とトグル入力(何度もボタンを押して入力する方法)なら、ハードキーがあるほうがいい。カチカチカチって押せばいいんだから。何年もかけて培ってきたフィーチャーフォンのリテラシーを、スマホで捨てさせることは本当に良いことなのか? 疑問ですよね。
――話はちょっとズレますが、深澤さん自身はすぐにスマホに変えられたんですか?
深澤氏
私は「おサイフケータイ」をよく使うので、おサイフケータイ対応のスマホが出てきてから変えました。過去にはW-ZERO3を使っていたりもしました(笑)。今ではウェアラブルデバイスと組み合わせてスマホを使っています。
ガラケー向けのサービスもどんどん撤退していますしね。ガラケーを使いこなしている人にとっては、この状況は困ったことなんですよ。ガラケーを使うのが少しずつしんどくなってくる。だけどガラケーのユーザーは声を挙げない。あるコンテンツ会社の人と話したとき「荒れないユーザーだ」と言っていましたね。スマホのユーザーだったら、サービスの撤退を発表したら荒れる、と(笑)。
法林氏
フィーチャーフォンのユーザーは、もう仕方ないと思っているんですよね。メールでリンクを送っても見られない場合もある。だからといって「送りなおしてよ」とも言ってこない。
深澤氏
そうそう。「私がガラケーだから悪いんです。ごめんね」っていう感じ。ネットのQ&Aとか見ていても、「私がガラケーだから悪いんですか? 悪いんですね」みたいな(笑)。
たしかにLINEを使わない人にキャリアメールを久々に送るときは面倒くさい。キャリアメールのアプリを立ち上げることがね。キャリアメールを使っている人って、ドメイン指定受信みたいな制約が多いので、PCメールを受けとれないとか。そうすると面倒くさいから、そこまでして送らなくていいかって。だからAQUOS Kは良いんですよ。ガラケーの人が使ってくれるといいんですけど。
安全が当たり前のガラケーユーザーにはAQUOS Kが安心
――AQUOS Kの魅力を言い表すとどういう部分になるでしょうか?
深澤氏
Androidスマホが登場した初期の頃の端末で、ハードキーがあるケータイは、画面でタッチさせようとしていましたよね。だから「Androidがガラケーの形」をしていると感じたんですけど、AQUOS Kは「ガラケーの中にAndroid」がきたんだ、と割り切りが変わったんだと思うんですよね。AQUOS Kのほうが絶対に良いと思うんです。二つ折りケータイの良さは片手操作ができること。画面のタッチ操作があると、画面に手を届けるため、キーボードから持ち替えないといけない。その操作が面倒くさい。それならスマホでいいから、となる。
やっぱりハードキーがあるのは良いですよ。片手操作で済みますから。最近、電車で急ブレーキがあると倒れる人が増えている気がするんですけど、皆スマホを操作しているから吊り革を掴まっていないのでは? と思っているんです。もう危なくて。歩きスマホの問題どころじゃないですよ(笑)。そういう意味ではAQUOS Kは片手以外で使わないですから、ガラケーの良さを活かしつつ、Androidも使えますよって感じなので、“Android風味”くらいでちょうどいい。怖くないんです。ハードが洗練されている感じがする。
法林氏
深澤さんのおっしゃった通りで、フィーチャーフォンを使っていて取り残されている感のある人を救えるし、技術的な背景で言うと、既存のプラットフォームのフィーチャーフォンを、あとどれだけ作り続けられるのかという問題もある。だからAndroidの資産を活かしたケータイを作ってほしい、というのはある。今も日本では6000万人位のフィーチャーフォンユーザーがいて、そのなかにはスマホに変えたいんだけど躊躇している人、スマホなんていらないよ、という人もいるわけで。
深澤氏
日本のユーザーの半分はそうなんですよね。
法林氏
周りがスマホを持っている人ばかりになっているから、スマホばかりと思いがちだけど、全国の消費生活センターに呼ばれたりして地方で講演したりしていると、そのときの話で、「スマホの問い合わせを受けているけど窓口の人がフィーチャーフォンしか使っていない」とか。やはりフィーチャーフォンユーザーはかなりの数がいるんですよね。そこに応えられるAQUOS Kは良いですし、メーカーとしてリソースを共有できるのもメリット。フィーチャーフォンの枠を一歩広げる使い方ができるのかな、と。
深澤氏
そうですよね。
法林氏
無理をした使い方をしなくていいというか。これまでにもスライド式、二軸ヒンジのAndroidスマホがあったけども、目的が違っていて、あれらはフィーチャーフォンからAndroidへ移行してもらうのが目的。AQUOS Kは“フィーチャーフォンのまま”使ってもらう、新しい世代のフィーチャーフォンという意味だと思うので、そこが良いポイントですよね。使い方を説明しなくても、とりあえずAQUOS Kを勧めておけば手がかからない。
深澤氏
本当にそう思いますね。ケータイショップで横から聞いていても、年配の人はスマホの何が分からないのかすら分かっていない。だから店員さんも分からない。お互いに分かっていない。でも、ガラケーの形をしていれば、とりあえず何が分からないかは分かると思うんですよ。スマホは方法論とインターフェイスが何もかも変わってしまうので、若い人やガジェット好きじゃないと慣れることができない。私たちオタクは「わ、なにこれ?」と“苦しむ”のが楽しいけど(笑)。
だから逆に言えばAQUOS Kは私たちのような人間には楽しくないかもしれないけど、一般の方、苦しむのが嫌な方にはものすごく勧められる。こういうケータイが意外と無かった。フラッグシップや全部入りが良いというわけではないですよ。
法林氏
ないですね。
深澤氏
全部入りではない、ということが逆にオススメできるというか。私は全部入りが大好きなんだけど(笑)。だからといってどのケータイもそうする必要はない。
法林氏
的確に市場があるところを見てつくられた商品という印象がありますよね。もちろん見る人によって感じ方は違うんだけど。スマホ側の人にとってはAQUOS Kは「足りない」スマホと思われてしまう。
深澤氏
そうそう。
法林氏
それで勘違いを生んでしまう。AQUOS Kはフィーチャーフォン側の人が見ると、入っていきやすいケータイ。抵抗感無く使えるでしょうし、オススメできる。
深澤氏
アプリはスマートパスから落としてくればいいし。auがアプリをふるいにかけているから。それでいいんですよ。必要最低限というか。素人って本当に変なものダウンロードしてくるんですよ(笑)。
法林氏
ブラウザの画面に「金払え」っていう表示が貼り付いてしまうとか?
深澤氏
そうそう!(笑)
法林氏
ブラウザのキャッシュを削除すればいいだけなんだけどね。無理ですよね(笑)。
深澤氏
無理無理。泣きそうになる(笑)。
法林氏
そう考えると余計なことが起きないように、アプリを審査して、ちゃんとしたアプリだけを入れられるようにするというのは正しい。日本のフィーチャーフォン時代を振り返ってみると、ウイルス事件が一度も無いんですよね。その辺のことがあまり認識されていない。日本のフィーチャーフォンは常に安全だったけど、スマホになってリスクが増えている。そういう意味ではauが審査したものを使えるのは大事ですよね。普通の人にも使ってもらいたい仕組み。
深澤氏
スマホのトラブルに対して、ガラケーユーザーの一部はすごく怖いものと思っていますからね。なにもかも取られるんでしょ、と。中途半端に情報が入ってくるから。LINEを使うと何十万円も盗られるんでしょ、個人情報を全部盗られるんでしょ、とか。そういう恐怖が先行して、スマホを使わない理由が強くなっていく。だから年配の人がしょうもない都市伝説みたいなことを真面目に話し合っていたりするけど、触らないで怖がっている人が多いですからね。
法林氏
あとはハズレを買いたくないっていう意識があるんでしょうね。だから全部入りのフィーチャーフォン、スマホばかりになっていったという。お店でも「一番売れているのちょうだい」と言ったりね。スマホの場合はそれでもいいんだけど、フィーチャーフォンは状況が変わってきているので、AQUOS Kのようなものが世界を“ちょっと”広げるのかな、と。無理矢理一気に広がるのではなくてね。スマホの良いところだけをいただいている感があるので。その作り方は良いアプローチだと思いますし、フィーチャーフォンもスマホも、両方を知っているからこそのシャープならではなのかな、と思いますね。
深澤氏
私もそう思いますね。
没個性のスマホは面白くない! 皆が欲しくなくてもOK!
――そんなシャープはケータイ以外で「お茶プレッソ」なんてユニークな商品を出していますし、最近また面白くなってきたな、と。
深澤氏
あ、そう思いますね。私は昔ケータイの発表会が楽しみで、「2ちゃんねる」で流出した画像見たりとか(笑)。発表会の日にはケータイ Watchをよく見ていたりしたんですよ。そのとき「どういう変なことをしてくるのかな?」というのが楽しみだったんですよ。それが発表会の楽しみだったんですよ。だから最近、一部のキャリアが発表会をしないのは損だなって思うんですけど(笑)。
日本メーカーの“いろんなもの”を作るというのが面白かったんですよ。だから今回はau攻めてきたな、と思いますし。「みんなが欲しいものじゃない」というのが良いな、と。フィーチャーフォンの末期は、どのメーカーも皆が欲しいものを作っていたと思うんですけど、今は当時に戻りつつあって、皆が欲しいわけではないけど、パイの大きい市場なんだから、ある程度絞り込んだ市場を狙うことが必要になってくると思いますよ。
法林氏
ケータイは個人の持ち物だからね。僕らの若い頃は電話って世帯代表電話で、その家のものだったけど、今はLINE、Facebookでつながるもの。ということは個人のものだから、もっとキレイにセグメント分けされていいのかな、と思いますよ。人気のスマホでカバーが売れるというのは、そのスマホが没個性だからですよ。
深澤氏
うんうん、あとストラップが付けられないスマホがストレスなんですよ。日本人の“付けたい感”がガラケーはよくできていましたよね。スマホでもダサいカバーとか付けている人がたくさんいる(笑)。だけど、ああいいうことをしたいんですよ。
だからスマホが「美しいモノなんだから何も付けるな」という考えとは真逆。それって大きなお世話じゃないですか(笑)。誰かの美意識に合わせる必要はないんですよ。信じられないくらいダサいスマホカバーを付けている人がいると、私感動するもの。それでいいんですよ。私たちは八百万や付喪神じゃないですけど、スマホに対して人格を与えがちなところがある。ある種のペットのようなもので。皆で同じものを使って、選択肢が無くなっていくのは面白くないですから。
――お二人とも、今日はありがとうございました。