レビュー

Androidフィーチャーフォン「AQUOS K」レビュー

Androidフィーチャーフォン「AQUOS K」レビュー

普段使いにも、タブレットとの2台持ちにも理想的な“最も進んだ”ケータイ

新世代フィーチャーフォン「AQUOS K」

 ほとんど完全にスマートフォンへシフトしたと言える日本の携帯電話市場。それでも新しいフィーチャーフォンが時々発売されることもあり、かろうじて日本の“ガラケー”文化は保たれてきた。いまだに国内における携帯電話契約の約半数がフィーチャーフォンという調査もあって、ユーザーはいまだに多い。が、それにもかかわらず新機種の需要が多くないという、ちぐはぐな状況にある。

 近年発表されるフィーチャーフォンを見ると、それも仕方ないのかな、と感じなくもないだろう。通話用端末としての完成度は高いけれど、それ以外の機能面での目新しさに欠け、種類が圧倒的に少なく、魅力を感じにくくなっていた。そんな中、突如として現れた、Androidなのにスマートフォンじゃない、全く新しいタイプのフィーチャーフォン「AQUOS K SHF31」(以下、AQUOS K)は、いい意味で世間に衝撃を与えた。

 メーカーであるシャープが「新世代フィーチャーフォン」と銘打つこの「AQUOS K」。話題性は高いけれど、実際のところ、どこが新しく、どこがフィーチャーフォンと同じであり、そしてどこがスマートフォンと違うのか。機能と使い勝手における進化ポイントを中心に紹介していきたい。

電話機能はフィーチャーフォン+αの親切設計

 あらためて「AQUOS K」のスペックについて簡単に説明すると、OSにAndroid 4.4、チップセットにスマートフォンの多くで採用されているクアルコム製の「MSM8926」(クアッドコアCPU、1.2GHz駆動)、メモリ1GB、ストレージ8GB、960×540ドットの液晶ディスプレイを搭載する。

美しい液晶ディスプレイ

 ネットワーク面では、下り最大150Mbpsの4G LTE(VoLTEは非対応)、IEEE802.11b/g/nの無線LAN、Bluetooth 4.0などに対応し、こちらもスマートフォン並みの性能をもっている。従来のフィーチャーフォンではおなじみだったワンセグ、おサイフケータイももちろん利用可能だ。

 とはいえフィーチャーフォンとして最も気になるのは、基本となる通話機能だろう。AQUOS Kはテンキーをはじめとする各種ハードウェアキーを備え、左上にある電話帳ボタンから一発で電話帳を開いてダイヤル相手を選んだり、左右キーで発着信履歴を表示することもできる。このあたりは従来型のフィーチャーフォンと全く同じ挙動だ。

Wi-Fi、Bluetoothなどの無線機能が当たり前のように搭載
左右キーで発着信履歴がすぐに表示

 いきなりテンキーから番号を入力し始めてダイヤルできるのも同じ。ところがこの時、いきなりダイヤル画面に遷移するのではなく、入力した数字に合わせてダイヤルするのか、電卓を使うのか、はたまたタイマー設定するのか、といった選択肢から選ぶことができるようになっている。上下キーなどから選択肢を選ぶと、入力した数字をそのままダイヤル画面や電卓、タイマー設定に引き継いだ形で遷移できるのだ。

テンキーを押した後の画面
入力した数字を引き継いで電卓画面へ
タイマー設定の画面にも遷移できる

 ダイヤル前の選択肢が増えてはいるものの、通話するまでの操作のステップ数は従来と変わらない。そのまま電話番号を入力していって発話キーを押せばすぐにダイヤルが始まる。通話への最短経路は今まで通り残しながらも、テンキーを使う他の機能へのショートカットも兼ねさせる、ちょっとした新しさと気遣いが、AQUOS Kのまず1つ目の進化ポイントと言えるだろう。

日本語変換はますます賢く、Web閲覧はタッチ操作でも可能に

絵文字にもきちんと対応

 電話と同じくらい使うであろうメール機能も、従来型フィーチャーフォンとほとんど変わらない。電子メールでは絵文字、装飾絵文字、顔文字が普通に使えるし、SMSにもきちんと対応している。文字入力時のキー操作にも違和感はない。ここでの進化ポイントは、当たり前に使えるメール機能そのものより、日本語入力の変換時に加わった「外部変換」機能を挙げたい。

 プリインストールされている日本語変換アプリ「SH文字入力」では、Google IMEやSocial IMEという外部変換エンジンと連携して最新のワードや特殊なワードを正しく変換できるようにする機能を備えている。従来通り予測変換によってサクサク文章入力していけるが、最近話題になっている固有名詞など変換しにくいワードは、この外部変換を使うことで高確率で正確な変換結果を得ることができる。

「外部変換」を押すと……
このように最新のワードも正確に変換
Webサイトを表示してみたところ

 一方、Webブラウザについては、従来型フィーチャーフォンからその位置付けが大きく変わった。「AQUOS K」はauの携帯電話ではあるものの、KDDI公式のEZwebは利用できないため、スマートフォン向けサイトやパソコン向けサイトなど、いわゆるオープンサイトにアクセスするのが基本となるからだ。

 そこで気になるのがWebコンテンツの操作方法。従来型フィーチャーフォンではキャリア公式の、フィーチャーフォンに最適化されたコンテンツを利用していたことから、上下左右キーやテンキー(ショートカットキー)を用いて、必要十分な形で操作できたが、タッチパネル前提のスマートフォン向けサイトではそうはいかない。

AQUOS Kのキー周り

 AQUOS Kでは、従来型フィーチャーフォンと似たような操作で、上下左右キーを使ってページ内のリンクを1つずつフォーカスしていったり、スクロールしたりすることになるが、これだとリンクの数が多い場合、ページ下部にあるリンクをクリックするのに手間がかかりすぎてしまう。そのため、新たに搭載されたのが「タッチクルーザーEX」だ。

上下左右キーでリンクをたどっていくこともできるが……
タッチクルーザーEXでカーソル操作やスクロールも可能

 タッチクルーザーEXは、ハードウェアキーの上から軽く指でなぞるだけで画面に表示したカーソルを動かしたり、タップでクリックしたりといった、パソコンのタッチパッドのような操作が可能になる機能。1箇所を長く触れることでスクロールモードに切り替わり、縦長のページも高速スクロールできるようになるほか、ピンチイン・アウトの操作でページや画像の拡大・縮小も簡単に行える。

ピンチイン・アウトで拡大・縮小も容易だ

 どちらかというとパソコンのような操作でWebサイトを見ていくことになるわけで、スマートフォン向けサイトとの相性は完璧、とまでは言えないけれど、タッチパネルのスマートフォンと比べて使いにくい、と感じることもない。フツーのフィーチャーフォンのようなAQUOS Kで、オープンサイトをフツーに見ていけるというのは、やはりうれしい。

画質・機能が大幅に進化したカメラ

 シャープ端末といえば、最近はカメラ機能の進化が重要ポイントの1つとして挙げられる。AQUOS Kのカメラも、Androidと高性能チップセットを採用し、1300万画素もの高画素センサーを搭載していることから、従来型フィーチャーフォンとは比較にならないほど機能・性能が向上した。

最新スマホ並みの1300万画素カメラ

 明暗差の大きなシーンでも黒つぶれ・白飛びすることなく、写したい被写体をしっかり捉えられる「リアルタイムHDR」撮影や、夜景などの暗い風景でも明るく、鮮やかに映し出す「NightCatch」といった、最新スマートフォンにも搭載されている機能が利用できるのはうれしいところ。

HDR撮影した被写体(右)は全体が明るく映し出されている
暗く沈んだ路面や建物部分のディティールが
NightCatchで撮影するとくっきり

 さらに、よりバランス良くきれいに写真が撮れるようになる「フレーミングアドバイザー」機能も使用可能だ。ガイド線やその時の被写体の見え方に合わせたメッセージを表示して、より適切な構図での撮影をサポートしてくれるもので、上手に撮れない人でも見栄えの良い写真をどんどん撮れるようになる。

「フレーミングアドバイザー」により、被写体に合った最適な構図を提案してくれる

 さらに前述のタッチクルーザーEXも併用することで、ピント位置を自由に決められるのも面白い。狙っている被写体に確実にピントを合わせ、くっきり撮影できるのはもちろんのこと、手前のオブジェにピントを当てて奥の背景をぼかすようなテクニックにも応用できる。

 動画撮影についてもフルHD対応となり、従来型フィーチャーフォンでは単に「記録として残す」くらいの役割だったカメラが、「しっかり凝って撮る」ことができるようになったのは、特筆すべき進化ではないだろうか。

ピントを合わせたい箇所はタッチクルーザーEXで指定。意図的にぼかした写真も撮れる

快適操作の専用LINEアプリが利用可能に

LINEのアプリはメニューのアイコンからダウンロード

 次はコンテンツについて見てみよう。まず、今や多くのユーザーが利用しているメッセージアプリ「LINE」は、AQUOS K専用のアプリが用意された。従来型フィーチャーフォンでもLINEを使うことはできたが、Webベースのインターフェースだったことや、必ずしも全てにおいてフィーチャーフォンのキー操作に最適化されていたとは言いがたかったこともあり、スマートフォン版のような快適な使い勝手は実現できていなかった。

 対してAQUOS Kのために用意されたLINEは、専用設計ということで、キー操作でも戸惑うことなく利用できる。画面操作と文字入力が全てキーによる操作に統一され、スマートフォンのようにソフトウェアキーボードで画面が覆われることもないので、自然な使い勝手で友人らとのトークを楽しめるだろう。

メッセージのやりとりは快適で楽しい

 その他、よく使われると思われる地図・乗換案内については、「auナビウォーク」アプリにて利用可能。特に地図表示は端末の性能を活かして高速に表示・スクロールでき、目的地へのスムーズな移動をサポートしてくれる。

 YouTubeのような動画サイトにももちろんアクセスできる。4G LTE対応ということで再生にかかる待ち時間は少なく、画質にも不足はない。内蔵スピーカーからの音声が驚くほどクリアに聞こえ、フィーチャーフォンとは思えない臨場感が得られるのが印象的だ。

地図アプリの動作が高速
YouTubeの動画再生ももちろんOK

タブレット2台持ちに最適な機能搭載

タブレットとの2台持ちならぜひ欲しいテザリング機能を備える

 フィーチャーフォンを選ぶ人の中には、タブレットとの2台持ちにしているパターンも少なくないと思う。通話はフィーチャーフォンで、ネットやアプリはタブレットで、といった使い分けは合理的だけれど、その場合、フィーチャーフォンがテザリングに対応しているかどうかが利便性を大きく左右する。

 「AQUOS K」であれば、その点でも安心だ。無線LAN(Wi-Fi)経由の高速なWi-Fiテザリングと、省電力のBluetoothテザリングを備えており、通信速度を取るか、バッテリーのもちを重視するかで好きな方を選んで使える。4G LTEの高速通信を活かしたいなら、迷わずWi-Fiテザリングを使いたいところだ。

右下のボタンでテザリングのオン・オフができるが、端末を取り出すのが面倒な時もある

 しかし、タブレットからテザリングを使いたい時、いちいち「AQUOS K」を取り出してテザリングをオンに切り替えるのはちょっと手間だ。そんなことも想定されていたのか、「AQUOS K」と連携できる「PASSNOW」アプリが提供されており、タブレットと組み合わせて使用した時にさまざまな場面で便利に使いこなすことができる。

 準備は、タブレットに「PASSNOW」アプリをインストールして、「AQUOS K」側でも「PASSNOW」アプリを使い、Bluetoothでペアリングしておくだけ。あとはタブレットの「PASSNOW」アプリの画面からワンタッチで「AQUOS K」のWi-Fiテザリングをオンにできる。

タブレットとBluetoothでペアリングすれば準備完了
AQUOS KのWi-Fiテザリングをワンタッチで切り替え

 「PASSNOW」でできることは、それだけではない。「AQUOS K」で撮影した写真をタブレット側から一覧して、選択したものをタブレット側に転送できるほか、「AQUOS K」側からも同じように写真をタブレットに転送可能。「AQUOS K」で写真撮影後にプレビューしている時か、データフォルダで選択した写真を表示している時に、アスタリスクキーを1度押すだけで転送が始まるお手軽操作が特徴だ。

 さらに、AQUOS Kに着信した通知をタブレットに表示する機能もある。リラックスしたい自宅ではケータイを身に付けず、専らタブレットでネットやゲームを楽しんでいたりすると、電話着信に気付きにくいのが難点だった。PASSNOWを使ってAQUOS Kと連携していれば、そんな場面でも重要な通知にすばやく気付くことができ、必要に応じて即座に対応できるわけだ。

撮影写真や選択した写真をキー1つで即座にタブレットに転送できる
着信があるとタブレットの画面上でポップアップしてお知らせ

これぞフィーチャーフォンの進化した形!

 このように「AQUOS K」は、従来型のフィーチャーフォンの優れたところをくまなく引き継ぎ、不満に感じていたような部分はしっかり進化させて解消させつつ、スマートフォンで採用されている最新技術をうまく取り込んだ、まさしく新しい世代のフィーチャーフォンと言える。

 しかもタブレットとの2台持ちで便利に使える連携の仕組みが盛り込まれ、通話やメールのようなレガシーな機能に特化した“狭い”端末に止まることなく、トレンドにもしっかり合わせた“広い”用途の端末に進化することにも成功している。

 フィーチャーフォンを使うのはビジネスマンか、流行に乗りきれない頭の固い人、みたいな見方はもう通用しない。AQUOS Kなら、仕事用の通話端末としても、最新技術を凝縮したプライベート端末としても単体で使うことができ、タブレットとの組み合わせで従来以上の使いこなしが可能になる。大げさな言い方かもしれないが、フィーチャーフォンこそ最も進んだ端末である、という時代が到来しはじめているのかもしれない。

コンパクトな折りたたみ型携帯だが、機能と性能はまさしく新世代

日沼諭史