「L-06D JOJO」担当者インタビュー

荒木氏も監修、“ジョジョ”に満ちたスマホに迫るッ!!


 NTTドコモの「L-06D JOJO」は、連載25周年を迎えた人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボした、1万5000台限定販売のスマートフォンだ。現在、第8部を迎えた同作品は、ストーリー、キャラクター、セリフ、独特の擬音などで、多くの読者を魅了する。荒木氏が科学雑誌にイラストを寄稿したり、ファッション誌で特集されたりするなど、他の漫画作品とは一線を画す展開もまた注目されるところだ。

 多くの読者に愛され続ける“ジョジョ”の世界をモバイルに……そんなコンセプトで企画された「L-06D JOJO」について、今回、NTTドコモでコラボモデルのプロデュースを担当する岡野令氏、商品企画の許潤玉(ほう ゆの)氏、そしてまったく端末開発とは関わりのないクレジット事業部所属ながら、あまりに“ジョジョへの愛”が高じて開発に加わったという鹿島大悟氏の3人に話を聞いた。

 企画スタート時にアイデアがあったもののボツになった企画、あるいはこだわりぬいて搭載される変換辞書、荒木飛呂彦氏から寄せられたアドバイスなど、たっぷりと「L-06D JOJO」の開発秘話が披露されたので、あますところなく掲載したい。

 また、このインタビュー中には、5月の発表会では目にできなかったコンテンツの写真も掲載する。ただし、発売は8月とあって、インタビューが行われた6月上旬時点でも、まだ開発は完了していない。掲載する「L-06D JOJO」の画面はあくまで開発中のものであることをご了承いただきたい。

“ドコモのBOOKストアに向けた機種”として……

――さっそくですが、“ジョジョ”とのコラボの背景から教えてください。

岡野氏

岡野氏
 先日、“ヱヴァスマホ”の「SH-06D NERV」のインタビューで、『ドコモのコラボモデルは、スマートフォンの登場で、デザインに占めるディスプレイの割合、つまり画面の中のデザインとコンテンツの重要性が増した。そこでカリスマ的なパワーを持つコンテンツとのコラボを進める必要があると考えた』とお話しました。これが前提になるわけですが、その上で、ヱヴァンゲリヲンは映像の魅力を訴求し得るコンテンツとして、今回の「ジョジョの奇妙な冒険」は、電子書籍の魅力を伝えるためのコラボレーション、という位置づけになります。ドコモとしても自社で展開中の電子書籍サービス(BOOKストア)を訴求していく必要がありますから。

 「ジョジョの奇妙な冒険」は今年で連載25周年、昨年には荒木先生の執筆活動30周年ということで、集英社さんも大きくプロモーションしていましたし、記念の時期でもありました。
 一方、そもそもスマートフォンに強い興味を持つのは、主に20代~30代の男性ユーザーで、そうした方々に電子書籍を読んでもらうためには、その世代に響くマンガは何か探したわけです。その世代が子供の頃から親しみを覚えている作品には、「週刊少年ジャンプ」だけでもドラゴンボールやスラムダンクなどがありました。そうした作品群のなかで、携帯電話にしたときに面白いコンセプトで企画できる作品はなんだろう、世界観を最も表現しやすい作品はなんだろうと。そこに集英社さんから「ジョジョは(他作品と比べ)高額グッズが売れる」という話を聞いたのです。これはコアなファンが多いということですよね。世界観を携帯電話に再現できるカリスマコンテンツ、そしてコアなファンが確立されているということで「ジョジョの奇妙の冒険」とコラボすることにしました。

 ……と言って会社を説得しました(笑)。一番はやっぱり自分自身が子供の頃からのファンだから、というのが大きくて、いつか“ジョジョケータイを作ってやろう”と虎視眈々と狙っていたのです。

――個人的な思い入れも強いのですね。“会社を説得するため”とした電子書籍まわりの話ですが、新規の作品ではなく、一度読んだことのある作品による訴求力はどの程度あると考えたのでしょうか。

岡野氏
 確かに「ワンピース」のように、今、高い人気を誇っている作品もあれば、伝説的な往年の名作、といったものもあります。そのなかで子供の頃に親しんだ作品については、あらためて買い直すと自宅の場所をとるし……というところで電子書籍でもう一度読むというメリットがあると思います。かつて読んだ作品について、覚えている部分もあれば、その後の展開は忘れているところもある。そうした場面を電子書籍なら手軽にピックアップしながら読み返すこともできますよね。ただ電子化するだけでは面白くないので、プラスアルファとして、今回は「L-06D JOJO」に収録する書籍(1巻~12巻)をフルカラーにしており、記憶に残っていた場面をもう一度読み返すときにも、新たな発見をもって楽しめるようにしています。

 もっと若い世代、つまり最初から電子書籍を楽しむ世代も出てくるでしょうから、それはそれで別の取り組みで狙っていくことを考えています。

フルカラー化された1~12巻を収録

独特の擬音、着信音にはしなかった

――そうした狙いで企画がスタートした、と。

これが企画書

岡野氏
 ちょうど企画書を提出したのが昨年の8月後半くらい。初代の「ヱヴァケータイ」は2年以上かかって開発しましたが、それと比べて、今回はずいぶん短期間のチャレンジでした。今日は企画書も持ってきたんですよ。「L-06D JOJO」の発売は8月を予定していますから、ちょうど1年ほどかけて発売にこぎつけることになります。企画書の冒頭では、ジョジョを知らない上層部に向けて、25年間連載していることと発行部数、文化庁が2006年に発表した「メディア芸術100選」で第2位になったこと、ルーブル美術館との取り組みなどに触れています。

 そして最初の段階では、外装についてスタンド別のデザインを用意してリアカバーの着せ替えを考えていたのです。しかしベースモデルとした「L-06D」がカバーを外せない構造となったことで、これは断念しました。「L-06D」がベースモデルになったのは、やはり4:3という比率の5インチディスプレイを採用し、電子書籍に向いている機種だから、という点ですね。

許氏
 ジョジョの絵が好き、という方も多いでしょうから、より絵が映えるディスプレイの機種にした、というところもあります。

――なるほど。

岡野氏
 コンテンツについては企画当初から実際に採用しているものが少なくありません。1つは「メディアプレーヤー」アプリです。楽曲や映像を再生しつつ、一時停止すると、スタンドの「ザ・ワールド」(劇中のキャラクター、DIOの特殊能力で時間を止める力がある)、早送りで「メイド・イン・ヘヴン」(同じく劇中のキャラクター、エンリコ・プッチの特殊能力、時間を加速する力がある)が登場するというものですね。それから、設定メニューで、ユーザーが何らかの設定をするとき「YES/NO」の代わりに「やれやれだぜ」「だが断る」といった名セリフを入れています。

一時停止で「ザ・ワールド」早送りすると……

 ジョジョと言えば、独特の擬音表現が魅力ですが、結果的にこれを着信メロディにはしませんでした。企画当初はアイデアとしてあり、集英社さんとも検討しましたが、実際の音にすると、読者がそれぞれ脳内で再生していた音のイメージと必ずしも一致しませんから。

 アプリについても、当初のアイデアが実装されています。たとえば杜王町(ジョジョの第4部などで舞台になった街)の地図です。最初はグーグルマップで、と考えましたが、最終的にイラストベースのライブ壁紙となり、劇中の事件が発生した地点などがわかるようにしています。iPhone向けにはジョジョを題材にした花札アプリもありますが、同じものは面白くありませんので、「L-06D JOJO」には載せていません。また、マチキャラに“イギー”(第3部に登場するキャラクター)を登場させたり、気象情報ウィジェットのデザインを“ウェザー・リポート”(周囲の天候を操るスタンド)にしています。

 荒木先生からNGをいただいたのは、「ジョジョ立ち」のコンテンツです。ご本人としては、非常に嬉しいことらしいのですが、ファンが独自にやっていることを著者本人監修のオフィシャルなコンテンツにするわけにはいかない、ということですね。

 電子書籍は当初、全巻収録しようと考えたのですが、容量が大きすぎて、許にダメと言われました(笑)。許は今回、暴走する私と鹿島をうまく止める役割を果たしてくれましたね。

許氏
 なんだか私、悪者みたいですね。でも本当はジョジョ、大好きなんですよ(笑)。

岡野氏
 もちろんビジネスとしても、BOOKストアの利用促進、電子書籍購入へのリンクなどを考えると全巻収録は課題がある。その一方でファンには喜んでいただけるだけの巻数にしたい、ということで12巻分の収録になりました。

 スタンドなどを合成できるARカメラアプリも用意しました。これで、当初企画した内容の6割~7割は実現できました。それから“ジョジョ語”の変換辞書などを鹿島がアイデアを出してくれました。ある程度、骨格は決まりつつ、物理的に無理なものや荒木先生や集英社さんからNGをいただいたものを除き、ほぼ実現させました。

「スマホ型のスタンドが登場するスピンオフ、検討した」

――同時期に発表されたコラボモデルの「SH-06D NERV」は、ヱヴァンゲリヲンの世界の中に存在するアイテム、として開発されていますが、こちらはジョジョの世界の要素をいろいろとスマホに移し込んだ形です。たとえば、このスマホを劇中に登場させる、といったアイデアは出てくるだろうと思ったのですが、実際どうだったのでしょうか。

岡野氏は「エアロスミス」題材の迷彩柄、鹿島氏は胸に「セックスピストルズ」のワンポイント(襟の裏には全員揃っているとか)と、それぞれスタンドをモチーフにした服

岡野氏
 そのあたりはいろいろと話し合いました。当初、我々が出したアイデアには、この端末がスタンドになって、その能力を持つキャラクターが登場するスピンオフができないか、というものもありました。

 スピンオフ作品の書き下ろしとなると、もちろん荒木先生の稼働時間も大変なものがあります。また、「ヱヴァンゲリヲン」はその世界に入りこんで楽しむファンが多い一方で、「ジョジョ」のファンは客観的に物語として読んでいるところも大きい。

 それから、たとえば私や鹿島は、今日、ジョジョがテーマの服を着ていますが、作中でキャラクターが着ている服ではありません。こうしたグッズはキャラクターグッズではあるものの、作品自体にもともとスタイリッシュな世界観があるからこそ、デザインとして昇華されています。荒木先生がファッションやアートの世界などでも高い評価を受けている理由の1つだと思っていて、その世界観を「L-06D JOJO」でも再現しようと思ったのです。

鹿島氏
 ちなみに服は、このインタビューにあわせて特別に着たわけではなくて、週の半分くらいは、こうした服装です。

“ジョジョ百人一首”を実施する逸材がドコモにいた

岡野氏
 クレジット関連の部署にいる鹿島がなぜ「JOJO」の開発に加わったか、これはこのインタビューで最も重要な部分でしょう。私はコラボモデルのプロデュースをする立場で、許のいる商品企画部門と検討を重ねていくのですが、そこへどこかからか情報を聞きつけた鹿島から、いかに自分がジョジョファンかという猛烈なアピールがあり、「ぜひこの企画に参加したい。この企画のためにドコモへ入社した」と連絡が来たんですね。突然のことでしたが、「この人、覚悟してきてる人だな」と(笑)。

――ちょっとそれはびっくりしますね。

岡野氏
 で、その日、たまたま、コンビニなどでジョジョを題材にしたクジをやっていたので、チャレンジしようと会社最寄りの店を訪れると、そこで鹿島が全部買い占めていたのです。

許氏
 一回数百円のクジを数十枚、DCMXで買ってるわけですよ。

鹿島氏
 だいたい、そういうときは持って帰れないので、タクシーに乗るんですけど。

――そういったクジの景品、その場でもらえますよね。

鹿島氏
 こないだ、店長さんが親切に車で送っていただきました。本当は狙ったものだけ欲しいのがやまやまなんですけれど。最後まで買うと店頭POPをいただけることもありますし……。

出会うべくして出会った、そんなエピソードを披露してくれた岡野氏(左)と鹿島氏(右)

岡野氏
 最初の出会いからね、こうですから。

鹿島氏
 スタンド使いはひかれあうというか。

――許さんは、鹿島さんのこのエピソードを知ったときはどう思われたんですか。

許氏
 もともと同期なので、そのあたりは知っていたんです。

――ああ、なるほど。同期の方々には、鹿島さんの嗜好が知られていると……。

鹿島氏
 たとえばドコモの社員録で「ジョジョ」と検索すると、私のデータが出ますし、部署の垣根を超えて、ジョジョの“百人一首大会”を定期的に開催していたんですよ。ジョジョグッズを自腹で用意してプレゼントもしたりして。

――えっ、ちょっと、それ、どういうことですか(笑)。百人一首って、名セリフでですか?

鹿島氏
 そうです。うるさくなるので、呑み屋さんのお部屋を貸し切って実施するんですが、今回搭載する変換辞書にも、そのあたりの影響は色濃く出ているかなと思います。

岡野氏
 いろいろとおかしなエピソードを持ってるんですけど、これは本物だということで、途中から参加してもらうことになって、やりたいことも全部出してもらいました。間違いなく「本物のファンが作ったケータイ」です。だからこそ、かゆいところに手が届くことも実現しているつもりです。

 変換辞書も、今となってはジョジョの名言集の書籍が世に出ていますが、当時はなかったので、鹿島が作品をイチから読みなおしてセリフを抜き出していく、という作業を進めたわけです。そういう叩き台のデータをプライベートの時間を惜しみなく使って、作業してくれました。

――期間限定で他部署で働く、というのではなく、本職をしつつ「L-06D JOJO」の開発にも携わったのですか。

鹿島氏
 やることはやりつつ、ですね。じゃないと許されないです。

岡野氏
 でも許は、「○○日までに、これを出してください」と冷静にリクエストしたり。

――厳しいですね。

許氏
 そこは逆に鹿島から「週末、宿題ないの?」って聞かれるんですよ。

鹿島氏
 急に言われるとアイデアを出せませんし、出すからには吟味したかったのです。変換辞書を作る上でも、すごく工夫したというか、気にしていたのは、「独りよがりにならないこと」だったのです。

ファンが納得できる「変換機能」に

――鹿島さんが好むキャラクターだけにならないように、ということですね。

鹿島氏
 そうなんです。第8部まで展開しているシリーズですが、人によって好みが違いますし、ソーシャルメディア上でも人気のキャラクターなどをリサーチしました。その上で、どういうワードを使うか、決めていったのです。やはりコミュニケーションツールとしての機能ですから、やり取りを円滑にする言葉を選んでいるのです。社内システムでの会議招集もジョジョのセリフで出席の可否を返信してます。「ッ」と入力するの、結構大変ですし、変換辞書があるとやっぱり便利ですね。

岡野氏
 普段のメールで、「ジョジョ語」で言いたいことって、結構あるんですよね。でもスマートフォンで考えながら、ひとつひとつ変換して入力するのって面倒ですから、変換辞書があれば日常的に使えます。予測変換やつながり予測もできるから、本当に便利ですよ。

変換辞書の開発には、さまざまな苦労があったそう

――そこを便利に感じる、というのも面白いですね。

鹿島氏
 インパクトは確実にありますから、所属部署の上司も真似して「○○を出してくださいッ!」という形で、ジョジョ風にするようになっていましたよ。このほうが伝わると思うんでしょうね。

岡野氏
 プレゼン資料の文言もジョジョ語にするとインパクトあっていいですよ。言葉として強いところがあるので、普段のコミュニケーションに入れていこう、ということで変換辞書は普通に面白いぞと。

――記事で掲載すると、テキスト表示の部分は、見栄えがイマイチというか、写真で見るとちょっと地味な印象もあったりするところですが、結構企画の中でも大きいですね。

岡野氏
 ウェイトは大きいですよ。

鹿島氏
 荒木先生も名言集で仰ってますが、ジョジョのセリフにはリズム感があるんです。変換辞書でボタンを押していくときに、どこで区切っていくと良いのか、すごく考えましたね。セリフそのままを変換候補で表示すると、一文がとても長いので、他の変換候補が表示できなくなるのです。だからどこかで区切らなきゃいけない、でもどこで区切ればテンポ良く変換できるのか、悩みました。

岡野氏
 つながり、予測を考えるうえでどう区切るのかというのは、とても大変でした。僕らも携帯電話の企画は経験がありますが、辞書の企画はないですから、どうすればいいんだと。

鹿島氏
 固有名詞は簡単なんですが、セリフを前に考えていると、「ここで区切ると、つながり予測で出る次の言葉がこうなるな……」というのがわかってきたのです。たとえば、ジョジョの名セリフには「だが断る」(第4部に登場)というのがあるのですが、第7部には「だがメス猫がッ!」とセリフがある。「だ」と入力したときの予測変換は「だが」で区切っておけば、次のつながり予測の候補で「断る」と「メス猫がッ!」が表示できて、バリエーションが広がるぞと気付いたわけです。

――そこに気付くのも大変ですよね。

鹿島氏
 相当読んでますからね。

岡野氏
 変換辞書の半分以上を(鹿島氏発案のものが)占めていると言っても過言ではないかもしれません。

「オラオラオラオラッ!」だけのアプリも考えた

――普段から商品企画を担当している許さんとしては、バランスの取り方に苦労されたのでは?

許氏
 今回一番大変だったのは、絞り込むことです。ブレストしていると、アイデアはどんどん出てくるのです。でもその一方で開発に何年もかけるわけにもいきませんから。

岡野氏
 そういう意味ではすごく許には助けられています。私や鹿島のようなファンからすると、やりたいことが山積みになって全部やりたくなる。でも今回は開発期間が1年程度で、優先度を付けていかなければならないのです。そこで許は、僕らが欲しいと思うものを残しつつ、実現性を鑑みつつ、さばいていってくれましたね。

――ファンが欲しがる機能を残しつつ、というのは、どういった基準で判断していったのでしょうか。

次々とわき出るアイデアから絞り込んでいくのが大変だった、と語る許氏(左)。岡野氏は、そうした許氏に助けられたという

許氏
 そこの考え方は、どれだけインパクトがあっても一度使って終わるアプリは、入れても意味がないよね、ということでした。

岡野氏
 「オラオラ」(第3部のキャラクターが戦闘時に発したセリフ)とかそうだよね。

許氏
 そうですね。
岡野氏
 最初の企画時に、ボタンを押すと「オラオラオラオラッ」って言うだけのアプリを考えたのですが、「一回しか使わないよね」と指摘されて、そうだね、とボツになりました(笑)。

許氏
 セリフを入力するタイピングアプリというアイデアもあったのですが、これはずっとタイピングばかりしていると、いざ本当のメールを作成しようとしたときに、変換候補が全部ジョジョ語になってしまって、メールが打てない、ということでボツにしました。ですから、普段、よく使っていただけるアクセサリー的なアプリで、なおかつ、何度も楽しめるアプリを選んでいきました。

鹿島氏
 ウィジェットもそうですね。便利ツールとキャラクターと組み合わせていったと。

――すると、「一回しか使わないから」と却下されたアイデアを練り直して実装にこぎつけた、というものはあるのでしょうか。

岡野氏
 いえ、許の指摘は結構的を射ていました。あんまりそこは揉めることはなかったです。指摘を受けると、素直に「スイませェん」となりましたし(笑)。

発表後に追加の可能性も……

――当初のアイデアにはなかったけれど、あとから追加した、というものはどういったものでしょうか。

鹿島氏
 このキャラクターのものが欲しいよね、といった形でコンテンツ系は結構あります。また5月16日の発表後も、お客様の声をウォッチして、出てくるニーズもチェックしています。

岡野氏
 まだぜんぜんできあがってませんから、発売に間に合うものはプリインストールしていきますし、発売後に配信するかもしれません。こうしたコラボモデルをあえて早めに発表しているのは、ファンからの声を拾いたいからなのです。それはすごく大事なことで、声を拾わなければ早く発表した意味がない。大いに盛り上がっていただければ、今からでもネット上でつぶやいていただければ、と思います。

鹿島氏
 実は、5月の発表時点では、リリースでは紹介しつつ、発表会場で披露できたコンテンツは、収録予定の半分もありませんでした。今日(取材は6月上旬に行った)の段階で披露できるコンテンツは少し増えています。(画面を見せながら)これはカメラアプリで、石仮面をかぶせるのですが、被写体が誰かわからないくらいです。

ARカメラアプリ。もはや被写体がわからない

――これはソーシャルにも投稿できるのですか?

鹿島氏
 はい、そこは大丈夫です。むしろ積極的にやっていただきたいくらいです。

許氏
 それから、これが「F-MEGA」です。キャラクターもマシンも選べるようになります。

鹿島氏
 第三部に登場するレースゲームですね。

「F-MEGA」

隠しコマンド!?

岡野氏
 天気予報ウィジェットや「F-MEGA」といった主要コンテンツは開示していますが、たとえば電話の発信画面など細かい点まで手を入れていますから。隠しコマンドもあるのです。たまたま、何か操作したときに出てくるとか……。発表やプロモーションでは全て言い尽くせないので、ユーザーに探していただければと思います。

鹿島氏
 普通に使っているとなかなか出会えず、探していただいて楽しめるようにしています。天気予報ウィジェットは、あるロジックを満たすとスキンが変わるのです。たとえば、カエルが降ってくるとか、カタツムリが現れるとか、虹が出るとか、特殊な状態になるのです。

岡野氏
 作品の中で発生した特殊な天気の状況が、ある条件になると、ウィジェットでも発生する、という形ですね。原作に忠実に構成していますから、たとえば作品で、なんというか「人の目を避けて隠れて暮らしている子供」がいるのですが、その部屋がどこかに出てくるとか。

許氏
 あ、そこまで言っちゃうんですか!

岡野氏
 いや、これはなかなか見つけられないですから(笑)。普通は操作しないところにあります。こうやって、ずっと使っていただけることで楽しめる要素を入れています。たとえば鹿島も、社員とはいえ優遇はないですから、気合を入れて並ばないと購入できるかどうかわからないのですが、もし購入できたら10年使うでしょうし。「こんなところまで!」という驚きをたくさん隠してあるので面白がっていただけるのではないかなと思います。

鹿島氏
 カスタマイズ要素にも凝っていまして、ホームアプリのバリエーションは6パターン用意しています。アイコンもオリジナルデザインの縁取りをしたり、さらに好きなイラストへのカスタマイズ機能もあったりします。

――ホームアプリのデザインパターンは、第1部、第4部、といった分け方でしょうか。

岡野氏
 そこはテーマごとですね。迷ったところなのですが、第1部と第2部は世界観やテーマが共通しているのでまとめていますし、杜王町という街は第4部と第8部に登場しているのでまとめています。

鹿島氏
 第1部、第2部がテーマのパターンに変更すると、アプリ一覧のアイコンも遺跡風になりますし、第5部はイタリアが舞台、主人公も“黄金”のイメージということで、金色のアクセサリーっぽいアイコンにしています。

荒木飛呂彦先生には毎週報告

――こうした機能は、荒木先生も監修しているのですよね。

岡野氏
 集英社さんと荒木先生の定例ミーティングにおいて、毎週報告し、監修コメントをいただいています。荒木先生の許可を得ていないものは一切ありません。

――どういった反応が返ってくるのでしょう。

岡野氏
 大変気に行っていただいています。デジタルコンテンツならではの面白さにも興味を持っていただいています。たとえばライブ壁紙の“ジョルノ”のイラストに指が触れると花びらが舞うとか、第2部がテーマのイラストでは作中の“波紋”にあわせて、触れると水面の波紋が広がります。杜王町テーマのライブ壁紙も古地図のようなイラストで、事件が起きた場所がわかるようになっています。こうやって地図で見ると、事件が起きたところと、吉良(吉影、登場キャラの1人)の家が近いんだなとかわかります。

触れると花びらが舞う杜王町のライブ壁紙

鹿島氏
 杜王町の地図は、荒木先生がもともと書籍で描いたものをベースに補完したものですが、地図を意識して執筆されているのかなと思います。

岡野氏
 DIOのライブ壁紙は触れるとナイフが飛び出てきて時も止められますし、スティール・ボール・ランですと鉄球を武器にしているキャラクターの壁紙で、鉄球が飛び交います。

――こうした収録コンテンツで、特に思い入れが深いものはありますか?

鹿島氏
 それはもう全部です。一番好きなキャラクターやシーンを尋ねられると答えるのが難しく、常に「一番は今連載されているところ」なんですよね。作品が掲載される雑誌(月刊誌)を読まなければ会社に来ないですよ。読まずに出社しても気が気じゃなくて、仕事が手につきませんよ(笑)。

――そうした中で、開発時には、どういった考え方で“ジョジョ”の面白い部分を落とし込んでいったのでしょうか。

鹿島氏
 キャラクターごとに良い見せ方があると思います。ジョジョと言えば、戦闘シーンを思い浮かべることが多いでしょうが、商品としては、そういった場面よりもスタイリッシュ性とか、ファッション性を重視します。戦っているというよりもポージングをメインにしています。美しさというか、戦いとは別の面を見せたいなと思っていました。

岡野氏
 荒木先生からも、最初から「スタイリッシュなものを作ってほしい」という要望をいただいていました。お洒落であることが重要で、この作品でも心掛けられていることということで、強い要望でした。

――子供の頃に読んだジョジョは、第3部くらいまででして、かなり刺激的な描画のほうが印象的でした。

鹿島氏
 確かに前半はそういうイメージですが、第4部以降になってくるとキャラクターもマッチョではなくて、細身になってきています。時代とともに変遷していて、グッチとのコラボなどもあって、第6部の登場人物がファッションデザイナーを題材にした名前になっていたりしますから、荒木先生の関心が徐々に変化してきているんだなと思います。

岡野氏
 刺激の強い言葉も実は変換辞書に入れたりしているのです。「さすがにまずい」というところと、「これは入れないとね」という部分はずいぶん議論しました。

背面のイラストを決めたのは……

――外装についてですが、このイラスト(第6部の主人公、徐倫)以外のバリエーションを検討したことはあるのでしょうか。

岡野氏
 リアカバーの着せ替えができない時点で、そうしたバリエーションについては考えていません。なぜ徐倫になったのか、という点については、「知りません」としか言いようがないのです。これは荒木先生ご本人に判断していただいたことだからです。

背面は空条徐倫のイラスト。これは荒木氏が決めたもの

――リアカバーのデザインについて荒木先生に判断を預けたと。

岡野氏
 我々からはあえて「待受画面に表示する美麗なイラスト1点、背面にエッチングで削り込んだような、サイン的なイラストを1点」とだけお願いしたのです。あとはお任せしますと。そして、このイラストが出てきたときは、3人とも、「おおお!?」と声をあげました(笑)。さすが、荒木先生、そこにシビれる! あこがれるゥ!! ということで、予想を良い意味で裏切ってくれるぞ、と。

 ですから、なぜこのイラストになったのか、理由は荒木先生しか知りません。でも勝手に想像はしています。というのも、待受画像のキャラクターと背面のキャラクターは、ストーリー上、親子なんです。直接うかがうのではなく、想像をふくらませるのがファンとして楽しい。表と裏で、そうしたテーマを持たせたのかなと。でも真実は荒木先生のみぞ知ることです。

書き下ろしの待受イラストは徐倫の父、空条承太郎だ

――では、荒木先生に一任する、という形での依頼になったのはなぜなのでしょう。

岡野氏
 リアカバーの着せ替えができなくなった時点で、僕らが決めたことをファンが納得するとは思えなかったからです。たとえば鹿島が決めていたら怒りますよ(笑)。でも荒木先生が決めたことなら、僕らは誰でも納得します。「納得」は全てに優先します。そういうことです。

鹿島氏
 実際選べないですよ。好きなキャラクターは1人、2人だけじゃないですから。

岡野氏
 ドコモが決めたんじゃない、荒木先生が決めた、そこに価値があると思っていただければと思います。

――子供の頃に読んでいた程度ですが、荒木先生は、テレビなどに頻繁に露出されることもなく、読者との距離感というものが、そこまで密着しているわけではないという印象を持っています。しかし、そうしたエピソードをうかがうと「L-06D JOJO」で荒木先生の存在を身近に感じられますね。

岡野氏
 漫画作品は、荒木先生を間近に感じる、つまりコミュニケーションできるツールだと思いますが、今回開発した「L-06D JOJO」もそうした存在になりたかった。荒木先生とファン、ファンとファンとのコミュニケーションツールですね。背面のイラストがなぜ徐倫なのか。たとえばユーザーの中には「なぜドコモが知らないんだ?」と疑問に思われるかもしれませんが、直接、荒木先生にうかがいたいわけではなく、想像して考えることが荒木先生とコミュニケーションすることになるのだと思います。

――なるほど。今日はありがとうございました。8月の発売、楽しみにしています。




(関口 聖)

2012/6/13 06:00