「URBANO PROGRESSO」開発者インタビュー

従来のURBANOユーザーが違和感なく使えるスマートフォン


 5月30日に発売された「URBANO PROGRESSO」は、URBANOシリーズとしては初のAndroidスマートフォンとなる京セラ製端末。防水・防塵、ワンセグ、おサイフケータイなどの機能を搭載した“全部入り”で、従来の受話口をなくし、ディスプレイパネルの振動などで音を発生させる新開発の「スマートソニックレシーバー」を採用した。

 今回は、この「URBANO PROGRESSO」の開発に携わった京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 国内第1マーケティング部 商品企画1課 大西克明氏と、デザインセンター デザイン3課 照山康介氏、そして国内第2技術部 第3技術部 第1設計課 水田聡氏にお話を伺った。

“都会的な大人の世界観”をテーマに、使いやすさにも注力

大西克明氏

――まず初めに「URBANO PROGRESSO」の特長と開発コンセプトを教えてください。

大西氏
 これまでのURBANOシリーズ自体が、“上質感”と“使いやすさ”を追求してきたモデルということもあって、この「URBANO PROGRESSO」も、URBANOシリーズのコンセプトを受け継いで、“上質感のあるデザイン”と“使いやすさ”の2点に注力して開発を進めてきました。30~50代のビジネスマンをメインターゲットとしていますが、“使いやすさ”という面では幅広い年代の方に使っていただけるものと思っています。

 もう1つの大きな特長は、KDDI様協力のもと開発した「スマートソニックレシーバー」という新しいデバイスによって、“使いやすさ”につながる“聞きやすさ”を実現しているところです。

――デザインにこだわったとのことですが、どのあたりがポイントでしょうか。

照山康介氏

照山氏
 一番のポイントは、端末全体の質感です。“都会的な大人の世界観”をベースに、端末全体にさまざまな質感をちりばめました。

 たとえば、ボディカラーがオレンジとシルバーのタイプでは、端末の外周にある金属調のフレームに特殊な蒸着処理を施すことで、アルマイトのような落ち着いた上質な雰囲気が出るようにしています。ディスプレイ下部のハードウェアキーは、印字を文字表示にすることで分かりやすくするなど、ユーザビリティーに配慮しているのも特長です。

 さらにオレンジとシルバーの背面は、凹凸感のある塗装を施し、マット風に仕上げています。アクリルビーズの粒子にパールとメタリックを入れることで、手触りの良さと高級感のある見た目を両立させました。上質なデザインで、指紋が目立ちにくい表面処理になっています。ピンクは女性向けということで、色の華やかさを訴求するために光沢のある塗装にしました。

大西氏
 URBANOシリーズは以前から持ちやすさも大事にしてきているので、今回の「URBANO PROGRESSO」でも、角に丸みをつけて持ちやすくするのと、持ったときの“肌触り感”というのも重視しています。

背面3色展開となる「URBANO PROGRESSO」。ハードウェアキーの印字にも工夫が施されている

“耳当たり感”に優れた「スマートソニックレシーバー」

水田聡氏

――もう1つのポイントである「スマートソニックレシーバー」について詳しく教えていただけますか。

水田氏
 「スマートソニックレシーバー」は、京セラがセラミックの技術をベースに独自開発した圧電素子を端末に内蔵して、ディスプレイパネルで音と振動を発生させる仕組みです。この振動と音の両方でしっかりとユーザーの耳に音を伝えるというのが特長です。従来の受話口のある仕組みよりもかなり広い範囲で音を聞けるので、耳に端末を当てたときにすぐ聞ける“耳当たり感”に優れております。

 これまでのスマートフォンだと、パッと耳に当てたときに、少しずらしながらよく聞こえる位置に移動する、というワンクッションがありましたが、「スマートソニックレシーバー」では、耳に当てたらすぐに聞けるのが一番のメリットですね。

――フィーチャーフォンでは違和感なく聞こえたのに、スマートフォンだとなぜか聞こえる範囲が狭い、と感じることがよくありますね。

水田氏
 個人的な考えではありますが、フィーチャーフォンは端末自体が細く、もともと耳にフィットしやすい形状というのが挙げられます。ところが、スマートフォンになって幅が広く、画面も大きくなり、受話口の位置がどんどん上の方へ寄っていきました。それで“耳当たり感”が劣ることになってしまったのではないかと考えます。

――ディスプレイパネルなどが振動して音が発生するということで、周囲への音漏れがないか気になりますが。

水田氏
 弊社で調査したところでは、前モデルのDIGNO ISW11Kと比較しても、音漏れについては大きな差はありませんでしたので、気にせず安心して使っていただけると思います。音圧、音質についても従来と変わりのないようにチューニングするのが一番苦労した点でもあります。

――「スマートソニックレシーバー」を他のスマートフォンに搭載する予定はありますか?

水田氏
 今回は「URBANO PROGRESSO」と「簡単ケータイK012」で採用することになりましたが、“聞きやすさ”というのは重要なポイントだと思いますので、今後も新しい機種への展開は検討していきたいですね。

大西氏
 フィーチャーフォンからスマートフォンに移り変わって多くの機能が盛り込まれたとはいえ、電話というのは基本的な機能ですので、その電話機能の進化の1つとして「スマートソニックレシーバー」という形があるのかな、と。あらゆるユーザー層に対して普遍的な価値として訴求していきたいと考えています。

従来のURBANOユーザーが違和感なく使い始められる

ロック画面は高級感のあるデザインの大きな時計と、波のように動くライブ壁紙で構成される

――ソフトウェア部分についてはいかがでしょうか。

大西氏
 URBANOシリーズとしては初のスマートフォンということもありまして、従来のURBANOユーザーの方やフィーチャーフォンのユーザーの方が「URBANO PROGRESSO」に買い換えたときに、違和感なく使い始められるようにする機能をいくつか用意しています。

 まず、端末本体のデザインだけでなく、画面内のグラフィックに関しても、URBANOシリーズの“上質感”を踏襲したものになっています。たとえばロック画面では、大きな文字盤の時計を配置して、時計の針が光る描写や、その背景に表示するライブ壁紙の波の揺らぎで情緒的な雰囲気を演出していたりします。Android OSの1機能である各種機能のオン・オフ切り替えアイコンも、通常は差し色が青であるところを、端末のコンセプトに合わせてオレンジにするといった細かいカラーリングの統一まで行っています。

 電話やメール、SMSの着信といった情報もロック画面内にアイコン表示するようになっているのもポイントです。これまでのフィーチャーフォンのURBANOシリーズでは、サブディスプレイ内でさまざまな新着情報を確認できるようになっていて、ユーザーの方にも好評でした。それに代わるお知らせ方法として、時刻や電話などの着信の有無をロック画面ですばやく確認できるようにしています。

よく使われる機能を1画面にまとめた“シンプルメニュー”

――新たに“シンプルメニュー”という機能が用意されていますが、どういったものですか。

大西氏
 通常はホーム画面からすぐにドロワーを表示するようになっていますが、多くのプリインストールアプリがあることや、端末を使い続けているうちにどんどんアプリが増えてしまうこともあって、目的のアプリを探しにくくなっていました。

 “シンプルメニュー”では、フィーチャーフォンのように、赤外線、電話帳、カメラ、アラームなど、本当に必要な機能を1つの画面内で見せる形になっています。ホーム画面でランチャーボタンを押すと、この“シンプルメニュー”が表示されるようになっていますが、この画面では左右へのフリックなども効かず、あえて固定画面にすることによって使いやすさの向上を図っています。もちろん設定変更で通常のドロワーをすぐに表示することも可能です。

独自のアルゴリズムで、歩行時、自転車乗車時、自動車・電車移動時の3種類を自動判別して記録する

――歩数計機能も搭載していますね。

大西氏
 「デイリーステップ」という名前なのですが、通常の歩数計と大きく違うところとしては、歩行時、自転車乗車時、自動車・電車移動時の3つの状態を自動で判定する“乗り物判別”という機能がある点です。端末を持って歩いたり、自転車に乗ったり、電車に乗ったりするだけで、状態を自動で判別して円形の時間割グラフなどでそれぞれの継続時間を色分け表示します。

 これは、端末の加速度センサーを用いて、各状態の特徴的な揺れ方を判断するアルゴリズムを開発して実現したものになります。自転車に乗っているときは端末をカバンに入れておくなど、ごく一般的な使い方をしていれば正しく検知されるようになっています。消費カロリーも表示するので健康管理に使うのはもちろんですが、その日1日の間にいつ歩いて、いつ乗り物に乗ったのかなど、振り返ってみるのも楽しいですね。

――3種類以外の他の状態も検知できるようになると面白そうですが。

大西氏
 どこまで他の状態を検知できるか、引き続き社内でも研究を続けて進化させていくつもりです。ただ、ライフログを細かく取得されてしまうことを気にされるお客様もいらっしゃいますので、情報の取り方や出し方についても慎重に検討していきたいと考えています。

――他に注目の機能はありますか。

大西氏
 「My Selection」というアプリのショートカットを格納できるフォルダウィジェットを用意しています。6種類のデザインがありまして、それぞれで開くときのアニメーションが異なっているので、見た目も楽しく使っていただけます。Android 4.0は標準でアプリのショートカットをフォルダ化できるようになっていますが、アイコンが重なって認識しにくい場合もありますので、このように大きく凝った見た目で表示できるウィジェットは便利に使えるはずです。

ホーム画面上に目立つように配置されたウィジェット「My Selection」。開閉時には凝ったアニメーションが再生される
「すぐ文字」には“乗換NAVITIME”と“取扱説明書”の機能が加わった

 また、DIGNO ISW11Kからあった「すぐ文字」も本製品に搭載していまして、“乗換NAVITIME”と“取扱説明書”の2つを新たに連携アプリとして追加しています。“乗換NAVITIME”では、「すぐ文字」の入力画面で“渋谷 市ヶ谷”というように発着駅を文字入力して“乗換NAVITIME”ボタンをタップするだけで、発着駅が入力された状態で乗換案内アプリが起動します。“取扱説明書”は、“メール作成”といった文字を入力してボタンをタップすると、メール作成に関連する説明書内のインデックスが表示されて操作方法などを調べられる、という仕組みになっています。

 それと、文字入力アプリに“連続かな手書き”モードを追加しました。これまでの“漢字手書き”では1文字単位で認識するようになっていましたが、“連続かな手書き”では、ひらがな、カタカナ、英数字の一画一画を随時認識してくれるので、待ち時間なくサクサク入力できます。

シングルコアでも快適動作を実現

――マルチコアが当たり前になってきた中で、シングルコアのCPUを採用したのはなぜでしょうか。

大西氏
 DIGNO ISW11Kのときも、シングルコアCPUでパフォーマンスを追求してユーザーにとっての使いやすさを目指す、というコンセプトで開発していました。結果、非常に軽快に動作するようにできたと思っていますし、実際のユーザーの方からの反応も良好でした。

 今回のモデルにつきましても、その方向性を踏襲しまして、DIGNO ISW11Kでのチューニングを流用しつつ、さらなるパフォーマンスアップを果たしたものになります。

――マルチコアでなくても、十分に快適な動作を実現できる、というわけですね。

大西氏
 そうですね。もちろん、デュアルコアやクアッドコアがいい、というユーザーもいらっしゃるかとは思いますが、今回はDIGNO ISW11Kのユーザーの方からのご意見をもとにシングルコアを採用した、ということです。今後の方向性は、本製品を使っていただいたお客様の要望も踏まえて検討していきたいと考えています。

――ディスプレイもDIGNO ISW11Kと同じ有機ELです。

大西氏
 こちらもDIGNO ISW11Kのユーザーの方から高評価をいただいたというのもあるのですが、従来のURBANOユーザーの方からのニーズとして“文字の見やすさ”もあるだろうとのことで、高コントラストではっきり表示できる有機ELが必要でした。通常の液晶と比べてコントラストに10倍以上の差があって、画像だけでなく白黒の文字でも美しく表示できるというのが有機ELディスプレイの大きなメリットですね。

――バッテリーの持ちもユーザーが気にするところかと思いますが、今回のモデルではいかがでしょうか。

大西氏
 まずバッテリー容量をDIGNO ISW11Kから増やして1500mAhとしました。バッテリーを長持ちさせるための「省電力ナビ」も引き続き搭載していますので、あわせてご利用いただくことによって安心してお使いいただけます。それと、「省電力ナビ」には新たに“最適充電”というモードも用意していまして、充電中に省電力モードに切り替えることで充電時間をできるだけ短くする、といったことも可能になっています。

au端末としては久しぶりに登場することになった卓上ホルダー。ワンセグ視聴用に脚を出して立てることも可能

――卓上ホルダーも同梱されましたね。

大西氏
 充電するときにmicroUSB端子のキャップを毎回外さなければいけないというのは、やはり面倒だというユーザーからの声が多かったのが卓上ホルダーを用意した理由の1つです。フィーチャーフォンでは卓上ホルダーに置いて充電するというのが当たり前だったわけで、スマートフォンになったらそれができない、というのは、ターゲットとしている従来のURBANOユーザーにとって優しくないと考えました。ですので、当初から同梱する方向で進めてきました。

――Android 4.0ではハードウェアキーの省略が可能なわけですが、あえてハードウェアキーを残した理由を教えていただけますか。

大西氏
 従来のURBANOユーザーやフィーチャーフォンユーザーにとっては、ハードウェアキーによって安心感のある使い勝手になるのではないか、という考えがまずありました。押すだけで端末がスリープの状態からすぐに復帰できる、というのもメリットですね。

 Android 4.0の標準のソフトウェアキーは、戻る、ホーム、タスクの3種類があって、そのうちのタスクについては本製品で独自に“メニュー”に割り当てています。ホーム画面や各アプリでメニューを表示させて設定などを行う、という操作性は、フィーチャーフォンのユーザーにとっても概念的にわかりやすく、一般的な操作感覚なのではないか、と思います。実際に端末を使い続けていくうえで、他のAndroid 4.0端末と比べて大きな違いを感じてもらえるところだと考えています。

――最後に読者に向け一言お願いします。

大西氏
 今回の「URBANO PROGRESSO」は、デザインと使いやすさを追求したモデルになっています。現在フィーチャーフォンを使っている方でも、違和感なく使っていただけるものになっているので、ぜひ手にとっていただければと思います。

照山氏
 デザイン、特に質感にはすごくこだわって作っています。持ったときの手触り、フィット感など、実際に使い続けていく中でそのこだわりを感じ取っていただき、長く使ってもらえるとうれしいですね。

水田氏
 スマートソニックレシーバーというのは特別なものではなくて、今までのスマートフォンと同じように自然に使っていただけるものですが、とにかく、サッと耳に当ててすぐに聞こえる、というのを体感してもらえればと思います。

――本日はありがとうございました。




(日沼諭史)

2012/6/14 17:14