気になるスマートフォン関連グッズ

気泡ができないディスプレイ保護フィルムの秘密


 フルタッチパネルの大型ディスプレイを装備するスマートフォン。ゴリラガラスのように強度が高い素材でできている端末が増えているとはいえ、折りたたみ型の端末とは異なり、画面がむき出しになっているだけに、傷つきやすいのも事実。保護フィルムを購入するユーザーも多いが、この薄いフィルムをきれいに貼るのは至難の業。そんな中、誰でも簡単にきれいに貼れるという保護フィルムが登場し、注目を集めている。

 そんな保護フィルムを開発・販売しているバッファローコクヨサプライ マーケティング部 商品企画2グループの渡邊裕介氏に、開発の背景や仕組みを聞いた。

空気を逃がしながら干渉縞を抑える

渡邊裕介氏

 渡邊氏によれば、スマートフォンの出荷台数の増加に伴い、ケースやディスプレイ保護フィルムなどのアクセサリー製品の市場規模が急速に拡大しているという。同氏は「各社から夏モデルが登場して以降、売れ行きは春商戦の1.5倍になっており、今年の冬モデルでは春の2倍程度になると見ている。中でも保護フィルムが好調」と語る。

 同社では、“誰が貼っても絶対気泡ができない”を売り文句にした「イージーフィットタイプ」の保護フィルムを開発。各種スマートフォンやタブレット端末向けのラインナップを取り揃えている。

 渡邊氏は、「元々PC向けのフィルムを担当していたが、画面が大きく、きれいに貼るのが大変だった。スマートフォンが登場し、当社も通常の保護フィルムを販売してきたが、どうにかして誰でも簡単に貼れる製品が作れないのかと、社内外からたくさん要望をもらうようになった。昨年の夏頃から本格的にこのテーマに取り組むことになった」と当時を振り返る。

黒いフレーム部分にドット状の接着剤。この隙間から空気が逃げる

 気泡ができないという仕組みはこうだ。通常の保護フィルムの場合、フィルムの裏面全体に接着剤がついており、これを端末のディスプレイ面に貼ることになる。ところが、小さな埃がディスプレイの表面に残っていると、ここに空気が入り込み、気泡となって残る。これに対し、同社では画面の外周に沿ったフレーム状の部分にだけ接着剤を使い、さらに接着剤の塗布をドット状にすることで、隙間から空気が逃げる構造を採用した。つまり、貼る際に空気が入らなくするのではなく、空気が入っても逃げる構造にしたのだ。

 「こうしたアイデア自体は以前からあったが、構造的にフィルムとディスプレイの間に空気層が残ることになる。タッチパネルの場合、指で触れた時の“干渉縞”が問題となり、製品化の際にはこの問題の解消が最大の課題になった。フィルム裏面に特殊な加工を施すことで、干渉縞を抑えることに成功した」(渡邊氏)という。

課題もあるが夢も広がる

 同製品には「反射防止タイプ」と「光沢タイプ」の2種類があり、ラインナップとしては前者の方が充実している。その理由について、渡邊氏は「反射防止タイプで製品の開発をスタートしたということもあるが、タッチパネルに触れて操作する場合、光沢タイプだと、どうしても指に引っ掛かりを感じる。反射防止タイプの方が快適に操作できる。また、屋外で利用する機会が多いスマートフォンの場合、光沢タイプだと、映り込みが気になってしまうため、反射防止タイプが好まれる傾向がある」と説明する。

 もちろん、反射防止タイプにも課題はある。「反射防止加工をすると、画面が白っぽく見えてしまう。白っぽくならず、きれいに見えるように改良を重ねている」と語る同氏だが、それでも「他社の類似品よりはきれいに見えるはず」とパイオニアとしての自信を覗かせる。

 さまざまな機器への応用も期待されるが、構造的に難しい部分もある。外周のフレーム部分で機器に接着するため、ディスプレイの外周に段差があると貼り付けられない。それでも渡邊氏は「フレーム部分が1~2mmあれば大丈夫。タブレット向けもどんどんやって行きたい。ゲーム機やカーナビ向けの製品、熱対策や重量対策などの課題も多いが、テレビ向けの製品も検討していきたい」と夢を膨らませる。

 当初は黒縁のみだったラインナップも、スマートフォンのカラーバリエーション化に伴いカラフルになった。「保護フィルムをうまく貼れないような女性にも広く購入していただけるように、より魅力的なラインナップにしていきたい。フィルムの着せ替えも提案していけたら」と語る同氏のアイデアは尽きない。

本体色がブラックとホワイトの2色だけのiPhone 4向けにカラフルな製品も投入している。左は反射防止タイプ、右は光沢タイプ

(湯野 康隆)

2011/8/1 09:00