ウィルコムに聞く
「HYBRID W-ZERO3」開発の背景、目指すフィールドとは
HYBRID W-ZERO3 |
ウィルコムは11日、PHS/W-CDMAに対応するWindows Mobile 6.5搭載のスマートフォン「HYBRID W-ZERO3」の開発を発表した。来年1月に発売される予定で、2008年6月に発売された「WILLCOM 03」から1年半を経て投入される新たなスマートフォンだ。
OSが新たなものになったことで、マイクロソフトの新サービスに対応するほか、GPSやBluetoothなど付加価値となる機能も搭載する。また、PHSに加えて、W-CDMA方式もサポートするほか、海外でも利用できるようW-SIM型GSMモジュールも利用できる。
開発を担当するウィルコムデータ通信企画室室長の須永康弘氏は、開発の経緯について「Androidなども候補にあったが、マイクロソフトからWindows Mobile 6.5の話があり、新サービスも提供されるとのことで、そちらを使いやすくする端末を目指すことにした」と語る。そのため、HYBRID W-ZERO3では、アプリケーション市場のMarketplaceや、同期サービスのMy Phoneがそのまま利用できる。
ただ、他キャリアからもWindows Mobile 6.5搭載端末が登場することが確実な中で、ウィルコムとしてどういった手を打つべきか。今回は、携帯電話に慣れたユーザーでもスムーズにスマートフォンを使えるようなユーザーインターフェイス、機能を取り入れることになった。その1つが、Windows Liveメールのアカウントを取得する際、ID/パスワードなどをメーラーに設定することなく、アカウントを指定するだけで済むという流れにしたこと。そしてもう1つが、オリジナルのメニューデザインとなる。
須永氏は「メールのサービスで、ここまで手軽に利用開始できる仕組みは他にないのではないか。ただ、携帯電話のメールは、この流れで利用できる。当たり前のことを当たり前にするというのが基本的な考え方。メニュー画面もそうだし、テンキーを採用したののも、その考えに基づく」と説明。従来のスマートフォンを求めるユーザーからすれば「余計なお世話と言われるかもしれない」(須永氏)としながらも、そういったユーザーはITリテラシーが高く、“余計なユーザーインターフェイス”があったとしても自分自身で対処できる。
HYBRID W-ZERO3のメニューランチャー | Windows Mobile 6.5のメニュー |
ウィルコムの須永氏 |
今回、ウィルコムがHYBRID W-ZERO3で狙うのは、スマートフォンに興味を持ちつつも、これまで手を出してこなかった20代半ば~40代の男性ユーザーだ。須永氏は「HONEY BEEを使う学生層は、最初スマートフォンを面白がる人もいるが、基本的に通話機能を重視しており、スマートフォンの拡張性に価値を感じてもらえない。前回のWILLCOM 03では女性ユーザーの獲得を目指し、全体の35%程度が女性となったが、その分男性ユーザーが離れた。スマートフォンに興味を抱く基本的な層をターゲットとして、そこを確実に掘っていきたい」と意欲を見せる。今回、GSMモジュールに対応したのは、ターゲット層の中でも頻繁に海外出張へ赴く人にとっては、安価に現地で利用できることがメリットになるため。法人でのニーズも高いと須永氏は見る。
また、W-SIM対応GSMモジュールという形は、ウィルコムにとって可能性をもたらす。これは、「中国のTD-SCDMA、北米のCDMA2000に対応したモジュールが登場すれば、W-SIMを差し替えると、そのままHYBRID W-ZERO3を利用できる。W-CDMA対応という点ではメーカーも海外事業者へ提供できる。これらのことで、ワールドワイドの流れをウィルコムにとってもメリットが生まれるようにしたい。他事業者にも広がれば、コストダウンが広がる。そういった流れになることを期待している」(須永氏)という目論見がある、というわけだ。
W-OAM typeG対応のW-SIM | こちらはGSMモジュール |
BluetoothやGPSなどの機能を充実させたのは、現在のW-ZERO3ユーザーへの思いも強いことが理由という。携帯電話と比べると、PHS端末は機能面での競争力に欠ける点が否めない。コストアップになったとしても、機能を充実させることで、携帯電話と遜色ない形にして、ユーザーの満足度を向上させたいようだ。そのなかでもこだわりがあるようで、500万画素カメラを搭載し、最大解像度の写真も送信できるようになってはいるものの、130万画素クラスでの撮影において手ブレをいかに抑えるか、現在チューニングを図っているという。
スマートフォンに興味を持つという基本的な層での利用拡大を目指す「HYBRID W-ZERO3」だが、11月11日の発表時点では、まだまだ開発途上とあって、ユーザーインターフェイスの操作性がややもたつく面もあったが、今後調整を進めるという。周辺機器を充実させる方針も示されており、ウィルコムにとって1年半ぶりのスマートフォンとなるが、iPhoneが話題となり、Android端末の広がり、他のWindows Mobile 6.5端末の登場など、競争相手には事欠かない中で、どのように市場へ受けいれられるのだろうか。
2009/11/11 14:45