「CA003」開発者インタビュー

ケータイとしての優美さを追求した3代目


 EXILIMケータイとしては3代目となる「CA003」が発売される。「CA003」は「EXILIMケータイ」の名にふさわしく、ケータイ電話でありながら広角28mm(35mm換算)で12.2メガの高画質カメラを備え、ISO感度は3200までサポート。オートベストショットや高速連写、Dynamic Photo、美撮りといった機能を搭載するなど、デジタルカメラのEXILIMに匹敵する機能を実現した意欲作だ。

 どのような点にこだわりながら開発されたのか、カシオ日立モバイルコミュニケーションズのカシオマーケティングチームの高木健介氏、同第一事業部 企画チームの香田隆誠氏、同開発設計本部 ハード設計グループの黒岩正樹氏、ソフト設計グループの千足英司氏、カシオ計算機 デザインセンタープロダクトデザイン部 リーダーの花房紀人氏、同デザインセンター UIデザイン室の辻村泰一郎氏にお話を伺った。

開発コンセプトとデザイン

――CA003の開発コンセプトについて教えてください。

香田隆誠氏

香田氏
 今回の「CA003」はEXILIMケータイとして第3弾となります。カシオ計算機のデジタルカメラ「EXILIM」で培った本格的なデジタルカメラ機能と、業界最高クラスの12.2メガというカメラセンサーを搭載しながら、サイズは17.4mmというほどよいスリム感で納めました。単純に画素数が高いケータイ電話というだけではなくて、現在、デジタルカメラ「EXILIM」のテレビCMなどで話題になっている「Dynamic Photo」のように、撮って綺麗に楽しめ、そして伝えたくなるような様々なカメラ機能を搭載して、従来のW63CA、W53CAを持っているユーザーにも、新しくより進化した形で使っていただけるような端末を目指しました。

――デザイン面についてはいかがでしょうか。

花房氏
  これまでのW53CA、W63CAでは「Urbanity Precision」というワードでデザインしてきました。機能美や、そこから来る所有する喜び、そういうものを形に表現するという考え方です。

 EXILIMブランドを冠するからには、まずカメラらしいルックスをしていること、カメラ面がこのケータイの顔なんですよということを伝えるためにかなり直球なカメラ表現を目指してきました。レンズの部分に金属調のリングをあしらうことで、撮られる側の人がカメラを向けられているのだな、ケータイで安易に撮られているのではないのだなと認識していただける、そんな新しいケータイのあり方を作りたかったんです。

花房紀人氏

 今回は3代目ということで、、カメラケータイとしてのEXILIMブランドのポジションがだいぶ確立できてきたのかな、ということを踏まえて、カメラでありつつ、ケータイとしてもさらに美しい。撮影の際も通話の際もよりなじみのよいスタイリング。そういったものを目指しました。「GRACEFUL」(「優美さ」)テーマと呼んでいます。

――具体的にはどのような点にこだわられたのですか。

花房氏
 カメラフェイス側をすべて1ピースで覆う構造を今回初めて実現し、バッテリーカバーの分割線を一切なくしました。レンズリングも従来の金属調からボディカラー同色にし、さりげなくボディになじむよう仕上げました。ただ全くレンズを主張しないというわけではなく、周囲にシルバーの細いリングを配置することで、つるりと整ったボディ面の中にリングのみがきらりと光る、という優美なイメージを狙いました。四角いボディに丸いカメラリングというEXILIMケータイのアイコンがだいぶ成立してきたのかなというところから、それを足がかりに、ちょっと一歩先を行ってみようか。カメラとしての存在感を、直球表現に頼らずアイコニックに表すという考え方に挑戦しています。

香田氏
 前回のW63CAに続いて採用している発光カメラリングですが、今回はカラーバリエーションや本体のコンセプトに合わせて、白と青緑という高級感のある発光色になっています。また、前機種ではできなかった着信連動を実現し、カメラ起動中だけでなく着信したときにも光ります。ケータイをどの向きに置いても両面から着信したことが分かります。

W63CA(上)とCA003

 また、カメラフェイス側が丸みを帯びた形状になっているのですが、サイズは前機種のW63CAと同じ17.4mmなのです。実際サイドだけで計るともうちょっと薄いです。このサイズで12メガという高画素のカメラセンサーを搭載し、レンズも前機種と同じ広角28mmで、電池容量も前機種より大きくなっているのです。表示は前回3.1インチだったのに対して今回は3.3インチですが、幅も高さも筐体のサイズは変わっていないです。今回のデザインに関しては設計の皆さんに本当にがんばってもらいました。

花房氏
 今回サイドキーをタイル状の大きなものにできたというのもかなり前進ですね。今までは設計的な制約でどうしても小さめだったのですが、今回はかなり早い段階から「サイドキーは大型でつなげたカタチにしてね」とお願いしました。操作性の面でも大きくて押しやすくなりましたし、見た目もかなりすっきりしました。

――今回ボディカラーで面白い色がいくつか入っていますが、そのあたりの狙いは?

花房氏
 これもボディデザインと同じく「GRACEFUL」をテーマに選定しているカラーなんですが、普通のケータイではなかなか採用しないような色相を使いながらも、落ち着きと、高級感、質感が出せそうな色ということで選んでいます。メインカラーは「ターコイズグリーン」で、この1色に関してだけは、キー部分とその他部分の色をあえて変えて特徴付けを行っています。どのカラーも、深みやニュアンス、そういうったところをすごく重視して作っているので、店頭でもぜひ手に取ってみていただきたいなと思いますね。

――キーデザイン自体も特徴的ですね。

花房氏
 これまではフラットな中に面積の広いタイルキーでしたが、今回は立体形状をつけて、モダンアクセサリーのようなソリッド感を演出しています。さらにキートップに丸みをつけることで光と影を拾って質感を出しつつ、タッチ感、クリック感もしっかり確保するという方向でデザインしました。どの色にしても、落ち着きとかニュアンスとか、そういうったところをすごく重視して作っているので、店頭でもぜひ手に取ってみていただきたいなと思いますね。

12.2メガピクセルのカメラを搭載

――今回のモデルについては、やはり12メガのカメラが一番大きなトピックスではないかとなと思うんですが、なぜこのタイミングで12メガを積もうと思われたのでしょうか。

高木健介氏

香田氏
 12メガをこのサイズで搭載できるようになる時期が今の時期だったということと、お客さまのニーズですね。お客さまの立場からすると「画素が大きい=カメラが綺麗」というのが素直に評価ポイントの1つになっているので、進化感を出すためにも最高クラスのカメラが必要だと考えました。

高木氏
 EXILIMケータイの購入者アンケート結果を見ると、初代W53CAは「5.1メガだから」、昨年発売したW63CAも「8.1メガだから」と、いずれも購入理由の第1位が「高画素カメラ」でした。

黒岩氏
 世の中のデジタルカメラって今ほとんど12メガになってますよね。EXILIMケータイの目指すところは、あくまでデジカメと匹敵する画質ですので、同じ土台に立つにはまず画素数を同じにするしかないな、と思ってます。

香田氏
 デジタルカメラとケータイとではプラットフォームは全然違いますし、ケータイ電話のカメラを使ってる方とデジタルカメラを使っている方では客層も違いますので、全く同じ進化ではないのですが、EXILIMのブランドを冠していますので、デジタルカメラ側とは歩調を合わせていきたいと思っています。

――8メガから12メガなるにあたって、センサーのサイズは大きくなってるのでしょうか?

黒岩氏
 センサー自体のサイズに関してはそんなに変わっていません。ただ、8メガから12メガに画素数が増えるに従い、どうしてもセルサイズは小さくなってしまってます。普通だとその分感度が悪くなってしまうのですが、センサーの性能と、「EXILIMエンジン for Mobile」を進化させることで、W63CAよりも感度が上がり、また、ノイズもさらに目立たなくなっています。ISO感度も前回のISO1600からISO3200に増えています。

黒岩正樹氏

――ファイルサイズが増えるとメモリの書き込みなどに時間かかるようになるとは思うんですが、従来機種に比べてそのあたりはいかがでしょうか。

黒岩氏
 レリーズタイムラグに関しては前回よりも高速化を図ってます。比較していただければ分かると思うんですが、体感的に全然違いますよ。

香田氏
 カシャッと撮ってから表示されるまで速くなっています。

千足氏
 従来の半分以下くらいに速くなってますね。

――ズーム機能に「超解像デジタルズーム」というのを採用されていますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。

香田氏
 今までの機種ですと最大画素サイズ、例えば8メガカメラのモデルだと8メガの最大サイズで撮る場合ズームはできなかったのですが、今回は最大サイズの12メガで撮影しても、超解像デジタルズーム機能をONにしていただければ3倍ズームが可能になりました。撮影サイズを段階的に自動で落としてズームを実現する「オートリサイズ」という機能もありますが、「超解像デジタルズーム」は12メガのサイズのまま3倍ズームができるわけです。

 確かに基本的にはデジタルズームなのですが、カメラエンジン側に超解像技術というものを搭載しておりますので、その技術を使って光学ズームに近い綺麗な画像を保存できます。

黒岩氏
 文字や建物など、コントラストの高い被写体を撮影すると、くっきり見えてその効果が非常にわかりやすいですね。

――世の中には光学3倍ズーム搭載機もありますが、さすがにそこまで積むのはサイズ的に難しいかったのですか?

香田氏
 EXILIMケータイは、スリムでスタイリッシュであることがコンセプトになっています。、今回検討した中で、超解像技術を利用すればサイズに影響が少なくズームが実現できるので採用しました。

デコレーションメールパーツにもなる「Dynamic Photo」

――デジタルカメラに搭載されている「Dynamic Photo」機能も採用されてます。お勧めの活用方法はありますか?

高木氏
 「Dynamic Photo」は動く合成写真が手軽に作れる機能なんですが、ガイドに従って手順を踏んでいくと、リアルに動く写真のデコレーションメールのパーツが割と簡単に作れるんです。「Dynamic Photo」機能をケータイならでに活かした形になりますね。作ったパーツはGIF化されていますので、メールをもらった人もそのまま使えるんですよ。デコレーションメールをよくご利用になる10~20代の若い女性を中心とした方々は、カメラもよく使われる方々ですので、非常に親和性のある機能だと思っていますし、ユーザーの広がりを期待しています。ぜひ活用していただきたいです。

――それはデジタルカメラに搭載した時よりも進化が期待できそうな機能ですね。

高木氏
 まさにおっしゃるとおりです。ケータイは撮ったものをそのまま送信できるというのがデジタルカメラとは明確に違うところです。またユーザーにとっても「デコレーションメール」という非常に敷居の低いところから入っていただけますので、そこから面白さ知って、広げていってもらいたいですね。そのために我々としては、無料でこの動く写真のデコレーションメールパーツがダウンロードできるキャンペーンをCA003のメーカーウェブサイト(「動く写真のデコレーションメールパーツ“DECO-MONSTER”」)上で実施しています。

香田氏
 デコレーションメールのパーツにはキャラクターやアニメーションものはたくさんありますが、リアルな実写版ってあまりないですよね。アニメやキャラクターにはそれぞれよさがありますが、自分だけのものを自分で作れて、自分なりに伝えられるというところが今回新しい部分かなと思います。

千足英司氏

――「Dynamic Photo」を上手に撮影するコツがあったら教えてください。

千足氏
 できるだけ単色の背景で撮影すると綺麗に撮れます。背景の色と前の人物の服の色などが似てると同じ色と判断してしまうので、背景との色の違いをはっきりさせると効果的です。

――ちなみにデジタルカメラの「Dynamic Photo」との互換性はあるんでしょうか。

千足氏
 デジタルカメラの場合は20枚ですが、今回のケータイ版は10枚の動画で、サイズや枚数が違うんですね。ですので残念ながらメモリカードを差し替えて使い回すといったことはできません。

撮影をアシストする機能、撮影後に楽しめる機能

――カメラの撮影機能について、お勧めがありましたら教えてください。

香田氏
 カメラがシーンを自動的に判別して最適な設定で撮影できる「オートベストショット」や、人物が綺麗に撮れる「美撮り」、1秒間に20枚連写できる「高速連写」、最大1秒手前から撮れる「パスト連写」などを搭載しています。

 「オートベストショット」は人物、風景、人物+風景、夜景、トワイライト、マクロの6パターンありますが、今回新しいエンジンを搭載したので実現できました。「美撮り」は、ソフトバンク向け端末に搭載されていましたので、新しい機能ではないのですが、今回5メガサイズまで撮影することができます。また、今回「クイックフォトビューアー」という新しいビューアーも搭載していますので、「高速連写」で撮影した20枚の写真を連続して再生して楽しめます。

高木氏
 「フェイスファクトリー」も面白いですよ。撮影した写真から顔を自動的に検出して表情を変えることができます。

香田氏
 表情が変わった顔画像を保存することもできますし、Flash化してだんだん笑っていくアニメーションで保存することもでき、待受画面に登録することができます。デコレーションアニメで利用できるオリジナルのテンプレートにして保存することもできます。

キャラクターには「アデリーペンギン」を採用

――カシオの端末といえば、待受画面に登場するキャラクターが有名です。今回は?

辻村泰一郎氏

辻村氏
 今回は「アデリーペンギン」を採用しています。これまでW41CAや、W51CA、W61CA等のスタンダード機で登場する機会の多かったペンギンですが、今回は筐体デザインをみたときから早い段階で「アデリーペンギン」を使おうと考えておりました。

――これまでカツオやミジンコもありましたが、新キャラクターにする、しないなど、選定基準などはあるのでしょうか?

辻村氏
 その機種の機能や位置づけなど、端末の特徴となる部分との相性を考えて決めていきます。例えば、VGAであればちっちゃいキャラでも十分表示できるので「ミジンコ」をモチーフにしたキャラクターを登場させました。しかもグローパルパスポート対応の時だったので、「じゃぁ旅をさせようとか」という具合に端末に合わせて決めています。今回の端末に関してはEXILIMケータイなのですが同時に、フラッグシップ的な、今のカシオ端末の中心的な位置づけにあるかな、というイメージを持ちましたので、同じくカシオのキャラクターの代表的な存在である「アデリーペンギン」に登場してもらいました。

――こだわった部分を教えてください。

辻村氏
 従来の上の方にラベルがあり、下の方でペンギンのストーリーが展開される単一フォーマットをやめ、バラエティーにとんだ様々な表現を採用しました。特に縮小拡大を使ってた大胆な演出が大きな特徴になっています。この「アデリーペンギン」の形が徐々にアイコン化されてきた中、ちょっと違った表現をしてみようという話があがりました。「アデリーペンギン」をVGAで表現するのは初めてだったので、小さなペンギンから大きなペンギンまで自由自在に表現してみようと考えました。

 その他にも細かいペンギンの絵をたくさん並べてパターン表現をしたり、オセロのような白黒でパターンを表現しているほかに、数字の階段を上るペンギンが手前から出て来たり、後ろから出て来たり奥行きを感じられるような演出もしています。数字の人文字を作ったペンギンたちが1秒ごとに数字を切り替えていくというのもなかなか面白いですよ。

 メニューでも各項目に合わせたストーリーの導入部分に縮小拡大を使った演出を採用し壁紙との統一感をもたせました。

花房氏
 これまでの「アデリーペンギン」ではカメラのズームイン・ズームアウトのようなものや、手前が大きく写っていて、奥に小さいペンギンがいるような奥行きのある表現はあえて自らタブーにしていたんですね。おかげさまで今では「アデリーペンギン」が大変ご好評いただいて、あの形状がシンボルとして認識されてきているかな、というところまで来ましたので、ここでもその枠をちょっと自分から外しにいってみようかなという成り立ちでできあがっているアイデアですね。

香田氏
 買ったら待受画面の設定をアニメーションに変えて楽しんでいただきたいですね。

――カシオといえば防水も得意ですが、今回は防水ではないですね。

香田氏
 そうですね。EXILIMケータイとして今回のこのデザインを成立させて、このサイズ感でうまくまとめていくことを優先した結果、今回は防水に踏み込みませんでした。ニーズは高いですし、検討したいと思います。

――では最後に読者に向け一言お願いします。

高木氏
 国内初のデジタルカメラブランドを冠したケータイとして出させていただいてから2年、おかげさまで非常に高い評価をいただいております。コミュニケーションターゲットとして20~30代女性としていますが、実際にご利用いただいているお客さまは年代も性別もほぼ均等な状態です。これはカメラとしてはもちろん、ケータイとしても、両方使いやすいことにこだわりつづけている商品としてのご評価の裏付けだと思ってます。

 今回の発売を機に、「撮りたくなる、伝えたくなる」というEXILIMケータイとしての本質価値をブランドステイトメントとして文脈化し、しっかりと発信していこうと考えており、カタログやウェブサイトでも謳っていきます。ケータイのカメラユーザーの気持ちが一番よく分かっているブランドであることを目指して、その意気込みも込めたブランドステイトメントをぜひお客さまに見ていただきたいです。

――本日はどうもありがとうございました。




(すずまり)

2009/11/13 06:00