インタビュー

mineoが月額250円の新料金プランを提供する意義とは――キーパーソンが描く“オンリーワン”のポジション

 オプテージは、MVNOサービス「mineo」で新料金プランを含む、新サービスを発表した。

左=オプテージ 田村氏。右=同 福留氏

 月額250円の料金プランや月額110円で月間10分間の通話ができるオプションなど、低価格でお得さを重視した内容となった。今回のサービスラインアップ拡充にはどういった狙いがあるのか? オプテージ コンシューマ事業推進本部 モバイル事業戦略部長 福留康和氏と同 コンシューマ事業推進本部 モバイル事業戦略部 田村慎吾氏にその背景を聞いた。

月額250円の新プランを提供

 サービス開始から9年目に突入したmineo。料金プラン「マイピタ」では約76万回線、「マイそく」では約8万回線と田村氏はいずれのサービスも好調との見方を示す。今回、さらにラインアップを充実させるべく発表されたのが、新料金プラン「マイそく スーパーライト」だ。

 田村氏は「これまで提供しきれなかった領域」として月額ワンコイン以下で利用できる超低価格プランを紹介する。通話オプションとの組み合わせで音声通話専用の回線としたり、テキストメッセージのやりとりなど、ごく軽い通信のみ利用することを想定する。田村氏は「ほかのサービスとの組み合わせの工夫次第で可能性が無限大に広がる」とその魅力をアピールする。

 田村氏によれば、20代~60代のうち個人でフィーチャーフォンを利用しているのはおよそ280万人。同世代の人口7700万人の3.7%がフィーチャーフォンユーザーということになる。スマートフォン全盛の時代だが、フィーチャーフォンにも一定の需要があることがうかがえる。「マイそく スーパーライト」ではそうしたユーザーに選択肢としてアピールする。

 同社では、Webサイト上でAndroidベースのフィーチャーフォンを対象に、動作確認表も用意している。

動作確認済み端末の一部

 福留氏は、スーパーライトを提供する背景について、mineoの利用動向と3G停波を挙げる。同社のユーザーの3割は複数回線ユーザー。昨今頻発する通信障害を受けて個人でもバックアップ回線を求める声が強い。

 さらに、停波が迫る3Gユーザーの受け皿としての側面もある。そうした理由から今回、ほぼ通話専用に近い「マイそく スーパーライト」が誕生したという。mineoはあくまでWeb上での販売を基本としている。フィーチャーフォンユーザーにはWebでの契約は少しハードルになるように思えるが、福留氏によれば、近年ではmineoの若年層のユーザー経由でのシニア層のユーザーも増えつつあるという。

安さでアピール

 月額110円で月間10分間の通話ができるオプション「10分通話パック」もあわせて提供される。

 その狙いについて、福留氏は「そこまで長くない通話が月に数回はある」といったユーザーをターゲットにしていると説明する。mineoでは、すでに「無制限かけ放題」と「10分かけ放題」を提供している。一方で、人によっては、「たまにしか通話しないけどいざ使うと負担になりがち」という場合もある。そんな「10分かけ放題に入るほどでもないけれど……」というユーザーに向けた新サービスだ。

 福留氏によれば、mineoのユーザーには節約志向を持つ人が多い。そこで自分の利用環境にぴったりのものを求めている人がいるだろうという予測のもとで今回のサービス提供に至ったという。「どれくらい通話するかわからないけど一応……」といったかたちで、ある種の安心感を求めるユーザーには既存の無制限かけ放題と10分かけ放題へ、と住み分けるイメージという。

 「マイそく スーパーライト」(月額250円)に「10分通話パック」(月額100円)をつけると、月額360円。「10分かけ放題」(月額550円)をつけても合計で800円、「無制限かけ放題」(月額1210円)をつけても1460円と、通話メインのユーザーに向け、アピールする料金プランに仕上げられた。

 競合他社のなかには月額基本料金が0円などど、「マイそく スーパーライト」よりも優位性があるサービスも存在するが、通話定額系サービスの料金を合算していくと、mineoの新料金プラン「マイそく スーパーライト」のほうが安くなることがあり、一定のアドバンテージがある格好となっている。

mineoA社
月額基本料金250円(マイそく スーパーライト)0円
通話オプション11210円(無制限)1650円(無制限)
通話オプション2550円(10分)550円(5分)
通話オプション3110円(月間10分)-

 一方で、安さだけではなく、さまざまな選択肢のひとつとして「eSIM」を拡充し、ドコモ回線でも提供する。田村氏は「デュアルSIMは組み合わせ次第で価値が大きく変わる」として、同社では「マイそく スーパーライト」と他社回線を組み合わせたバックアップ的な運用や音声通話はmineo、データ通信は他社回線といった使い分けなどを提案する。

 さらに「今後ライフスタイルはますます多様化する。スマホプランも他社含めてさまざま出てくる。そのときに画一的なプランだけではなく、自分にぴったりなプラン選びを提案していきたい」とコメント。その一環として自分のスタイルにあったプランを提案する「マイネオ! プランメーカー」を3月にも提供する予定。

子ども向け需要も考慮、さらに広告フリーも

 一方で、マイそく スーパーライトへマイピタやマイそくなど他プランからの移行はできるものの、「マイそく スーパーライト」からの移行はできない。これについて福留氏は「音声通話専用、バックアップ回線を求める人がターゲット。既存ユーザーとは使い方がまったく異なるので他プランへの変更はできない」と説明する。

 ただし、「マイそく スーパーライト」は子ども用の回線として使いたいという声も多かったという。そこで、子どもの成長にあわせて柔軟にプランを変更できるよう、「マイそく スーパーライト」から他プランへの移行は可能な仕様になった。LINEの年齢認証にも対応する。

 「広告フリー」もまた、節約志向のユーザーに向けた機能のひとつといえる。広告に関する通信をカウントフリーとすることで、月々のデータ通信容量を圧迫することを防ぐもの。広告が表示されなくなるわけではない。

 オプテージが示す資料によれば、パケット通信料のうち、60%がコンテンツ、40%が広告となり、広告を表示する際の通信量がそれなりの割合を占めていることがわかる。SNSに表示されるものやYouTubeの広告など、仕組み上すべての広告をカウントフリーにできるわけではないとされているが、通信量の削減につながる選択肢のひとつだ。

 減った分の通信量を考慮して安いプランへの見直しを図るということも考えられる。福留氏は「一定数のダウンセル(下位プランへの移行)が発生すると見ている」としつつも、通信量の不足による他社への移行の抑止やこのオプション自体に魅力を感じての新規契約も見込めるとして「収支上の影響はないと考えている」と説明した。

独自の立ち位置でユーザーにアピールする

 さまざまな魅力的なサービスを打ち出してきたmineo。同社では、Web上のコミュニティを通じてその魅力をアピールするなど、ユニークなユーザーコミュニケーション戦略を測ってきた。

 SNSが普及するなか、さまざまな情報が飛び交うなか企業が情報発信しても「聞き流される」と福留氏。「ファンが持つコミュニティで“口コミ”として広げていく」ことを重視し、今後も「マイネ王」やファンのコミュニティ、ツイッターなどから広げていきたいという。

 さらに、福留氏は現在のモバイル市場の状況をこう分析する。「サービスのコモディティ化が進んでいて激しい価格競争になっている。機能や価格だけではなく、独自の価値・サービスを追求することで差別化を図り、競争力を高めることが重要」。

 加えて「競争戦略を通じてユーザーのニーズに即した独自サービスを追求。オンリーワンのポジションを目指していきたい」とする。法改正により今後、MVNO事業者が電話番号を独自に発行できる様になる見込み。田村氏は「5G SA時代など将来的な検討要素として注視していきたい」と語った。

【訂正】
 Androidベースのフィーチャーフォンでの動作確認表に一部誤りがあったとして、オプテージが資料を訂正したため、本記事もあわせて訂正しました。