インタビュー

ナイアンティックのグレン氏に聞く、バスケゲーム「NBA All-World」の魅力とは

 米ナイアンティック(Niantic)、NBA、NBPAは、新たなゲームアプリとして「NBA All-World(NBAオールワールド)」の提供を開始した。

 「NBA All-World」は、現実世界の位置情報を利用したバスケットボールゲーム。プレイヤーはスマートフォンを片手に現実世界を探険し、NBAの選手をチームにスカウトするなどして、チームの強化を目指す。提供開始時点では八村塁やステフィン・カリーなど75人の選手が登場する。

 今回は、「NBA All-World」のシニア・ディレクターを務めるグレン・チン(Glenn Chin)氏への合同インタビューの機会を得た。本稿では、米国・ニューヨークでのリリース記念イベント中の同氏によるプレゼンテーション(一部)と、ショートインタビューの様子をお届けする。

グレン氏

グレン氏のプレゼンテーション(一部)

 私は今、故郷のサンフランシスコを離れ、ニューヨークに来ていて、ここでプレスイベントを開催しています。(プレゼンテーションをしている)奥のほうではランチパーティーが開かれています。先週はフランスで過ごし、パリでゲームを発表しました(編集部注:すでにフランスでは「NBA All-World」が配信されている)。

 私は30年のキャリアの大半をバスケットボールの世界で過ごし、バスケットボールを愛しています。EAスポーツブランドの立ち上げに携わり、NBAのバスケットボールのゲームをたくさん作ってきました。ですから、その知識をナイアンティックと共有できるのは嬉しいことです。

 また、私はアパレルなどを含むナイキのグローバルバスケットボールの運営にも携わりました。そして今、ナイアンティックにいます。これまでの経験を活用し、私たちのプラットフォームを現実の世界で使えることをうれしく思っています。

 では、なぜナイアンティックの最初のスポーツタイトルにNBAを選んだのでしょうか?

 それは、NBAがグローバルで革新的なスポーツリーグだからです。多くの国や言語で試合が放送され、若年層を中心にたくさんの人が観戦しています。

 「NBA All-World」では、現実世界におけるNBAのバスケットボールゲームの“魔法”を身近に感じることができます。そして、「NBA All-World」をプレイする人には、外に出て世界を探検してもらいたいと考えています。

 バスケットボールの文化が大好きな人たちに新しい体験をしてもらえることを、とても楽しみにしています。

インタビュー

――「NBA All-World」にはバスケットボールコートが登場しますが、ゲーム内のPOI(Point of Interest)について教えてください。「ポケモン GO」「Ingress」などとの違いはありますか?

グレン氏
 「ポケモン GO」「Ingress」にもバスケットボールコートはあると思いますが、私たちは多くの実在するバスケットボールコートを「NBA All-World」の地図に載せています。

 ほかにも、スニーカーショップやスポーツショップなど、バスケットボール文化に特化したお店があります。「ポケモン GO」「Ingress」とのクロスオーバーもあるかもしれませんが、バスケットボールに関連する特定の場所にも注目しています。

――近くにバスケットボールコートがないとプレイできないのでしょうか?

グレン氏
 私たちは「NBA All-World」を誰もがプレイできるようにしたいので、それは重要ではありません。

 なかには、近くにバスケットボールコートがないという人もいると思います。ですから、公園や人が集まる場所など、本物のバスケットボールコート以外でもゲーム内対戦ができるような場所を、今後は追加していく予定です。

 付け加えて、ナイアンティックのゲームでは「プレイする人々が安全であること」を何よりも重視しています。ですから、その点にも注意を払っています。

――このアプリケーションを日本市場に展開することについて、どのようにお考えでしょうか? バスケットボールの人気について、日本は米国よりも控えめなイメージがあります。

グレン氏
 バスケットボールの文化は、単にバスケットボールをプレーするだけではありません。音楽やファッションにも深く関わっています。

 スニーカーを探したり、新しいジャージを探したり、新しい音楽を聴いたり……若い世代を中心とした文化と言えるのです。

――つまり、バスケットボール以外の部分で、日本の若い世代にも届くということですか。

グレン氏
 はい。バスケットボールというスポーツや文化は、個性や自己表現を生み出すものだと思っています。

――将来的にARグラスなどの活用は考えていますか。

グレン氏
 ナイアンティックはあらゆる種類の新しい技術に目を向けていて、今後も新しい技術に目を向けていくでしょう。「NBA All-World」の体験を向上させて最高のゲームを作るために、私たち全員が、ゲームに取り込めそうな技術をチェックしています。

――「NBA All-World」の提供開始時点では、NBA選手が75人登場するようですね。

グレン氏
 提供開始時点では75人ですが、これから数カ月かけて、もっと多くの選手を導入していく予定です。

 また、現時点ではNBAにフォーカスしていますが、今後はローカルリーグなど、NBA以外の選手についても検討していきたいと思っています。

――選手には、能力値を表すレーティングのようなものはあるのですか。

グレン氏
 あります。選手たちのプレイスタイルは、彼らのスキルや、身長などの身体的特徴に基づくものです。

 レーティングは、実際の試合のパフォーマンスなどが反映されたものになっていますが、なかには、レーティングの数値について不満に思う選手もいるかもしれません(笑)。

――ゲームはNBAの動きに合わせてアップデートされるのでしょうか。

グレン氏
 新しいトーナメントなどを配信していく予定です。

 オールスターゲームなど、NBAのシーズン中の興奮を私たちは追いかけていきます。「NBA All-World」のライブ感にはワクワクしてもらえると思います。

――アプリ開発で最も大変だったことは何ですか?

グレン氏
 最も大変だったのは、ロケーションベースの地図について学ぶことと、新しい体験を生み出すことです。

――大変だったという「ロケーションベースの地図」に関して、「ポケモン GO」など過去のゲームと違いはあったのでしょうか。

グレン氏
 私はそれらの製品に携わっていたわけではないので、その点については言及できません。ただ、「ポケモン GO」のチームから学んだこともあります。

――アプリケーションのインスピレーションやアイデアは、いつ頃得られたのでしょうか?

グレン氏
 ナイアンティック創業者のジョン(編集部注:ジョン・ハンケ氏)は高校でバスケットボールをやっていたので、バスケットボールが大好きなんです。

 また、EAの創業者であるゴードン(編集部注:ビング・ゴードン氏)はナイアンティックの役員であると同時に、私の元上司でメンターでもあります。

 ゴードンは私のバスケットボールへの情熱や、EAやナイキにおける私の仕事を知っていて、電話をかけてきました。そこでジョンを紹介してくれて、一緒にアプリケーションの開発をはじめたのです。

 位置情報を使った地図ゲームやバスケットボールに対するジョンの情熱が、本当に大きなインスピレーションになりました。

――ありがとうございました。