インタビュー

アンカー・ジャパンの芝原氏に聞く、“充電”に関する日本市場のトレンドとは

 外出先でスマホなどを充電する際に役立つモバイルバッテリーや充電器。もしもの時のために、バッグには必ず入れてから出かける……という方も多いのではないだろうか。

 今回は、充電関連の製品やオーディオ製品などを手がけるアンカー・ジャパンへのインタビューを実施。アンカー・ジャパン事業戦略統括の芝原航氏に、充電関連製品に関する日本市場のトレンドや、製品開発などについて話を聞いた。

芝原氏

――さっそくですが、御社の「売れ筋」製品を教えてください。

芝原氏
 バッテリー関連についてまずお話をすると、コロナ禍で外出が減り全体の需要はやや落ちているものの、iPhone 13やiPhone 12の背面に磁力でくっつけられる「MagGo」シリーズのモバイルバッテリーは、かなり好評をいただいています。

 バッテリー関連とは対照的に、充電器については、リモートワークの需要などでマーケット自体がかなり伸びています。昨年発表した独自技術「Anker GaN II」を採用した「Nano II」シリーズが人気です。

 ケーブルだと、シリコン素材を外装に使用した絡みにくいケーブル「PowerLine III Flow」シリーズが人気ですね。ポータブル電源だと、最新モデルで長寿命が特徴の「Anker 535 Portable Power Station」がかなり売れています。

――コロナ禍で需要も変動しているんですね。最近の動きで言うと、半導体不足の影響はやはり大きいのでしょうか。

芝原氏
 チップ系の部材不足などに関しては、世界的な傾向と同じく弊社も影響を受けているので、中国の本社側と連携しつつ、中長期的な需要のフォーキャスト(予測)を活用して、戦略的に確保を進めています。

 あとは、コロナ禍の影響もあって、輸出入のところで遅延が発生しやすくなっており、供給を安定させるのは難しくなっています。そのため、お客様に安定して製品をお届けできるように、本社物流関連部署との連携を強めています。

――なるほど。グローバル市場と日本の市場を比べた場合、何か特筆すべき違いはありますか。

芝原氏
 傾向としては、たとえば充電関連製品の場合、欧米のユーザーと比べて「サイズ」へのこだわりが日本では非常に強いですね。

 “小さくて多機能なもの”を求める傾向が、他国の市場と比べて強いのが特徴だと思います。

――“小さくて多機能”というと、具体的にはどのあたりの製品になるのでしょうか。

芝原氏
 具体的には、「Anker GaN II」を採用した「Nano II」シリーズですね。ひとつの小さい充電器で、スマートフォンだけでなくパソコンも充電できる多機能さがあります。

 あとは昔からのラインアップとして、ACチャージャーとモバイルバッテリーが一体化した「Anker PowerCore Fusion」シリーズが、日本ではかなり売れています。

――ちなみに「日本人がサイズにこだわる」というのは、どういったところから判断されているのでしょうか。

芝原氏
 日本市場とグローバルマーケットを比較した際の相対的な売れ行きに加えて、ユーザーの方々の声も参考にしています。

 たとえばAmazonでのレビューに加えて、我々が定期的に実施しているユーザーインタビューや、カスタマーサポートに寄せられる声などから判断しています。

芝原氏。今回のインタビューはオンラインで実施した

――日本市場ならではのニーズは、どのようにして製品開発に取り入れているのでしょうか。

芝原氏
 日常的な業務に加えて定期的なミーティングを設け、ユーザーの方々からのフィードバックを、日本の関連部署だけではなく中国の関連部署にも送っています。

 たとえば製品販売ページの情報など、比較的スピーディーに対応できるものについては、日々ご意見を共有しすぐに修正するものもあります。また、アプリのUIなどに関してもフィードバックを実施しています。

 ただし、製品設計などに関するフィードバックについては中長期的な取り組みになるので、ある程度まとめてから、中国側の品質チームや製品開発チームへ送っています。

――今後の製品開発においては、どのような点がトレンドになっていくとお考えですか。

芝原氏
 まずバッテリーについては、「MagGo」シリーズに代表されるように“マグネット”がフォーカスポイントになるかと思います。

 そして充電器は、“小型化で高出力”という傾向が今後も続いていくと予想しています。ですから、最新の技術を取り入れつつ、なるべく小さく高出力なモデルを出せるよう取り組んでいます。

 充電器に関する最近の動きとしては、iPhoneに同梱されている充電器がなくなるといったこともあったので、そういったところの需要も取りこぼさないようにしたいですね。

 あとは、先ほどご紹介した“絡みにくいケーブル”のように、ユーザーの方々に新たな価値を提供できる製品も展開していきたいと思っています。

――ありがとうございました。