インタビュー

気になる花粉シーズン「ウェザーニュースアプリ」担当者に便利な機能や今年の傾向を聞いた

着実に忍び寄る「花粉」

 朝方はまだまだ寒さが残るが、日中は過ごしやすくなりつつある今日この頃、気になるのは「花粉」という読者も多いと思う。

 筆者自身も長年花粉症に悩まされており、くしゃみ、鼻水、鼻づまりはもちろん、目のかゆみ、鼻のかゆみ(中も外も)、鼻血など春先になると憂鬱になってしまいがち。花粉症ではない読者の方にはさっぱりな事だと思うが、花粉シーズンと言われている2月~5月初旬までは、「洗濯をする日」や「換気をする時間」、「スーパーに行く日や時間」といった外気に触れるタイミングを考える日々が続くことになる。

 そんな時に頼りにしているのが天気アプリの花粉情報だ。

 天気アプリといえば、翌日の天気や台風時の情報、最近では積雪の目安などを確認しているユーザーも多いだろう。そうした中、筆者を含む、多くの花粉症の人がこの時期、天気アプリで「花粉の飛散情報」をでチェックしているはずだ。

 数ある天気アプリのなかで、筆者は、ウェザーニューズのスマートフォンアプリ「ウェザーニュースアプリ」を愛用している。

 今回は、花粉が飛散するメカニズムや予報の方法、アプリの便利な使い方に加え、気になる今年のスギ/ヒノキ花粉の最新情報をウェザーニューズの担当者に聞いた。花粉症の人はもちろん、花粉症の家族や友人がいる方にも参考にしていただければ幸いだ。

花粉飛散のメカニズム

 スギやヒノキの樹木が飛散させる花粉について、飛散量に影響するのは「前年夏の天候」と「これまでの『年ごと』の飛散量の傾向」だという。

スギの場合

 たとえばスギの場合、夏に雄花が形成され、晩夏~秋にかけて雄花の生長と花粉の成熟があり、晩秋~冬に休眠を経て2月までに覚醒し再び生長の後花粉飛散に至る。

 夏の雄花形成について、「晴れて暑いほど雄花の形成に好条件」だといい、前年にこのような天候だと花粉の飛散量が多い傾向にあるという。

 ただし、前年の花粉数にも影響を受けるため、作物のように豊作の年、凶作の年があるとのこと。雄花の生産には多くのエネルギーを消費するため、雄花や飛散量が多かった年の翌年は雄花/花粉量が少ない傾向にある。

 一方、「花粉の飛散開始時期」はその年の冬~春の天候が影響する。

 冬の寒さで休眠から目覚めた後、生長し花粉の飛散につながるが、覚醒後暖かい日(15度前後)が多いほど飛散開始が早まるという。このため、寒い日々が長く続く年は花粉飛散時期が遅れる傾向にある。

ヒノキの場合

 花粉飛散のメカニズムは、植物の種類によって異なる。

 ヒノキ花粉の場合、先述のスギとは異なり「飛散量には『前年夏と飛散開始直前の傾向』と『年ごとの飛散量の傾向』」、「飛散開始時期は、冬から春の気候」が影響するという。

 これは、ヒノキが夏に雄花が形成され、秋~冬に休眠の後覚醒し、3月以降に雄花の生長と花粉の熟成が行われるからである。雄花の生長と花粉の熟成時期が異なるため、スギ同様花粉が春に飛散するが、飛散量の傾向が異なるとしている。

花粉の飛散量予測の流れ

 実際の花粉飛散量予測について、ウェザーニューズでは前述のメカニズムをふまえた上で、発生源や気象条件による飛散シミュレーションを行い実際の観測データによる補正を加えて予測する。

花粉観測方法

 花粉予測に欠かせない重要な要素のひとつに、実際の観測データがある。直近の飛散量予測だけでなく、翌年以降の予測にも利用される飛散量の観測方法について、「ダーラム法」と「自動観測」による方法がある。

 ダーラム法は、ガラス板に付着した花粉を1日1回の頻度で顕微鏡を用いて数える観測方法。全国の保健所や病院、研究所など約150カ所程度で観測されている。メリットとしては花粉の種類を見分けられるが、観測に多くの労力と時間がかかることや1日単位のデータとなるなどのデメリットがある。

 自動観測による方法は、機器を利用し花粉飛散量を観測する方法。リアルタイムの花粉観測ができるが、花粉の種類は確認できない。

花粉観測方法
ダーラム法
自動観測

 ウェザーニューズでは、これらの観測データを組み合わせて、飛散量予測に活用しているという。

ポールンロボ

 ウェザーニューズでは、飛散量の自動観測に「ポールンロボ」が活用されている。全国の一般宅や病院、企業などおよそ1000カ所に設置された日本最大級の花粉観測網を展開しており、24時間花粉を自動観測しデータを自動送信して収集する。

 ポールンロボでは、ファンにより空気を吸い込み、その空気にレーザー光を照射、花粉に当たり散乱したレーザー光の数値を測定することで飛散量を測定している。

ポールンロボ

 ポールンロボで測定された花粉飛散量は、飛散量予測に役立てられるほか、ウェザーニュースアプリでリアルタイムに確認できる。

花粉シーズンに「ウェザーニュースアプリ」を便利に使う

 リアルタイムの花粉飛散量や、直近の飛散量予想などを確認できるウェザーニュースアプリで、さらに便利な使い方はないだろうか? 今回はウェザーニューズのウェザーニュース「花粉Ch.」担当 正岡 慶子氏にイチオシの機能や便利な機能を聞いた。

ウェザーニュース「花粉Ch.」担当の正岡 慶子氏

細かくチェックできる「花粉レーダー」

 まずは、花粉の飛散予想をマップ表示で確認できる「花粉レーダー」から。雨雲レーダーと同じように、未来の花粉飛散予想を1時間ごとに最大48時間先まで確認できる。

 正岡氏はマップ表示について「250mメッシュ」と非常に詳細な予報を出していることが特徴とし、自宅や職場周辺の飛散量はもちろん、移動ルート上の花粉飛散量も確認できるため、花粉の多い時間帯や場所を避ける対策などに役立ててほしいとしている。

花粉対策アラーム

 ウェザーニュースアプリでは、毎日の花粉飛散量予想に基づき、当日の飛散予想や花粉シーズンの突入などをプッシュ通知で知らせる「花粉対策アラーム」を提供している。

 ユーザーが自宅の場所など気になる場所を設定しておくと、毎朝6時に当日の花粉飛散予報が通知される。また、その場所の花粉シーズンの開始と終了、飛散量が多くなる「本格シーズン」に関する案内なども受け取れる。このほか、花粉が飛散しやすい「雨上がり」や「強風」による大量飛散予想なども案内する。

 また、有料会員限定で、ユーザーの症状などにあわせた専用のアラームが通知される。

 数分で完了する「花粉症チェックシート」に答えると、花粉症の症状を分析し、症状にあわせたアラームが届く。たとえば、一般的に飛散量がそれほどであっても、ひどい症状を持つユーザーにはアラームを出し、対策するよう呼びかける。

花粉症チェックシート
症状に合わせた花粉対策アラーム例

 このほか、ユーザーが投票する「花粉症症状の度合い」をマップで確認できる機能や、自分の症状を記録したり同じ地域のユーザーと症状を比較したりできる「マイカルテ」機能などが利用できる。もちろん、「ポールンロボによる自動花粉観測データ」や「地域のピンポイント花粉予報」も確認できる。

豊富な機能
地域設定、一目で予報を確認
ポールンロボの観測データ
症状報告
マイカルテ

マイ天気登録で素早くチェック

 なお、レーダーやピンポイント花粉予報などは、アプリ上部のマイ天気に登録できる(最大6ページ、会員は最大20ページまで)。

 筆者は、花粉シーズンに「ピンポイント花粉予報」、台風シーズンには「台風情報のページ」と季節にあわせて登録内容を入れ替えたり、「自宅の天気」と「よく訪れる場所の天気」を登録しておき、素早くほしい情報をチェックできる。

ピンポイント花粉予報もマイ天気に登録できる

 担当者によると「あまり知られていない機能」とのこと。ぜひ積極的に使っていきたい。

2022年は概ね昨年と同様の飛散量

 最後に2022年の花粉飛散傾向を聞いた。

 今年は前年比で全国的に同様の飛散量だが、北陸や東北、北海道では前年よりも多く飛散するとみている。平年比で見ると、北海道や宮城県を除いた地域で平年並みか平年より少ない傾向が見られるという。

花粉飛散量予想
前年比
平年比

 すでに飛散が始まっている地域もあるが、今後北日本でも飛散シーズンを迎え、3月上旬には福島や金沢、新潟から仙台にかけて、3月中旬には秋田と青森で、札幌では4月下旬以降にシラカバ花粉がメインに飛散すると予想されている。

花粉飛散開始予想

 飛散のピークは東海や北陸、東北南部では4月下旬頃まで続く見通し。飛散開始やピークは平年並みの予想としている。

飛散ピーク予想

 これから本格的に始まる「花粉飛散シーズン」。これから数カ月間、少しでも苦しむ機会を減らすべく、これらの機能を活用して対策いただきたい。