インタビュー

GIGAスクール構想への取組みを聞く(1):GIGAスクール構想とは/NTTドコモ編

学校での1人1台端末配備を目指す施策において、通信各社が果たす役割とは

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言解除を受けて、これまで臨時休校を余儀なくされた学校も徐々に再開の動きをみせている。とはいえ分散登校など本格再開とは言い難く、第二波の懸念もくすぶっている。

 このような状況下で、政府は児童・生徒に対し1人1台情報端末を配備する「GIGAスクール構想」を進めている。通信各社も構想実現に向け、端末の提供などに動き出している。そこで、短期連載として各社の動きを取りまとめたい。

そもそも「GIGAスクール構想」とは

 各社の状況を取り上げる前に、まずは「GIGAスクール構想」について簡単に整理したい。

 GIGAスクール構想のGIGAとは、Global and Innovation Gateway for Allの略称で「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境」を実現すべく、2019年度補正予算に盛り込まれた施策だ。

 具体的には、学校への校内LAN整備、児童・生徒全員への端末整備などのハード面に加え、クラウドを活用したデジタル教材、ICT支援員などの指導体制の3本柱に対しそれぞれ政府による補助が出る施策パッケージとなっている。

 端末は、文科省の標準仕様書において「Windows 10 Pro」「Chrome OS」「iPadOS」のいずれかとするよう定められ、それぞれ必要最低限のスペックが定義されている。あわせて、自治体が選定する際の情報提供や共同調達などを推進するため、今年3月に内閣官房IT総合戦略室が「GIGAスクール自治体ピッチ」を開催した。

 自治体ピッチに登壇した各社は、1台あたりの補助金上限(4万5000円)内で端末・キーボード・MDMをセットにした基本パッケージと、さらなる利活用のためにアプリや保守運用などの補助金対象外オプションを組み合わせた応用パッケージの2種類をプレゼンテーションしている。

 国内の約950万名(小・中学生)に1人1台の端末を整備する一大プロジェクトのため、当初は学年ごとに導入時期をずらしつつ2023年度までに実現させる計画だった。ところが新型コロナウイルスでの休校措置を受けて計画は大幅に前倒しされ、今年度中の100%導入を可能な限り目指すこととなった。

 以上を踏まえ、自治体ピッチに参画した通信各社を中心に、端末ラインナップや現状について取り上げたい。第1回は、NTTドコモ 法人ビジネス本部 第一法人営業部 地域協創・ICT推進室 第三担当部長 加藤 公隆氏(2020年6月取材時点)に聞いた。

取り組みを聞く:NTTドコモ編

――まずは、GIGAスクール構想向けの御社の端末ラインナップについてお伺いします。自治体ピッチで紹介された基本パッケージと応用パッケージ、この2つを軸にお話しいただけますか。

加藤氏
 はい。基本パッケージはiPadとChromebook、応用パッケージはWindowsも加え3タイプ全てのOSを取り扱っています。応用パッケージは、基本パッケージの内容に加えて、アプリケーションや保守運用、アクセサリー類などを揃え、導入される自治体や学校のご要望に応じて御提案しています。

 NTTドコモでは、教育改革の実現を目標と捉え、LTE通信で「いつでもどこでも学びを止めない」点に価値を置いて取り組んでいます。そのため、LTEモデルを我々が提供する場合は、通信契約を必須としています。基本パッケージは補助金上限である4万5000円を意識した価格ですが、通信契約の部分は別途ご負担いただく形となっています。

 通信容量は利用シーンに応じて個別に御提案しています。校内ではWi-Fiを用いるのでLTEは校外学習の時だけ使うといったケースでは、あまり容量の多くないプランでも大丈夫だと思います。逆に、動画を積極的に利用したり、持ち帰り学習でも活用したりする場合、やはり容量が多めのプランが必要になってきます。

――基本と応用の2つのパッケージのうち、どちらに対する引き合いが高いですか。

加藤氏
 まだ制度が動き始めたばかりではありますが、今のところ最初にご相談いただく際は、基本パッケージを軸に検討されている方が多い印象です。ただし、お客様のめざす学びのスタイルを実現するため何が最適かを営業担当者と一緒に考え、最終的には端末だけではなく、付加サービスを含めたご提案をすることが多くなっています。

 特にフィルタリングサービスや授業・学習支援系アプリについては、導入される方が大半となっています。

――コンテンツについて、御社のオススメ、あるいはコンテンツパッケージのようなものはございますか。

加藤氏
 弊社として「これを導入しましょう」といった提案の仕方はしていません。お客様へのヒアリングを通じて、適切なものをご紹介しております。

――御社の特徴はどのあたりにあるのでしょうか。

加藤氏
 そうですね、冒頭でご説明した「LTEモデル」に加え「多くの導入実績」「利活用サポート」「全国体制」を挙げさせていただきます。

 導入実績では、既に公立学校で約100自治体、私立学校で約230校にご提供しております。自治体ピッチでは3つの自治体をご紹介いたしましたが、熊本市はiPad、渋谷区はWindows、町田市はChromebookをご導入いただいています。このように、弊社では全てのOSでしっかり実績を積み上げています。

出典:「GIGAスクール自治体ピッチ」NTTドコモ資料より

 とりわけ熊本市の事例では、端末だけでなく授業支援アプリやヘルプデスク、研修などを弊社が一元提供し、運用を全面的に支援しています。あわせて、熊本大学・熊本県立大学にも参画いただき、産官学連携でICTを活用した新たな教育カリキュラムの開発も進めています。このような利活用サポートにも力を入れています。

 サポートをしっかり行うための土台となるのが全国体制で、全都道府県に支店を有しているのは大きな強みです。また、全国に8つある支社には、教育ICT分野の担当者がおり、ニーズに応じた御提案を行うほか、導入後の操作研修も手掛けています。スライドに記載した研修メニューは一例ですが、より専門的な研修をご希望される場合は、NTTラーニングシステムやストリートスマートなどの連携パートナーをご紹介しています。

出典:「GIGAスクール自治体ピッチ」NTTドコモ資料より

――実際に活用いただくための研修は、どのような方々が対象となるのでしょうか。

加藤氏
 これもお客様のニーズに合わせた内容となるのですが、現場の教員向け研修はほとんどのケースで提供しています。端末操作や、授業における効果的なICT活用方法などを、ハンズオン形式で研修しています。熊本市の事例では学校ごとにICT推進リーダーを設けていただき、リーダー向け研修も行いました。また、校長先生や教頭先生向けに、なぜICTを導入するのかといった目的意識を喚起する研修などもございます。

――ありがとうございました。