インタビュー

「au 5G」いよいよ発表、キーパーソンに聞く料金、スマホ、エリアの考え方と今後

 auの「5G」がいよいよ3月26日からスタートする。これに先駆け、23日、料金、対応機種や5G向けの新たな体験サービスが発表された。

 本誌ではさっそくパーソナル事業本部 コンシューマ事業企画本部 副本部長兼コンシューママーケティング1部長の松田浩路氏と、コンシューマ事業企画本部次世代ビジネス企画部部長の長谷川渡氏にインタビューを実施。5Gサービスの詳細を聞いた。

長谷川氏(左)と松田氏(右)

エリア展開について

――高橋誠社長がプレゼン後の質疑応答で、「5Gのエリアは、いつ現在の4Gと同程度になるのか」といった質問に対して、「2022年度末」と回答していました。

長谷川氏
 質問は「4G LTEと同等」という表現でしたが、本当にまったく同じというレベルはかなりハードルが高いものだと思います。「4G LTEと同じように、ある程度、どこでも5Gが使える時期はいつか」という理解のもと、2022年度中とお答えしたということかと思います。

長谷川氏

 2021年3月(2020年度末)には1万局、その1年後の2021年度末に2万局の展開を予定しています。その1年後には、日本のどこででもお使いいただけるようになると思います。その際には、5G用の新周波数以外の、つまり「転用」ともいわれるもの(4G用周波数を5G用に活用すること)も入っているとご理解ください。

 現在の4Gと完全に同等という意味では、もう少し先かと思います。

――各キャリアから5Gサービスが発表され、当初のエリアも明らかになりました。auに限らず、各社いずれも「ちょっと狭い」とユーザーの印象としては抱いてしまいます。これはどういった要因が影響したのでしょうか。

長谷川氏
 周波数の割り当てが決まったのはちょうど1年前です(編集部注:基地局設置にともなう無線局免許は2019年7月交付)。そこからどういうバンド(周波数)でサービスを提供できるか判明し、開発を進めたことになります。サービスイン時点で「狭い」というご指摘はその通りかなと思います。一方、工事できる準備が整っており、ここからはどんどん増やしていくことになります。2020年度末に1万局を目指していきます。

松田氏
 どうしても新しい通信システムになるほど、周波数帯域を広く確保したくなります。そのため(利用者が少ない)高い周波数が用いられます。これは仕方ないことです。4Gではスタートダッシュできたと思っていますが、3G設備の共用で実施できたところもあると思います。

――5Gのエリアが面として広がりはじめる時期はいつごろになるでしょう?

長谷川氏
 この1年の動きですよね。その詳細は場所によって異なり、一概には言えないところはあります。

契約について

――auの5Gサービスを利用する上において、auの5G対応機種の購入は必須なのでしょうか?

長谷川氏
 (ユーザー自身が持っている5G機種を利用する)持ち込みできるか、という意味ですよね。はい、できます。

 店頭での対応を踏まえると、ちゃんと動作するか確認させていただいたほうが安全かなとは思います。5G対応機種をお持ちいただいて、店頭で対応させていただいたほうがいいかなと。

――「My au」上での手続きはできますか?

長谷川氏
 現時点ではできないです。

――となると、SIMのみ手配しようとするとやはり店頭での手続きになるのですね。

長谷川氏
 はい。SIMカードについては、従来と同じバージョン4と呼ばれるものなのですが、5Gの契約では持ち込みも機種変更も、新たに発行することになります。

料金について

――今回4つの料金プランが発表されました。そのうち3つは、4G向け料金に1000円上乗せした格好です。

長谷川氏
 コスト面での検討もありますが、グローバルでの水準も参考にしました。トータルコストや、提供する価値がどれほど上がるのか、といったことを考えながら「プラス1000円いただければ、安心して使っていただけるエリアを作っていけるだろう」と考えました。

プラン基本料金各種割引適用後(6カ月間)
データMAX 5G ALL STARパック1万1150円5460円
データMAX 5G Netflixパック9650円4260円
データMAX 5G8650円3460円
ピタットプラン 5G(~1GB)4150円1980円
ピタットプラン 5G(~4GB)5650円2980円
ピタットプラン 5G(~7GB)7150円4480円
※各種割引:スマホ応援割II(6カ月間)と2年契約N、家族割プラス(4人)、auスマートバリュー、5Gスタートキャンペーンを適用した場合の最安料金

――2年間、1000円の割引というのは、当初、狭いエリアだからという意味合いですよね。

長谷川氏
 はい、その通りです。

――料金面では、すでに使い放題プランを提供してきました。

松田氏
 スマートフォンユーザーのトレンドとしては通信量は上がっています。まだ使い放題で体験できる価値をご存じない方々が、(山でたとえると)まだまだ裾野の広いところにいることの裏返しといえるかなと思っています。

 これって、まだ私たちがその価値をお伝えしきれていないということでもあります。今回、縦型コンテンツなどをご用意することになりますが、「これならいいじゃん」と思っていただけるようにしたい。その余地はまだあると思っています。

――そういう意味で「ALL STARパック」は、提供する側にとっても自信のあるプランですか。

長谷川氏
 新サービスの「TELASA」は今後にこうご期待ですが、ほかの「Netflix」「Apple Music」「YouTube Premium」は、スマートフォンユーザーであれば本当にお世話になっているサービスの数々だと思います。メジャー感があると言いますか。

 それを使いやすい環境が「使い放題プラン」で、これを機に使っていただければ、その利便性を納得していただけるかと思います。

松田氏
 以前からNetflixさんとパートナーシップのもとで進めてきて、バンドル料金の効果はあると信じています。そういうところに価値を見出されたコンテンツ企業からは当社へお声がけもありました。

 見る人によっては「Netflix」「Apple Music」「YouTube Premium」という組み合わせは「どうやって入れたんだ」と思われるかもしれませんが、そこからKDDIが今後進む道を感じていただけるかなと思っています。

――今後、バンドル対象のサービスが増えるとすれば、「ALL STARの拡充」なのか「ALLSTAR 2」になるのか、どちらでしょうか。

長谷川氏
 まだまだ魅力的なサービスはありますから、拡充はしていきたいと思っています。ただそのときにどういう形がよいかは、今後、考えていきます。

松田氏
 大事に思っているのは、パートナーさんとの長い付き合いです。これまでNetflixさんと進んできて今回、ALL STARというプランを出しました。もし次を出すときに、まったく違うことをやるよりも、しっかりパートナーという意味を打ち出していきたいですね。

――使い放題を打ち出す「データMAX」では、引き続きテザリングなどの利用で、通信量の上限が設定されています。一部の用途ながら、上限を撤廃するのはやはり難しいのでしょうか。

長谷川氏
 テザリングについては、過去、モバイルルーターを手掛けている経験からも、全体の1%~2%という、ごく限られた方の利用による通信量が、ネットワーク全体へ影響を与えるというくらいの規模になることがあります。そのため上限を設けているのです。

松田氏
 当社のプランは、スマートフォンの利用では安心して使い放題になるという形です。

――キャンペーンとして無制限にする、といった施策は議論の対象になりませんでしたか?

長谷川氏
 ニーズをもとに考えると、スマートフォンでの利用感を向上させつつ、どこまでリーズナブルなものにするかという点をもっとも重要視しました。

松田氏
 もちろんどれくらいの方々が上限までいくか見ていきます。上限があるとはいえ、(プランによって異なる上限の)30GB、60GB、80GBですから。

――それはそれで充分な容量と言えそうですね。

スマートフォンのラインアップについて

――今回は7機種、幅広い機種を揃えたという格好でしょうか。

松田氏
 やはり端末をお求めしやすくお届けしたいと考えています。全体のラインアップとして、ブランドが強く、「今までもこのメーカー」と考えるユーザーがいるようなフラッグシップモデル。そしてお求めやすさを実現できる機種という形でポートフォリオを揃えました。

――他キャリアでも、Xperia 1 IIやGalaxy S20シリーズ、AQUOS R5Gというラインアップが用意されています。一方、ZTE、OPPO、シャオミといったメーカーの製品は今のところ、auだけですね。これは「求めやすさ」だけではなく狙ったものでしょうか。

松田氏
 お客様の声をもちろん大事なのですが、auとして忘れていけないことのひとつは「チャレンジングの姿勢」です。2月に、折りたたみ型の「Galaxy Z Flip」を導入するときにも「どう攻めていくか」というお話をしました。世の中に「サムシングニュー(何か新しいもの)」を提供したいと思っています。

 auはちょっと違うよね、auはわかってるよねとお客様におっしゃっていただけるようプロダクトでも頑張りたい。これまでお付き合いが長く、ブランドが強いメーカーさんはもちろん、これまでお付き合いがなかったメーカーさんともいかに戦略的なパートナーになって、日本のユーザーへお届けしていくかはチャレンジです。

 これを黙っていたら誰もやりません。あえて打ち手としてやってみようか、というのは我々の意識の中にありました。

――海外では2019年から5Gが開始され、中国や韓国のメーカーはその対応機種の開発経験をすでに積んでいます。そうしたメーカー側の経験値は、auのラインアップの選定に影響しましたか?

松田氏
 はい、もちろん影響しています。そしてチップセットメーカーの動向もです。ネットワークとの接続検証もありますし、コンシューマーのお客様へのサポートに加えて技術的なサポート力も踏まえて、たとえばクアルコムがどこまでサポートをコミットしているのか、という点もあります。

――今回は5G対応機種ばかりのラインアップになりました。4Gの新機種は別の機会と考えてよろしいでしょうか。

松田氏
 そうですね。ただ(ラインアップは)5Gへだんだんとシフトしていくと思っています。
――4Gの夏モデルは今後登場しますか?

松田氏
 4Gのモデルが出ないことはありません。ただ、5Gの拡充感が大事です。価格帯もさまざま揃えていきたいです。

――5Gを主流にしていきたい?

松田氏
 そうしたいですし、トレンドや部品供給などを見ても、2020年度の下期くらいから変化していくと思います。

――2020年度の目標契約数は、具体的なものは明らかにされていませんが、競合他社のように200数十万件を目指したいと高橋誠社長がコメントしていました。その目標のために、買いやすさのあたりで、「かえトクプログラム」以外に打てる手はありますか?

松田氏
 端末のラインアップは、グローバルでの動向にも影響されます。搭載するチップセットなどですね。それが下期になって加速していくことになるだろうと。

――その下期には、毎年9月に登場する機種がありますが、どの程度影響を与えそうでしょうか。

松田氏
 (下期の加速へ影響する機種は)その機種だけではないと思っています。お求めやすいものを含め、ぐっと(対応機種が)出てくるんだと思っています。

――まず開始時に7機種、そして次がいつになるかわかりませんが、また追加されるであろうと。

長谷川氏
 今年度中にもちろん(次の5G対応機種が)あります。

――今回のラインアップでは、どうしてもシャオミに驚いてしまうところがあります。「Galaxy Z Flip」のときもそうでしたが、グローバルメーカーの製品をできるだけ早く、日本向けの仕様を載せずとも投入する、そんな製品群を用意したいというようにも思えます。

松田氏
 はい、そうです。それをいかにクイックにするかと。「Galaxy Z Flip」もauのキャリアアグリゲーションのすべてには対応しませんでしたが、「サムシングニュー」として提供したいと。一方で、従来通りのスペックを満たす機種もラインアップします。

――シャオミ、ZTE、OPPOのようなメーカーが日本向けの仕様を盛り込んでもらう時期も来ますか?

松田氏
 これからの議論だと思っています。たとえばOPPOさんは、日本で認知度を高めようとマーケティングにも注力しておられます。今回は、「Find X2 Pro」というハイエンド、フラッグシップを扱いますが、それも今回、私たちのチャレンジのひとつですので、(シャオミだけではなく)忘れないでいただきたいです(笑)。OPPOさんも、このスペックの製品が日本でどれだけ受け入れられるか、彼らの注力もありますし、auの支援もあります。それは私たちも楽しみにしているところです。

――ありがとうございました。