インタビュー
ドコモの5Gスマホがハイエンド中心になった理由、エリア展開の考え方は――キーパーソンに聞く
2020年3月19日 00:00
18日、NTTドコモは5Gサービスと5G対応スマートフォンを発表した。その製品ラインアップや、今後のサービスエリアの整備はどのような考え方で進むのか。ドコモ社内のキーパーソンがグループインタビューに応じた。
取材に応じたのは、5G事業推進室長の太口努氏、料金制度室長の田畑智也氏、スマートライフ推進部長の尾上健二氏、プロダクト部プロダクト企画担当部長の渡邉正明氏、ネットワーク部技術企画担当部長の中南直樹氏、5G・IoTソリューション推進室 ソリューション営業推進 担当部長の有田浩之氏の6人。
端末ラインアップについて
――5Gスマホのラインアップはハイエンドとなった。ミドルレンジへの考え方は?
渡邉氏
5Gサービスをもっとも体験してもらえるのがハイエンドということでご用意した。ただ、5Gサービスの契約者数の目標を2000万件としており、その中ではミドルレンジも重要。早ければ年内に対応していけるよう準備する。
――「Galaxy S20+ Olympic Games Edition」がラインアップされたが、(新型コロナウイルスの影響で)オリンピックが開催されなければどうなるのか。
渡邉氏
そうならないことを祈りつつ、現在はそういう状況ではないため提供に向けて準備していく。状況が変化すれば再度検討する。
――スマホおかえしプログラムがキャリアフリーになるが、どういう狙いか。
田畑氏
今回用意した5Gの端末は、4Gと比べ、少し高くなっている。よりお求めやすくなるよう変更した。変更点は白ロムでの購入を可能にしたという内容。需要を喚起していきたい。
――SIMフリーの5G対応スマホは、ドコモの5G回線のSIMカードを装着するという形でなければ利用できないのか。
田畑氏
今日発表した料金プランでは、5G端末の購入を条件としている。5Gサービスを利用するためには端末がないと利用できないためセットにした。
ただし、5G対応機種を持ち込み、対応していることが確認できれば5Gのプランへ加入いただける。SIM差し替えのときの動作までは保証していない。
――今回、4Gの機種もラインアップにある。夏モデルはどうなるのか。
太口氏
例年、春以降の新商品・新サービス発表会を開催しているが、今回はそれを兼ねている。今回、春夏モデルを同時に発表したことになる。
――5Gへの契約変更に伴い、SIMカードも切り替わるのか。5G契約のSIMカードを4G端末に装着するとどうなるのか。
田畑氏
契約自体、4Gと5Gは別契約になる。4GのSIMカードがnanoサイズであれば、そのまま継続して利用していただける。5G契約後、4G端末に挿した場合の動作は保証していない。
エリア・用途について
――4G用周波数を5Gでも活用する議論がある。
中南氏
総務省で議論が出ているが、まずドコモとしては5G用に割り当てられた周波数帯を活用していく。魅力ある大容量サービスを享受していただけるよう積極的に展開していきたい。
既存の4G用周波数をただ単に5G用にしても、速度は上がらない。今後、ほかのサービスを考慮しながら検討したい。まずは必要とされるところに展開したい。今回発表した基地局設置予定数は、開設計画に基づくもので、Sub-6とミリ波を使うものになる。
――海外では5Gを宅内向け回線に利用するところもある。ドコモでは現在どういった位置づけか。
太口氏
宅内、あるいは固定回線の代替としての5Gは特に米国から取り入れられている。通信環境が国によって異なる中で、日本では光回線がかなり普及しており、そうしたニーズがどこまで価値のあるものか検討している。
これまで(光回線サービスの)「ドコモ光」を提供しているが、単なるその代替という捉え方に留まらず、モバイルだけではない固定的な使い方が法人用途を含め、どのようなニーズがあるか引き続き検討していくテーマかと思う。まず今回はモバイルでの使い方を提案するフェーズだ。
――5Gのサービスエリアが思った以上に狭いという印象を受ける。現在の4Gエリアまで使えるようになるのか。1年後、2年後の目安はあるか。
中南氏
当初150施設、500局になる。我々としては、付与された周波数に対して、開設計画を持っているが、その計画を2年ほど前倒して展開する。お客様が体感できるところには積極的に展開していく。何年後に今の4Gと同じになるかは言えないが、1万~2万局の展開計画があり、ある程度の主要スポット、政令都市で使えるようになると思う。
一番重要だと思っているのは基盤展開率。地方創生を含め、全国津々浦々で5Gを使えるよう確実に展開していきたい。
――5Gを用いる法人向けソリューションが今回22件発表された。コンシューマー向けのサービスもある。そうしたソリューション、サービスの導入にあわせたエリア拡充もあるのか。
中南氏
スポット的に必要な場所に構築する「キャリー5G」もある。コンシューマー向け、法人向けという2軸で構築することがあると思う。
有田氏
法人向けとして地域創生、地方創生へ数年前から積極的に取り組んでいる。過去、3Gから4Gと比べると、今回、少し考え方で違いがある。「ここで使いたい」という法人ニーズがあれば、法人部門からネットワーク部門と連携してかなえていく。それをセットにしながら開拓していく一面もある。
エリア展開で法人が一番か、というと一概には言えないが、(一般ユーザーが多くいる)トラフィックが発生するからエリアを展開するだけではなく、法人ユースがあるからエリアを構築することは、今回、新たなエリア展開の考え方だと思う。
尾上氏
コンシューマー向けサービスでも同じだ。アリーナやスタジアムでもしっかりサービスを展開していく。鹿島スタジアムなどで5Gエリアを構築する。Tリーグのトップパートナーになることもあり、さまざまな体験を提供することになる。必ずしも面的展開だけではなくスポットでもしっかり使えるようにすることも考えていく。
――フェムトセルは検討しているのか。
中南氏
現時点でそこまでは考えていない。いろいろな手法を含めて検討していきたい。
――過去、“話題のスマホ”(iPhoneのこととみられる)により、キャリア間で4Gのエリア競争が一気に起きたと思う。今秋、話題のスマホが登場するときにまた同じようなことが起きるか。
太口氏
話題のスマホがどうなるかはわからないが、エリアが通信やサービス、ソリューションの価値を感じてもらう重要な部分になる。そのなかでも当社は競争の優位性を担保したい。ただ、何がきっかけになるのか、複合的に要素が絡み合うだろうが、今後の戦略を主体的に考える中で適切な時期にエリア拡充やデバイス、サービスのラインアップを拡充したい。
今回、エリアについては、「スポット」という表現を多く用いてるが、面的には来年度の後半にはしっかり行っていく。ある特定の場所に行かないと使えない、という状況は早々に解消したい。
有田氏
法人観点からすると、2018年12月から進めてきた「5Gオープンパートナープログラム」は2021年度末に5000社のパートナーを目指している。新たなビジネスモデルを作っていくことを今注力している。たとえば自治体にとっては、5Gは社会課題を解決するツールのひとつ。業にとっては新たなビジネスモデルが生まれる機会になりえる。ビジネスマッチングをすることで、協創の場を全国にひろげていく。
料金について
――料金がキャンペーンとして無制限という形になった。どの程度利用されると見ているのか。
田畑氏
どれだけ利用されるか、想定しきれないところがある。その影響を見るためにも、いきなり料金プランに無制限を組み込むのではなくキャンペーンにした。今後の使われ方を見定めたい。
これまで、コンテンツの充実とともにトラフィックは増える傾向にある。具体的なデータは開示できないが、大容量プランが受け入れられつつあると思っている。5Gを便利にご利用いただきたいということで「5Gギガホ」にした。
――1年前まで、月々サポートがあり、docomo withというプランがあった。今回の新プランの策定は、そうしたユーザーからの移行も見据えたものか。
田畑氏
どちらかといえば、4G向けに「ギガホ」「ギガライト」を出した際、従来プランから大きな変更となった。これまで、シミュレーションできるようにしておすすめしてきた。いきなり「月々サポートを捨てて5Gへきてください」というわけではない。ただそういうお客様はいらっしゃる。今後、品質が上がり5Gの価値があるとお客様ごとに判断いただければ、移行していただければと思う。
――ギガライトの上限が7GBで、速度制限が128kbpsと4Gと変わらない。緩和する予定はあるか。
田畑氏
5Gでは、まず4Gでのヘビーユーザーの方からニーズが高まるかと見ており、「5Gギガホ」を用意した。一方で、それほど使わなくても5Gを利用してみたい、という方もいらっしゃるかと思い、「5Gギガライト」を用意しスペックは継承した。ただ、2年契約をなくすなど違いはある。