インタビュー
「AQUOS zero」開発者インタビュー
シャープが“世界最軽量”を目指した理由
2018年12月14日 10:00
ソフトバンクが12月14日から予約受付を開始した「AQUOS zero」は、AQUOSシリーズのスマートフォンでは初めての有機ELディスプレイを採用、画面サイズ6インチ以上で電池容量3000mAhを超える防水対応の機種としては世界最軽量の約146gを実現した意欲的な新機種だ。
夏モデルの「AQUOS R2」などのAQUOS Rシリーズとは異なるコンセプトで作られた、もう1つのフラッグシップモデルであるAQUOS zeroの魅力を担当者に伺った。
インタビューには、シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏、同事業部 商品企画部主任の篠宮大樹氏、システム開発部長の前田健次氏にお答えいただいた。
AQUOS R2と並ぶダブルフラッグシップ
――まずはラインアップの全体像について教えてください。
小林氏
上期にフラッグシップとして「AQUOS R2」を発売させていただき、比較的好調に売れていると思っています。フラッグシップの商品像には(AQUOS R2で追求した)ビジュアルコミュニケーションを楽しみたい方、人との関わりのための機能にこだわりを持つお客様以外にも、自分の中に秘めるこだわりから選ぶ方もたくさんいらっしゃるので、そういった方に向けた物が今回のAQUOS zeroです。例えばゲームや動画視聴などの用途を重視する方を想定しています。
今夏にSIMフリー専用モデルとして発売した「AQUOS sense plus」は、(AQUOS sense liteなどに対して)“あとちょっとの余裕”を提案した機種でしたが、想定よりも売れ行きは好調です。sense plusも継続していく一方、「AQUOS sense」は発売から1年を迎え、反響の良かったsense plusの要素を手頃な機種にも取り入れた後継機種が「AQUOS sense2」です。
AQUOS zeroについてはAQUOS R2と並んで、ダブルフラッグシップとして展開していきます。ターゲットの考え方としては繰り返しになりますが、人との関わりを何より大切にされるお客様に向けたAQUOS R2、自分の世界に没頭できる“没頭型フラッグシップ”がAQUOS zeroです。
「軽さ」という新しい価値を提案
――AQUOS zeroのコンセプトについて教えてください。
篠宮氏
動画やゲームなど、モバイル向けのコンテンツは年々リッチ化してきています。R2で採用したDolby VisionやDolby Atmosが良い例で、モバイルでもエンタメを高品位で楽しめる時代になってきていると考えています。端末を長時間利用することになるコンテンツなので、それを観るためのデバイスも長時間利用に適した持ちやすい方向に進むべきですが、一方で端末は年々重量が重くなっていて、コンテンツの進化と矛盾する方向に進んでいるのではないかという懸念がありました。これに対して、本当にその進化の方向は正しいのかという問いかけが開発の出発点です。
「究極のコアガジェット」として、長時間使い込むお客様がコンテンツに没入できる、夢中になれるような端末を提供したいと考えてAQUOS zeroを開発しました。そのための要素の1つとして「世界で1番軽くて持ちやすい」という要素があると思っていて、有機ELの採用に関してもそれを実現するための方法として考えています。
スペックを落として行けば端末を軽くしていくことはできますが、それでは本当のコアガジェットではないという議論が社内であり、開発にあたって3つのポイントを設定しました。1つは「軽くて持ちやすいデザイン」、2点目に「大画面で美しい表示、かつ美しいサウンドで聴ける」という要素は欠かせないと考えました。3点目に「ヘビー級のスペックとパフォーマンス」を実現して、不満なくコンテンツを楽しめる端末を目指しました。
――サイズや重さについては、企画の段階から既に目標があったのでしょうか。
篠宮氏
少なくとも軽さに関しては、かなり初期の段階から軽くしますと宣言していました。この大きさ(6インチ前後)で140~150g程度で作ることができれば凄いんじゃないか、という話は最初から出ていました。AQUOS zeroの一番の核となる部分だと思っています。
篠宮氏
一番軽量化に効いてくるのはやはり表側に出ている部分だと思っていて、AQUOS R2と比べてディスプレイは約38%、フレームは約41%、背面パネルは約29%軽くなっています。ディスプレイに関しては液晶からバックライトが不要な有機ELに、背面パネルはガラスからアラミド繊維に変えることで軽量化できています。これらを組み合わせて、世界最軽量のボディを実現しました。
小林氏
フレームに採用しているマグネシウム合金は、軽さに対して硬い素材です。鋳造で作っているため、切削加工が難しいマグネシウム合金をワンピースで作ることができ強度上のメリットもあります。
――そうなると結構高そうな気もしますが、コスト面での影響はあったのでしょうか?
篠宮氏
コスト面では確かに、パネルもフレームも良い物を使っていて、かつ有機ELを採用していますが、一方で(AQUOS R2との)ターゲットの違いを考える中で機能を絞り込んでいる部分もあります。これらはコストだけでなく軽量化や薄型化との兼ね合いも理由ですが、トータルとしては極端に高くならないようバランスを取っています。
――今後も軽さにこだわった機種は継続して出して行くのでしょうか。
小林氏
我々としては、競争軸を提示しつづけるということにはこだわりがあります。2017年の「AQUOS R」では「放熱」という要素をアピールポイントとして打ち出して、最近の機種ではちょっとしたブームになっています。業界が変化に富んでいないと人々の関心はなくなっていきますし、常に新しい良さを出す、違うことをやるというのは考えていて、その中で着目したのが「軽さ」というファクターです。今回限りでは終わらず、追求していきたいと思っています。
有機ELを初採用、その苦労は?
――開発にあたって、「ここが苦労した」というところはありますか。
前田氏
有機ELを採用したことで、AQUOSの画質ポリシーにどこまで近付けられるかは未知数の状態からスタートしました。有機ELは色域が広く黒が深いと言われる一方、液晶と比べてピーキーな特性でもあります。有機ELの特性を理解した上で、特有の色ずれや階調潰れを抑制するチューニングをしています。
画質調整の方向性としては、一昔前はコンテンツそのものの表現に少し色を足すことできれいに見えるという時代もありましたが、コンテンツの進化によって求められる方向性が変わってきていると思っています。リッチなコンテンツをそのまま出す、制作者の意図をそのままに伝えるために、より正確な色で表示することを目指しました。
――消費電力という点では、IGZOと比べてどうなのでしょうか。
前田氏
ディスプレイ単体での消費電力ではやはりIGZOが有利であり、省電力ゆえにモバイルで120Hz駆動などができるという面もあります。ただ、AQUOS zeroも端末全体での消費電力としては遜色ないレベルまではチューニングされています。
新採用の「パラレル充電」とは? 放熱の工夫を聞く
――発熱の処理、放熱の工夫についても聞かせてください。
篠宮氏
単純に放熱の効率を上げるだけではなく、長時間利用することを念頭においた機種ということで、ユーザーが熱によるストレスを感じにくい工夫も含めた発熱対策をしています。
熱によるストレスを感じにくいデザインとして、側面のフレームを凹ませた形状とすることで、端末を持った時に指がフレームに触れないようになっています。必ず触れる背面には、ガラスなどと比べると熱伝導率が低いアラミド繊維を使うことで、手に伝わる熱を抑えています。
内部構造としては、AQUOS Rからのノウハウとして、本体外郭近くに温度センサーを配置することでより正確な温度監視を実現しています。また、握ることが多い持ち手側(下側)の部分からは熱をなるべく逃さない構造でストレスを感じにくいよう配慮しています。2つの充電ICを搭載して発熱源を分散する「パラレル充電」を採用し、充電時の発熱を抑えました。
――最後に、読者に向けて一言ずつお願いします。
篠宮氏
やはり、ぜひ1回持っていただきたいなという思いがあります。まずは一度、店頭のデモ機などで軽さや映像の綺麗さを実際に見て、触ってみてください。
前田氏
有機ELとAQUOS画質、初めての組み合わせにおいて、有機ELの特性を最大限に使いこなすには特殊なテクニックが必要でしたが、最終的には一切の妥協なくおすすめできる画質に仕上がっています。有機ELを使っている他社さんの画質にも負けていないと思っていますので、ぜひ一度見ていただいて体感してください。
小林氏
まだまだスマホ業界は面白いですよと言いたいです。AQUOS zeroに込めた想いは、モノゴトをゼロベースで見つめれば、当たり前だと思っていることが全然当たり前じゃないよ、ということです。
商品が売れる・売れない以前に、モバイル業界自体がつまらなくなってはおしまいだと思っていて、おこがましいかもしれませんが、シャープは常に新しい競争軸を提示し続けたいと思っています。ぜひショップでAQUOS zeroに触れていただければと思います。
――本日はありがとうございました。
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