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驚きの軽量ハイエンド「AQUOS zero」、バランスを進化させる「AQUOS sense2」――シャープの新たな挑戦とは

 シャープは、フラッグシップのAndroidスマートフォン「AQUOS zero」と、スタンダードモデルの「AQUOS sense2」を発表した。発売時期や価格帯は未定ながら、国内で2018年冬モデルとして近い将来登場する。

シャープの中野氏(中央)、小林氏(中央左)、清水氏(中央右)

 10月3日の記者説明会で、同社パーソナル通信事業部 事業部長の小林 繁氏は、「気迫の2モデル」と新ラインアップを紹介。通信事業本部長の中野吉朗氏は2020年にも、国内Android市場でシェア40%を獲得することを宣言した。

軽さを追求する「AQUOS zero」の挑戦

 ここ最近のハイエンドスマートフォンは、デュアルなど複数のカメラの搭載や、ガラス素材を背面に採用して質感の向上を図り、さまざまなスペックアップを進めている。そうした中で、大画面モデルでは200g前後のものが増えつつある。

 ところが、シャープがこの冬投入する「AQUOS zero」は、重さが約146g。6インチ級のディスプレイを採用する他社モデルよりも軽さを追求するという方向性を打ち出した。小林氏は「スマートフォンを使い込みたいユーザーが、最も重たいスマートフォンを持たなければいけない状況になってきている」と現状を指摘する。

 重量増が進む他社のハイエンドモデルに対して、絶妙のタイミングでカウンターパンチとなるように軽量化を図ったハイエンドの「AQUOS zero」を投入することになったシャープ。「結果的にそうなったのではない」と、狙い通りの戦略と小林氏は胸を張る一方、前例のないハイエンドモデルでの「軽さ」という価値のアピールは、シャープにとっても新たな挑戦と位置づける。

軽さのヒミツ

 AQUOS zeroはなぜ他社よりも数十g軽くできたのか。理由の1つは、有機ELディスプレイの採用だ。液晶ディスプレイでは、バックライトが必要だが、自ら発光する有機ELでは不要になる。つまり薄さや軽さに繋がるというわけだ。

 有機ELディスプレイそのものは、シャープ自身が製造するもの。三重県にある事業所で前半工程、大阪府堺市にある事業所で後半工程を担い、製造しているとのことだが、中野本部長によれば、その実装にあたっては、鴻海の技術力も活かされているという。

 また背面素材には、鉄の5倍の強度というアラミド繊維を採用。具体的には帝人の手がける「テクノーラ」という素材を採用した。最近のハイエンドモデルでは背面に強化ガラスを採用する例はいくつか見られるが、ガラスと比べれば樹脂は軽い。これもまた軽量化を実現する要因だ。

 軽くしようとして堅牢性に悪影響があってはいけない。そこでシャープでは、今回マグネシウム合金を採用して軽量化と堅牢性を両立させた。ただ、マグネシウム合金は加工が難しい金属とのことで、「AQUOS zero」では金属を溶かして金型に流し込む、いわゆる鋳造でボディを製造することで解決した。

 1つの技術だけでブレイクスルーしたのではなく、創意工夫の積み重ねが他社よりも軽いハイエンドスマホに繋がった。その「軽い」という価値が、どの程度、ハイエンドを好むユーザーのこれから受け入れられるのか。シャープでは、今夏登場したデュアルカメラの「AQUOS R2」をカメラや映像にこだわるユーザーに向けた機種として、引き続き供給していく姿勢。2つのフラッグシップシリーズで先端的なユーザーにアピールしていく構えだ。

200万台突破した「sense」、ユーザーが求めるのは「賢さ」と「安心」

 シャープのスマートフォン事業は、2016年にシェアが大きく落ち込んだ。そして2017年、「AQUOS R」の提供を機に、ラインアップを整理して、スマートフォン事業の復活を目指した。同年、生まれた「AQUOS sense」は、登場から1年、国内メーカーとしては、近年異例とも言える規模の200万台という出荷台数を記録した。

 AQUOS senseシリーズは値頃感のある価格帯に、それなりのスペックを詰め込んだ機種という位置づけ。シャープでは「スタンダードモデル」と表現しており、多くのユーザーに受け入れられた結果、人々は「自分にとって必要十分を選びたい“賢さ”」と、「スマートフォン選びに失敗したくない、使いやすい機種を間違いなく選びたい“安心”」という2つを求めていると分析した。

次の進化は「必要十分のアップデート」

 価格が重視されがちな中で、性能面で「安かろう悪かろう」ではいけない。「賢さ」と「安心」を同時に満たす、次なる“sense”はどうあるべきか。ユーザーが考える「必要十分」とは一体どういう製品のことなのか。「AQUOS sense2」担当者の清水寛幸氏は、「必要十分の進化」だという。

清水氏
「必要十分は変化する。時々で定義する必要がある。“2018年の必要十分”を定義して、ユーザーのお役に立っていくスマートフォンを目指す」

 そうした考えのもと、「AQUOS sense2」では、ディスプレイ、カメラ、使いやすさという3つで進化を図ることになった。ディスプレイについては、シャープのアドバンテージとも言える省電力性能や表現力に優れたIGZO液晶ディスプレイを採用。カメラもより大きなイメージセンサーと明るいレンズを装備しつつ、AIモードを取り入れて、手軽に美しい写真を撮影できるようにした。

 使いやすさでは、初めてスマートフォンに乗り換えるユーザーでも慣れ親しめるよう、メニューをわかりやすくしたホームアプリ「かんたんモード」を搭載する。また、手に馴染むサイズやデザインも重要視。アルミバスタブ構造を採用することで、薄さを追求しつつ、堅牢性も確保。OSアップデートやセキュリティの長期サポートをする方針であり、法人にとっても採用しやすい機種となっている、と清水氏は語る。

 液晶でも有機ELでも、機種の特性にあわせて採用するとのことで、「有機ELがハイエンド」「中下位機種は液晶」と決まったわけではないとのこと。ただ今回、有機ELはシャープのスマートフォンとして初めて採用するもので、小林氏によれば、商品化からまだ間もなく、コスト面ではまだこなれていないようで、AQUOS sense2では液晶ディスプレイにしたという。

海外展開にも意欲

 シャープでは今夏、欧州のスマートフォン市場へあらためて参入した。それ以外の地域でも、シャープのブランド力が高い地域への参入を検討しており、今回発表された「AQUOS zero」「AQUOS sense2」もそうした地域での投入の可能性は「非常に高い」(中野本部長)という。

 中野氏は2020年にAndroidでのシェア40%という目標について「シャープは2016年で大きくシェア下げ、2017年に事業を強化し(AQUOS senseの200万台出荷など)現在のポジションがある。今は回復途上。まず最初にAndroidの第一候補になるようブランドイメージを挙げることが核になる」と説明。

 さらに同氏は、台数という面では、AQUOS senseのようなスタンダードゾーンで大きくシェアを取れるチャンスとの認識を示す。個人ユーザーに加えて、「AQUOS sense」では法人での導入が多くあり、そこでもシェア拡大を図りたいと語っていた。