【MWC19 Barcelona】

MWC付随イベントで見かけたユニークな製品たち

 「MWC19 Barcelona」の開催にあわせ、スペイン・バルセロナではいくつかのプレス向けイベントや展示会が開催された。MWCとは異なるテイストのイベントで、MWCの会場では見られないスタートアップによるユニークな展示も多い。ここではスタートアップによる製品を中心に、モバイルや、日本に関係ありそうなものをピックアップしてレポートする。

ShowStoppersの会場

 プレス向けイベントとしては、MWC会期前日の夕方に「ShowStoppers」、MWC初日夜に「MobileFocus」が開催された。これらはMWC非公式の、いわばMWCに便乗するイベントで、MWCに出展できないような小さなメーカーや、MWCに出展しつつプレスへの認知度を高めたいメーカーが出展している。ちなみに毎年1月にラスベガスで開催される総合展示会「CES」でも同様のイベントが開催されているが、CESの方が格段に規模が大きい。

 さらにMWC期間中になると、スタートアップ専門の展示会「4YFN」も開催されていた。こちらはMWCの公式・姉妹イベントのような位置づけで、MWCの入場パスで入ることもできた。6月開催予定の「MWC19 Shanghai」、10月開催予定の「MWC19 Los Angeles」でも「4YFN」は開催予定だ。

 4YFNの展示会場はそれほど広くないが、それなりの数のスタートアップが出展している。「スタートアップ」というテーマしか縛りがないので、MWCの姉妹イベントながら、モバイルに関係するような展示はごく一部で、さまざまなハードウェアやサービス、ソリューション、スタートアップ支援団体が出展している。

4YFNの会場。ホール自体は広いが、展示ブースの場所はそれほど広く取られていない

JETROの日本パビリオンには20社が出展

 今回の4YFNでは、日本のJETRO(日本貿易振興機構)が多数の日本のスタートアップ企業を引き連れ、日本パビリオンを形成している。昨年の4YFNでも日本パビリオンは存在したが、そちらは民間主導のものだった。4YFNではこうしたパビリオンが一般的、というかほとんどが国や地方、スタートアップ支援団体によるパビリオンになっている。

JETROパビリオン。このサイズの10社が展示する島が2つある

 4YFNの日本パビリオンに出展した企業の一部は、プレス向けイベントのShowStoppersにも出展していた。ShowStopper自体、30個ほどしかブースのない小さなイベントなのだが、日本から10以上の企業が出展していて、この手のイベントとしては珍しく、日本企業の存在感が大きい状態になっていた。

 4YFNの日本パビリオンの展示内容はさまざまだ。以下ではその一部をピックアップする。

Kotozna Chat

 Kotoznaはチャット翻訳サービス「Kotozna Chat」を展示している。こちらはLINEやFacebook Messenger、WeChat、Kakao Talkの内容を自動翻訳するというサービス。Kotoznaのアカウントを中継し、たとえばLINE・WeChatなど異なるサービス間でも、自動翻訳してくれる。すでにサービスは開始しており、Kotoznaのアカウントをフォローするだけで利用できる。

Kotozna Chat。何語だかわからない言語も翻訳されている

ウェアラブル向け小型Bluetoothデバイス

 Vanguard Industriesは近日中にクラウドファンディングプロジェクトを開始予定のウェアラブル向けの小型Bluetoothデバイスを展示している。同社は、技術やパテント、アイディアを持っているが商用展開できないでいる企業などからライセンスを受け、製品を作って商用展開するという事業を行なっており、すでに複数のプロジェクトで実績もある。

Vangurd IndstriesのBluetoothデバイス

アクアビットスパイラルズ

 アクアビットスパイラルズは、昨年の民間主導の日本パビリオンにも出展していた、数少ない連続出展企業となる。こちらはNFCタグを使い、その場にいないと使えないコンテンツやURLを提供するというソリューション。昨年は神宮球場のプロ野球の試合で一部シートにNFCとQRコードを貼り付け、スマホでビールの売り子を呼び出すという実験を行なったという。座席ごとにユニークなNFC/QRコードとすることで、GPSの位置情報では不可能な、座席単位でのデリバリーが可能というわけだ。しかしQRコードの場合、容易にコピーできてしまうので、コピーが困難なNFCでの提供が好ましいという。

アクアビットスパイラルズの展示。NFCタグがそこかしこに貼ってある

Pubcen

 Pubcenは同社が開発中の複数のクラウドサービスやSNSを集約するサービスを展示している。これはユーザーの持つGoogleフォトやFacebook、GoogleカレンダーなどのWebサービス上のデータを統合し、過去に行った旅行やイベントなどの出来事を見やすくまとめるというもの。ただし、GoogleフォトやFacebook上の写真データをコピーしてしまうと、それらのサービスからのデータ盗用になってしまうので、Pubcenはそれらのリンクだけを収集する。

Pubcenのサービスイメージ

テクノラボ

 テクノラボは小型機器のプラスチック筐体ケースを作る企業。テクノラボ自体がスタートアップというわけではなく、スタートアップが製品を作るときにケース作りを請け負いますよ、というスタートアップ向けのアピールという意味での出展だ。モバイルルータくらいの金型ならば25万円で作れるとのこと(同社の設計や手直しを必要とする場合は追加料金がかかる)。

アルミの金型を使っている。削り出しは中国で行なうが、設計と射出成形は国内で行なう

スマホに繋ぐARグラスやノートPCなどユニークな製品たち

nreal

 中国のスタートアップのnrealは、ARグラスの「nreal light」をMobileFocusで展示していた。グラス部単体で完結する製品ではなく、有線でスマートデバイスと繋ぐ必要がある。Snapdragon 845を搭載したスマートデバイスも用意されているのが、Snapdragon 855搭載のスマートフォンであれば何にでも接続できるとのこと。Snapdragonプロセッサの採用事例としてMWCのクアルコムブースでもデモ展示がなされていた。

 クアルコムブースで体験したところ、映像表示の視野角が比較的広く、3DCGキャラクタもしっかりと描写できていた。透過型ディスプレイを両目に搭載しているが、光学系はそこまで薄型化されていないので、よく見ると目とレンズの間隔がやや広いかな、というデザインになっている。外部にビーコンやセンサーの設置を必要としないが、3軸の回転に加え3方向の移動の合計6自由度の空間認識ができる。有線接続が必要とは言え、接続先はバッテリで駆動するスマートデバイスなので、使い勝手は単体動作するVR/ARゴーグルに近い。

nreal light。一見するとほぼほぼサングラス

Mirabook

 4YFNに展示されていた「Mirabook」は、スマホのPC風デスクトップ機能を利用するためのノートPC型ディスプレイ・キーボード。サムスンのDeXやファーウェイのPCモードなどに対応する。2017年にクラウドファンディングプロジェクトを成功させ、開発されていたが、ようやく完成が近づき、現在では一般販売の予約受け付けも開始している。価格は299ドル。

Mirabook。見た目はほぼほぼノートパソコン

Xpik

「Xpik」は画像を使ったコミュニケーションアプリ。言語の関係なく多くの文化圏で通じる画像やアイコンを用い、たとえば「ハンバーガーはチーズありオニオン抜き」のようなことを伝える。翻訳アプリのように言語の通じない場所での旅行などでのコミュニケーションに利用する。Android/iOSのアプリストアで配信中。

Xpikのイメージ画面。すごい原始的なアイディアなのに、身振り手振りよりは伝わりやすそうだし、翻訳アプリより確実な感じもする

Cosmo Communicator

 このほかにも、本家・MWCでもいくつかのスタートアップ出身メーカーが出展している。

 タッチタイピング出来るフルキーボードスマホ「Gemini PDA」を手がけるPlanet Computersは、クラウドファンディングから開発中の新モデル「Cosmo Communicator」を展示している。こちらは1月のCESから内容にアップデートはないとのこと。

Cosmo Communicator。Gemini PDAに比べ、通話などより通常のスマホに近い使い方が重視されている

 一方、MWCの3日目に、姉妹企業であるDynamicalが「Paymo」を発表し、クラウドファンディングを開始している。Paymoは各種モバイル決済やSuicaなどの交通系決済機能を重視した小型軽量な4Gスマートフォン。ただしPlanet ComputersブースにはPaymoのパンフレットだけはあったものの、残念ながら開発実機やモックアップはなかった。12月出荷予定で、早期出資価格は229ドルから。

Travis Touch Plus

 翻訳デバイスのTravisは最新モデルの「Travis Touch Plus」を展示している。機能面ではアップデートを継続していて、初代モデルになかった新機能としては、言語学習に使う「Travis Teacher」や会話のログを残す「Travis Business」といった有料追加サービスも提供している。さらに翻訳内容をパソコンのWebブラウザに字幕風に表示するTravis Businessの新機能やボタン操作を不要とする会話モードも開発中。

 なおTravisの第1世代モデルは日本ではソースネクストが協業し、「ポケトーク」として販売していたが、ポケトークの第2世代はソースネクストの独自開発となり、現時点でTravis Touch Plusは日本の無線技術適合(技適)を取得していない。日本でのパートナーを探している段階とのことだが、日本の一般ユーザーは海外でしか使わないというユースケースも想定されるデバイスでもある。ちなみに日本への出荷は可能で、日本語UIを搭載し、日本語のマニュアルも公式Webサイトに用意されている。

Travis Touch Plus
開発中の字幕機能