【MWC19 Barcelona】

折りたたみスマホ「Mate X」の狙いを語る

ファーウェイ、リチャード・ユーCEO

 MWC19 Barcelonaの会期前日に、5G対応の折りたたみ型スマートフォンの「HUAWEI Mate X」を発表したファーウェイ。同社の端末部門にあたるコンシューマー・ビジネス・グループを率いるのが、CEOのリチャード・ユー氏だ。MWCの会期初日には、同氏が報道陣からの質問に答え、Mate X投入の狙いや目標を語った。

 また、ユー氏は3月に発表する「P30シリーズ」の特徴も、先行して紹介した。主な一問一答は次のとおりだ。

ファーウェイのコンシューマー・ビジネス・グループCEO、リチャード・ユー氏

――まずは、Mate Xの狙いや、なぜこの時期だったのかを教えてください。

ユー氏
 間もなく5Gの時代がやってくるからです。4Gのときと同じような端末だと、消費者も購買意欲が高まりません。弊社としては、新しいデザインで消費者の目を引き、買いたいと思うような新たらしい体験ができる端末を作りたいと考えています。Mate Xは、発売前にしっかりテストし、6月には発売したいと思います。

――新しい体験とは、たとえばどのようなことでしょうか。

ユー氏
 5Gは通信速度が上がり、ハイビジョンのコンテンツをより手軽に楽しめるようになります。大画面だと、その体験価値が上がります。ここに新しい技術を取り入れ、体験を良くしていきたい。人々がスマートフォンを使う時間はどんどん長くなっていますからね。そこには、優れた体験と利便性の高さだけでなく、携帯性も求められます。大画面と両立できれば、パソコンやタブレットに取って代わることもできると思います。

折りたたみ可能なMate X
Mate Xは、ディスプレイが外側に出るように折りたたむ仕様

――他社(サムスン)は内側にディスプレイを折りたたむ仕様ですが、Mate Xは逆にディスプレイが表に出ます。これはなぜでしょう。

ユー氏
 内折りは、デメリットとして本体が分厚くなり、そのぶん重くなります。内折りだと、折りたたんだときのために、ディスプレイが前後に2つ必要になるからです。弊社は外折りにしているので、シームレスに画面が切り替わるだけでなく、他社よりも薄く作ることができました。内折りにするか、外折りにするかは社内でも検討しましたが、(内折りは)効率がよくないということで止めました。このようにした方が、より良い体験ができると考えたからです。

――ただ、価格が2299ユーロ(約29万円)と、スマートフォンとしてはかなり高額です。まずは小規模でスタートするのでしょうか。

ユー氏
 最終的には、非常にたくさん売れると思っています。スマートフォン1台とタブレット1台の2台持ちをしている消費者が、2台分のお金を使えば1台で済むからです。この製品は200万台か、それよりも多く売れるかもしれない。(大量に)量産できれば、価格ももっと抑えることができます。そうなれば、さらに競争力は高くなります。

――Mate Xは5G対応ですが、非対応の地域でも販売するのでしょうか。

ユー氏
 Mate Xには5Gバージョンしかありませんが、4Gでも利用することができます。5Gネットワークのない国では4Gスマートフォンとして使ってもらい、ネットワークがアップグレードされた段階で5Gを使ってもらえばいいと考えています。

――開発で難しかったところはどこでしょうか。

ユー氏
 折りたたむ部分ですね。パネルが何層にもなっていて、開いたときは真っ平になりますが、折り曲げたときにもシームレスな状態になります。パネルには、保護層やディスプレイ層など、いろいろな材質が重なっています。たとえば、紙の束も曲げると端が斜めになってしまいますが、これと同じようになってしまうと使いものになりません。この部分を解決するのが大変でした。

 落下の問題をいかにクリアするかにも、たくさんの技術的な課題をクリアする必要がありました。そのため、開発には3年の時間を費やし、たくさんの特許も取得しています。

いかにきちんと折りたためるかが、苦労した点だという

 ちなみに、アーキテクチャーはベゼルレスで、ディスプレイにはパンチホールを開けたり、ノッチを作ったりもしていません。折りたたんだ状態でも大画面で使えて、片手操作もできます。また、アプリに対して何か設定をする必要もありません。内側に折りたたむスマートフォンだと、それをしなければならない。自分もスマートフォンとタブレットを2台持ちしていましたが、これができてからは、1台で済むようになりました。

――販売は好調で、世界シェアもアップルを抜き、2位に躍り出ました。一方で、米中貿易摩擦が過熱した結果、ネガティブな情報も報じられています。その影響は出ているのでしょうか。

ユー氏
 やはり影響はゼロではありませんが、消費者が我々を信用してくれているので、そこまで大きな影響は出ていません。ただし、事実に反したバッシングがなければ、もっと(ファーウェイ端末に対する)需要は伸びていたと思います。私たちは、これまで通り、製品の品質や安全性、信頼性だけでなく、さらにはプライバシー保護も業界でベストなものにしていきます。

――昨年お話を伺った際には、2~3年でシェア1位になるとおっしゃっていました。その計画に変更は出ていますか。

ユー氏
 計画は変わっていませんし、むしろ前倒しで達成できる見込みもあります。今年の出荷台数は2.5~2.6億台と見ていますが、かなり1位に近いところまで来ています。来年には達成できるかもしれません。

 私がコンシューマー・ビジネス・グループに来てから、すでに8年が経っていますが、この8年間は毎年急成長をキープしてきました。売上も十数倍に増えています。

――現状だとアメリカ市場には入れていませんが、それでも1位になれるというお考えでしょうか。

ユー氏
 はい。もしアメリカ市場に入れればさらに前倒すことができますが、残念なことに今は入れません。実際のところは、アメリカの通信事業者や消費者からも好評を博していますが……。ただ、アメリカはスマートフォンのハイエンドモデルでは、一番大きな市場です。アメリカ抜きで世界一になるのは、非常に難しいことです。

3月26日(現地時間)には、フランス・パリでP30シリーズが発表される

――3月の発表会をすでに予告していますが、ここではどのようなモデルが発表されるのでしょうか。

ユー氏
 P30シリーズを発表する予定です。この端末は、カメラ技術に非常に大きなブレークスルーがあります。革新的で、最新のライカレンズを搭載しているのも特徴です。形はこれまでのスマートフォンと同じで、フォルダブルではありませんが、消費者が手軽に買える価格になるでしょう。

 2つ目の特徴はバッテリー駆動時間で、充電速度も大きく向上しています。さらに3つ目がパフォーマンスで、ゲームをするときなど、色々な場面で大きくパフォーマンスが上がるようになっています。4つ目はデザインですね。見た目がさらにスタイリッシュになっているので、ぜひ注目していただければと思います。

――Pシリーズ、Mateシリーズでは継続的にカメラを強化していますが、目標は一眼レフを超えることでしょうか。

ユー氏
 今の一眼レフカメラは1つのレンズしか使えません。複数のレンズを使うことで、一眼レフと同等、もしくはそれを超えるほどの撮影効果が出せるようになることを目指しています。すでにコンパクトカメラに取って代わることはできましたが、次の目標は一眼レフです。今でも暗所撮影では超えることができたと思っていますが、次の一歩はズームです。これも一眼レフを超えていきたい。パリでの発表会をご期待ください。

――本日はありがとうございました。