【MWC19 Barcelona】

「2019年の日本のスマートフォン市場は歴史的な転換点になる」、ファーウェイ呉波氏インタビュー

 「MWC19 Barcelona」開幕前日の2月24日に、5G対応折りたたみスマートフォン「Mate X」やモバイルノートパソコン「MateBook X Pro」などを発表したファーウェイ。これらの製品の日本市場への投入などについて、ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏に話をうかがった。

折りたたみスマートフォン「Mate X」を持つ呉波氏

――今回発表された製品の中でも、5G対応折りたたみスマートフォン「Mate X」はたいへん反響が大きいと思いますが、率直に日本市場への投入の可能性はあるのでしょうか?

呉波氏
 今のところ、日本市場での販売計画を作成中の段階で、今回発表された製品の内、どの製品が日本で販売されるのかは決まっていません。近々、パソコンの製品発表会を日本で開催しますので、そちらは楽しみに待っていてください。

――日本市場に限った話ではありませんが、逆風が吹く中で、これまでとは違う方法で売っていかなければならない状況に見えます。なかでも、これから市場を拡大していこうとするパソコンについて、どのような販売戦略をお持ちでしょうか。

呉波氏
 弊社は、日本のパソコン市場では主に一般消費者向けに販売しています。法人向けについては3年前から準備を始めていて、組織やパートナー企業などの体制も整ってきたので、徐々にビジネスを進めていきたいと考えています。ただし、2019年については一般消費者向けの販売の方がメインになると思います。

 スマートフォンではまずオープンな市場に販売し、消費者に認めてもらった上で、各携帯電話会社に採用されるようになりました。パソコンも同じように、まずは一般消費者に向けた販売をして足場を固めていきたいと思います。

――スマートフォン販売については今年、総務省が完全分離を導入しようとしています。また、秋には楽天が携帯電話事業に参入します。ファーウェイとしてはどのように取り組んでいくのでしょうか?

呉波氏
 2019年は日本のスマートフォン市場、モバイル市場の歴史的な転換点になると思います。おそらく歴史的な一年になることは間違いないでしょう。

 2019年の日本市場で起こり得る変化は、フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行したときと同じくらいのインパクトになると予想しています。転換点になる時期だからこそ、ファーウェイにも新しいチャンスがあると思います。

 もちろん、ファーウェイだけでなく、他社もさまざまな取り組みをスタートしてくるはずですが、私たちは消費者のみなさんの信頼をしっかりと勝ち取れるように取り組んでいきます。

 販売に関連する市場の大きな変革は、他の国と地域でも同じように起きてきました。ファーウェイは世界の170の国と地域でビジネスを展開していますから、そういった大きな変革を何度も経験してきた実績があります。

 おそらく、日本はこうした変革がまだ起きてない最後の国と地域のひとつだと思います。これまでにグローバル市場で培ってきたノウハウを活かし、消費者に向けた重要な指標のひとつであるNPS(Net Promoter Score、企業やブランドに対する愛着やロイヤルティを図る指標)を向上させられるように、日本市場の変革に対応していきたいと思います。

Mate X

――各携帯電話会社がスマートフォンを扱う場合は、店頭で実機を試すことができますが、オープン市場で販売されるSIMフリースマートフォンは試用できる場所が限られています。今後、Mate Xのようなスマートフォンを国内市場に展開する場合、どのように消費者が製品に触れる機会を増やしていくのでしょうか。

呉波氏
 これまでも、家電量販店にコーナーを開設するなど、いろいろな形でお客様が製品に触れる機会を作ってきましたが、これからもそういう機会を増やしていきたいと考えています。

 Mate Xについてはまだ具体的な計画を申し上げることはできませんが、5G対応のスマートフォンですから、もし日本で販売するのであれば、日本の各携帯電話会社のネットワークや開設計画に合わせて調整する必要があります。ところが、日本ではまだ5Gの周波数帯域の割り当てが決まっていないので調整ができません。

 ファーウェイの新製品はこれまでも日本市場向けに展開してきましたから、もちろん日本でも販売したいと考えていますが、日本の5Gネットワークの計画を進めてもらう必要があります。

 ちなみに、5Gの標準化された規格には「NSA(ノンスタンドアローン)」と「SA(スタンドアローン)」という2つのモードがあります。NSAは既存の4Gネットワークと併用するモードで、米国と日本が採用しています。SAは5Gネットワークのみを利用するモードで、他の国が採用しています。

 実は、NSAからSAへアップグレードできるスマートフォンは、今のところファーウェイ製品のみで、他社製品はおそらく2019年中は対応できないと思います。

 もし、5GネットワークがNSAからSAにアップグレードしたとき、端末側が対応できなければ使えなくなってしまいますが、Mate Xは発表会のプレゼンテーションでもご説明したように、アップグレードが可能な仕様となっています。その意味でもMate Xは注目を集めています。

MateBook X Pro

――ファーウェイのブランドはスマートフォンで知られる一方、ここ数カ月、報道などで違った形で伝わった印象もあります。これからパソコンを販売していくうえで、これまでと違った販売戦略が必要になるのではないでしょうか。

呉波氏
 パソコンについては製品そのものの魅力と同じように、ブランドが非常に大切だと言われています。これまでファーウェイはパソコンについて、それほど積極的にブランドの浸透を図ってきませんでした。

 あくまで、クチコミによる評価が拡がっていくことが大切だと考えています。一度製品を使っていただき、製品の良さを知ってもらうことが大事です。

 パソコンはライフサイクルが長く、買い換えが頻繁ではありませんから、きちんと製品の良さを認識してもらうことが重要です。パソコン市場でシェアを獲得するために、低価格で製品を売っていくのではなく、ステップ・バイ・ステップで市場に浸透を図っていきたいと考えています。

 一見、時間がかかるように見えるかもしれませんが、もっとも確実な方法だと考えています。ちなみに、今回発表されたMateBook X Proはすでにアメリカやヨーロッパのメディアで、MacBook Proを超えたと報じられています。

――日本でパソコンを売る上で、何か難しいと感じたことはありますか?

呉波氏
 パソコンの日本市場での売れ行きについては、残念ながら、まだまだ満足できるレベルにありません。

 しかし、販売数については前年比で何倍にも増えていますし、SNSなどでもユーザーのみなさんから高い評価をいただいています。メディアからも注目されていて、オーディオビジュアルの賞などもいただきました。各方面で良いクチコミ評価が蓄積されてきたと見ています。

 こうした評価は、販路を拡大したから得られたというわけではありませんが、今年は重点的に取扱店舗を広げていきたいと考えています。クチコミ評価も大切ですが、実際に店頭で触っていただいて、選んでいただけるように注力していきたいと思います。

――今年1月のCESではMateBook 13、今回の発表会では、MateBook X ProとMateBook 14を発表しました。モバイルノートパソコンは日本市場でニーズが高いと言われていますが、これらの製品で日本市場からの要望が強かったものはありますか?

呉波氏
 消費者のみなさんからの要望を取り入れることは、実はファーウェイの中でプロセス化されています。日本だけでなく、イタリアやアメリカなど、さまざまな国と地域から同様の要望が出てくることもあるので、どの部分が日本市場のニーズに応えたと限定的には言えませんが、しっかりとお客様のニーズに応えるように製品を開発して、市場に送り出すようにしています。

――日本市場での売れ筋は15インチクラスのノートパソコンですが、こうしたジャンルの製品に取り組むお考えはありますか?

呉波氏
 そういったニーズがあることはしっかりと認識しています。パソコンの新製品を発表するタイミングは年に一度ではないので、乞うご期待と言っておきましょう(笑)。

――MateBookシリーズは元々、2in1スタイルのPCとしてスタートしましたが、今回の製品はいずれもクラムシェルです。スタイルを変化させてきたのはなぜでしょうか?

呉波氏
 一方、2in1スタイルのものはWindows以外のOSを搭載する製品が売れていて、年に700万から800万台が売れています。これに対し、Windowsを搭載した2in1パソコンは年間100万台程度に留まっています。こうした分布はグローバル市場の動向にも似ています。

 2in1スタイルの製品については、これからも新製品を投入していきたいと考えています。ハードウェアとソフトウェアの両面で革新的な進化が求められており、最新の技術の進化の状況を見ていると、年内にさまざまなメーカーから2in1スタイルの製品が多数登場するのではないかと予想しています。2019年は2in1スタイルの製品においても、面白い一年になるかもしれません。

――まさか、折れ曲がったりしませんよね?

呉波氏
 それも革新的な要素のひとつですよね(笑)。元々、2in1スタイルの製品はモバイルのニーズに適していると思います。

 パソコンというジャンルではなく、スマートデバイスという大きなカテゴリーで見ると、今回のMate Xも2in1スタイルの製品のひとつと言えますよね。

――ノートパソコンの軽量化はどのようにお考えでしょうか?

呉波氏
 消費者のニーズがあることはよく承知しています。ノートパソコンにはいろいろな製品がありますが、同じスペックで比較した場合、ほぼ最軽量に近いレベルを実現していると思います。ユーザーインターフェイスとユーザー体験を総合的に見ながら判断していきたいと思います。

 たとえば、ノートパソコンの中にも高速なゲーミングノートというジャンルがありますが、これはモバイルの用途にはマッチしませんよね。しかし、モバイル製品としても性能には飽くなき追求が必要です。もしユーザーが遅いと感じてしまったら、将来的に使ってもらえなくなってしまいます。

――ファーウェイはスマートフォンとノートパソコンの両方を手がけ、チップセットも自社グループ内で開発しています。現在、ARMを採用したWindowsパソコンの動きが見えてきていますが、御社として、Kirinシリーズを搭載する可能性は考えておられるのでしょうか?

呉波氏
 その件についてはコメントができません。ただ、そういった製品(WoA製品)はすでに世の中にある共通の技術をベースにして開発されていますから、新しい市場が生まれるかもしれませんね。

MateBook X Proのタッチパッドの右側に対応スマートフォンを置くと、Huawei Shareによる連携機能が利用できる

――今回のMateBook X Proでは「Huawei Share」を利用して、スマートフォンと連携を実現しています。この機能はファーウェイ製スマートフォンのみで利用できるのでしょうか?

呉波氏
 ファーウェイ製スマートフォンには「Phone Clone」というアプリが用意されています。このアプリは、他機種からファーウェイのスマートフォンに移行したユーザーが、連絡先などの情報を簡単に移すためのものです。

 Phone Cloneは「Huawei Share」のしくみを利用しており、BluetoothとWi-Fiを使って高速にデータを転送できるようにしています。つまり、すでにHuawei Shareと同じ技術をベースにしたものが他のスマートフォンでも動作していることになります。

 このため、技術的には他のスマートフォンでも動作させることが可能だと思いますが、現時点ではアプリが配信されていないので、他社製品では利用できないことになります。

――今日はありがとうございました。