【CES 2020】
5G時代へ向かう京セラの意気込み「自らの存在価値を競争力へ」
2020年1月10日 12:34
CESの注目度が年々増す中、日本企業の初出展も増えるようになった。京セラも、そんな企業の1社。同社は日本でauを中心にスマートフォンを提供しているほか、北米事業も注力。かつてはプリペイドケータイで高いシェアを誇っていた。一方で、同社はその方針を転換しており、現在は日本と同じ「TORQUE」ブランドを冠したタフネススマートフォンを法人市場中心に展開している。
初出展となるCESでは、5Gに対応したタフネススマートフォンやタフネスタブレット、Wi-Fiルーターのコンセプトモデルを出展。残念ながら実機ではなく、あくまでイメージを伝えるための参考展示にとどまっていたが、同社によると、2020年には米国に5Gスマートフォンを投入する計画があるという。日本でも、5Gの商用化をにらみ、端末の開発を進めている。
CES 2020では、京セラで通信端末事業を統括する取締役常務執行役員 通信機器事業本部長の厳島圭司氏と、米国子会社のKyocera Internationalで通信を担当するバイスプレジデントの飯野晃氏が、報道陣からの質問に答えた。
――5Gに向けて、突然にやる気を出してきたように見えますが、何があったのでしょうか。
厳島氏
当初は何ができるのか、ユース―ケースをよく調査し、そのユースケースに向けてしっかりとしたものを作りたいと考えていました。ただ、お客様と色々なお話をする中で分かったのですが、北米も日本も、先に5Gありきで商品やネットワークを作り、その中からユースケースはお客様が考えるという方向に舵を切りつつあります。政府も5Gへの投資を促す方向に変わってきたので、タイミングとして遅れないようにしていきたいと考えています。
まずはモノ作りとして、開発側の競争力をきちんと再構築する。これが土台です。それを再構築した状態で、誰に向かってどんな商品を、どのようなメッセージで届けるのかということを整理してきました。単純に、いろいろな製品をキャリアさんに採用いただき、売れればいいというのではありません。京セラがスマートフォンを作り、届ける意義は何かをよく見て、それによって存在価値を定義する。それが、競争力になります。
北米では、ラグドフォンを展開し、警察や消防、運輸、建設など、ハードワークな人に必要な端末へフォーカスし、きちんと販売していただけるキャリアさんを選択してお付き合いするようにしています。結果として、規模は小さくなりましたが、きちんと意味づけをするという方向に切り替えています。
――北米では5Gがすでに始まっていますが、温度感のようなものはいかがですか。
飯野氏
まだまだで、2020年になった今年が本格的な元年といったところで、キャリアさんもそういう位置づけで力を入れています。我々も、それに乗り遅れないよう、力を入れているところです。
厳島氏
端末は少なくとも2年、長い人だと3年、4年、5年と使うものです。今時点で何が使えるのかということだけでなく、将来への期待も含めて買われます。「どうせ買うなら5G」という購入の仕方ですね。販売側も、そういう方向で需要を喚起しています。「何に使えるのか?」「通信環境は完全か?」という前に、通信端末が先行して進んでいくことになると思います。
――日本は、端末購入補助の規制も入りましたが、大丈夫でしょうか。
厳島氏
総務省にも、その辺の産業振興を意識して動いていただけるとうれしいですね。韓国などでは、5G端末が想定以上に売れていますから。
――CESでもタフネス系の5Gスマートフォンのコンセプトモデルを出展しています。この分野にも、5Gは求められるのでしょうか。
厳島氏
すべてを5Gに切り替えていきたいという販売側の意向も強くあります。法人向けだから頑丈であれば4Gでいい、というふうにはなりません。ラインを5Gで整える意向は強くあります。もちろん、ものすごく低価格なスマートフォンまですべて5Gにするかというと、それは別の話ですが、ある程度のラインまでは5G化を準備しています。ボリュームが増えていけば、作り手側のコストも下がっていきます。
――現時点ではコンセプトモデルで動作するものが展示されていませんが、商用化はいつ頃になるのでしょうか。
厳島氏
北米では、今年中を考えていて、日本での展開も検討しています。5Gのプラットフォームが完成するので、その水平展開をしていきます。まずはルーターとスマートフォン、2つのプラットフォームを今年中に完成させ、それをベースに準備していきます。
――日本の商用化に合わせて、来月いきなり発表されたりすることもあるのでしょうか。
厳島氏
お客様との関係もあるので、時期やID(インダストリアル・デザイン)を公開することはまだ控えたいと思っています。
――少なくとも今年中ということは、CESで展示していないだけで、すでに実機もあるということでしょうか。
厳島氏
スマートフォンの場合、チップセットのリリースタイミングがあり、最上位のグレードのものから順に出てきます。まだほかのメーカーから出ていないものを使うため、そのタイミングとも関係があります。いつチップセットがリリースされ、設計するのか。製品設計をしたあと、キャリアの認証(IOT)も必要になります。
――TORQUEについてはコンシューマーモデルですが、これが今後変わってくるのでしょうか。
厳島氏
TORQUEもどちらかと言うとコンシューマー向けで、今まではその製品を法人にも併売していました。ただ、最近の法人はスマートフォンで自分たちのビジネスをどう改善できるのかという方向に向かっているので、やはりソリューションが必要です。必要なカスタマイズをして製品をお売りだいただき、そのあとの保守やサポートを契約する。ここには、ジャパンメイドという信用も提供できると考えています。
これは北米もそうで、法人の最適な設計は、コンシューマーとはずれています。そのため、今後は法人にきちんとフォーカスして、いちばんいい製品を開発していく。もちろん、製品の軸はコンシューマーなので、そこは外せませんが。
――中国メーカーの低価格なモデルと、どう戦っていくのでしょうか。
厳島氏
価格優先のモデルは中国製のものが増えていますが、値段での勝負はしていません。逆に言えば、そこに意味づけが必要になります。意味がなく、値段だけとなると客観的に見ても厳しくなりますからね。
――分離プランが徹底されると、キャリアがリスクを取らず、個性的な端末を導入しづらくなるという声もあります。
厳島氏
端末は競争領域ではない、そもそも通信料金も競争領域ではないという論調までありますが、そうなればなるほど、差別化は難しくなってきます。我々は、できるだけキャリアさんと一緒に、ハードウェアを含めた意味づけをしていきたい。ソリューションやアプリケーションがあっても、色々なサービスの真ん中にハードウェアがないと、簡単に真似されやすい。ハードウェアとの連携は取っていきたいですね。ちなみに、アメリカに関して言えば、キャリアさんもまだ特徴のあるものを出したいという要望は、強くお持ちです。
――北米市場では、もうあまりプリペイドは提供しないのでしょうか。
厳島氏
もともとはプリペイドが主力で、売上も段違いに大きかったのですが、プリペイドケータイでは将来が作れません。そのため、ポジションづくりを頑張ってきました。そのおかげもあり、ラグド系のスマートフォンではシェア1位です。
――この分野では競合はどういったところになるのでしょうか。
飯野氏
Sonimに、サムスンも一部出しています。あとはCATブランドのスマートフォンも競合ですね。
――その中で1位ということですが、何が要因なのでしょうか。
飯野氏
何で競争力をつけてきたかというと、やはり品質です。1つにはハードウェアやソフトウェアの品質がありますが、もう1つは仕事品質です。問題が起こったときの対応や、開発過程でのキャリアさんへの対応、こういったところに信頼をいただいています。プリペイドだと何かあったら捨てて終わりになってしまいますが、仕事で使っている端末だと、業務が止まってしまいますからね。
――本日はどうもありがとうございました。