【CES 2017】

クアルコム、VR性能が大幅向上した「Snapdragon 835」の詳細を発表

 1月5日(現地時間)に開幕する「CES 2017」に先駆け、クアルコムが1月3日(現地時間)に記者会見を開催。最新のハイエンドチップセット「Snapdragon 835」や、IoT、コネクティッドカーに対する取り組みを発表した。

詳細が発表された「Snapdragon 835」と、それを搭載したリファレンス端末

バッテリー駆動時間向上で、VR体験もリッチになった「Snapdragon 835」

 「Snapdragon 835」は、モバイル向けとして初めて10nmプロセスで製造されたチップセット。「端末を大きくする必要なく、より効率的でバッテリーの持ちもよくできる(SVP、Product Management、Keith Kressin氏)。機械学習もサポートしており、CPU、GPU、DSPなどに利用されるという。出荷は2017年前半を予定する。

左が「Snapdragon 835」。「Snapdragon 820」よりコンパクトになっている
モバイル向けチップセットとして初となる10nmプロセス
クアルコムのKressin氏

 記者会見では、「電池寿命」「没入感」「撮影」「接続性」「セキュリティ」という5つの観点から「Snapdragon 835」の特徴が解説された。まず電池寿命に関しては、「Snapdragon 820/821と比べて、25%消費電力を削減している」(Kressin氏)という。急速充電技術の「Quick Charge 4」にも対応しており、5分間の充電で、5時間、通話できる。

記者会見では、5つの観点から「Snapdragon 835」の特徴が紹介された
省電力性はSnapdragon 820比でも改善されている

 没入感は、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などでの体験が向上することを意味している。は25%高速になったGPUの「Adreno 540」で「よりよいビジュアル体験を提供できる」(同氏)だけでなく、3Dオーディオもサポート。より遅延を少なくして、“6自由度”(6 Degree Of Freedom)にも対応している。これらの結果、ARやVRでより没入感を得ることができる。また、撮影に関しては「Qualcomm Spectra 180 ISP」をサポート。最大32メガピクセルで30fpsの動画撮影に対応しているほか、光学ズームや手振れ補正なども利用可能だ。

VRでの体験も向上する
撮影機能にも力を入れている

 「Snapdragon 835」のモデムは、「Snapdragon X16 LTE」となり、これはLTEの「カテゴリー16」をサポートする。Snapdragon X16 LTEは2016年2月に開催された「Mobile World Congeress 2016」で発表されたモデム(※関連記事)で、4波のキャリアグリゲーションや256QAM、4×4 MIMOに対応。最大速度は下りで1Gbpsとなる。顔認証、光彩認証、音声認証と幅広い生体認証に対応するのが特徴となる。

モデムには1Gbps通信に対応した「Snapdragon X16 LTE」を採用
幅広い生体認証に対応
スマートフォン以外のデバイスにも採用される予定

 クアルコムによると、Snapdragon 835はスマートフォン以外への採用も計画されているという。「スタンドアローンのVR、AR、MR」(Kressin氏)がその1つで、スマートフォンを装着したり、パソコンに繋いだりせずとも、ヘッドマウントディスプレイ単体でVRなどを楽しめるデバイスもターゲット。またAndroidだけでなくWindows 10もサポートしており、パソコンやタブレットにも採用が広がっていく見込みだ。

スマートホーム、ウェアラブル、コネクティッドカーに広がるSnapdragon

IoT関連の状況を紹介するTalluri氏

 記者会見では、IoTやコネクティッドカーへの取り組みも紹介された。IoTに関しては、クアルコムの実績をSVP QCT Product ManagementのRaj Talluri氏が紹介。Talluri氏によると、クアルコム製品を採用した各種IoT製品は1億を超えるといい、CESでも新製品がリリースされる予定だ。

 その1つが、ODG社のスマートグラス「R-8 AR/VR」で、この製品はSnapdragon 835を採用。音声でコントロール可能なスマートホームアシスタントの「Mattel Aristotle for kids」にもクアルコムのチップが搭載された。

スマートグラスの「R8 AR/VR」
スマートホーム用デバイスにもクアルコムのチップが搭載される
スワロフスキーのスマートウォッチは、「BASELWORLD 2017」で発表される予定

 IoTのなかでも、スマートウォッチはクアルコムのシェアが高い。Talluri氏によると、80%以上のAndroid WearがSnapdragonを採用しているという。IT系企業だけでなく、フォッシルやタグ・ホイヤーなどのファッション系企業にも広がりを見せている。新製品をリリースする企業として名前が挙げられたのが、スワロフスキー。ただし、記者会見では具体的な製品への言及はなく、その発表が世界最大の時計見本市「BASELWORLD 2017」で行われることのみが明かされた。

 コネクティッドカーの分野では、1GbpsのLTEをサポートするSnapdragon X16 LTEを車載向けに応用していく取り組みを披露。フォルクスワーゲンの車に、車載向けのチップセット「Snapdragon 820A」やモデムチップの「Snapdragon X12/X5 LTE」が搭載されることも発表された。

コネクティッドカーの分野では、モデムや、採用するメーカーが紹介された

石野 純也