ケータイソリューション探訪

トータルコストとPBX連携で勝負するウィルコム


 24時間の通話定額をいち早く実現したウィルコム。法人市場でもコストパフォーマンスの高さを売りとしている。企業が設備投資に対してシビアになるなか、低コストな端末として投入されたのが「WX330J E」と「WX330J-Z E」だ。ウィルコム プロダクト開発部端末開発グループ課長補佐の瀬山浩樹氏とアライアンス営業部 パートナー営業3グループ グループリーダーの山本一滋氏に、これらの端末投入の狙いを聞いた。

 WX330J(左)とWX330J E(右)

――「WX330J E」と「WX330J-Z E」のラインナップについて、端末のコンセプトを教えてください。

瀬山氏
 2008年11月に発売されたWX330Jの兄弟機種として企画しました。見た目が違うだけでなく、機能としては防水機能を外したというのが特徴になります。

 防水機能は、故障が少なくなるというメリットがある一方で、端末が大きくなる、端末の価格が上がるという側面もありました。法人に導入しやすいようにと端末コストを安価にすることを重視したモデルです。

――実際、どれくらい端末コストが安いものなのですか。

瀬山氏
 残念ながら具体的な金額は言えません。しかし、企業が何千台も導入するとなると、1台で百円単位のコストも、かなりの金額になります。いかにコストを削減するかが重要で、そこに高い需要があると言えます。

――ほかにどんな特徴がありますか。

瀬山氏
 前モデルで人気と言うこともあり、ストレートという形状を継承しました。また重量も94gから80gに軽量化しています。デザイン的に観るとWX330Jは防水のため、パッキン処理が必要で、どうしても本体の中央にキーが集まってしまいます。WX330J EとWX330J-Z Eではその必要がないため、キーの配置を広めにとり、キーも大きくしています。さらにキーの中央部を盛り上げることで使いやすさにも配慮しました。

――セキュリティ面ではどうでしょう。

瀬山氏
 法人向けということもあり、パスワード入力できる文字を数字だけでなく、#と*を追加したことでセキュリティレベルは、これまでの1億通りから、約4億3000万通りに高まっています。端末自身にも管理者ロック機能がありますが、さらに『ビジネス安心サービス』を組み合わせることで、ウェブやメールの制限が管理者のパソコンから設定できるようになっています。

――防水機能を持つWX330Jはどういった企業に導入されていたのでしょうか。

山本氏
 事業所の子機として使われ、特に水仕事の多い場所や病院などでの需要が多いですね。

瀬山氏
 現状、ナースコールとして、病院でPBX連携するPHS端末は日本にこれしかない状態なので、そういった意味では病院での引き合いは特に多いです。

 ウィルコム プロダクト開発部端末開発グループ課長補佐の瀬山浩樹氏(左)とアライアンス営業部 パートナー営業3グループ グループリーダーの山本一滋氏(右)

――法人向け端末の取材をしていると、PBXと連携する構内PHS端末の需要が堅調だという話を聞きます。実際に需要は多いのでしょうか。

山本氏
 一時期、無線LANによるIP電話という世界観が描かれていましたが、実際はまだまだPHSが根強い状態です。PBXとの連携の使い勝手や構築の仕方、エリア設定などに実績があるのが大きいです。ウィルコムとしてはWX330Jのようなシリーズを継続的に投入し、各社のPBXの配下で安定して動くというのが売りとなっています。

――御社ではPHS間の通話は無料にしていますが、それでもPBXとの連携は必要なのでしょうか。

山本氏
 確かに070間の通話は定額なので、それだけでいいじゃないかという話もあります。しかし、PBXは保留転送や固定電話との接続など、さまざまな機能を持っています。PBXをオフィスの中でどのように使えるかが重要になっているのです。むしろ、W-VPNのようにオフィス内の環境をそのまま外出先でも使えるような仕様が求められています。

――御社のラインナップではJRC製品が唯一、構内PHSとして利用できるようになっています。なにか理由があるのでしょうか。

山本氏
 JRC端末には事業所用コードレスシステムに対応したプロトコルが入っています。しかも、さまざまなメーカーのPBXにまんべんなく繋がるようになっています。PBXは交換機によって、独自の仕様が盛り込まれており、端末がそれぞれの交換機と接続試験をやるとなると半年近くかかことが多いです。しかし、JRCさんはそのあたりのノウハウも蓄積されており、事前にPBXメーカーとも調整をしているので、対応するPBXがとても多いのです。これだけのPBXに対応できるのは他のメーカーでは考えにくいです。

 法人向け端末ということで、右ソフトキーに任意のサイトへのリンクを仕込むこともできる

――ウィルコムでは既存のPBXを活用できる「W-VPN」を訴求していますが、実際のところ、市場の反響はどうなのでしょうか。

山本氏
 マーケット的には温まってきています。社内で使っている内線をそのまま外に持ち出せるというのが評判がいいです。他社も追随してきたことで、お客さんも比較検討するようになっています。

――他社でも社員間の無料通話プランを相次いで投入してきています。競争が激化しているわけですが、ウィルコムとしてはどのあたりを差別化ポイントとして位置づけていますか。

山本氏
 病院をはじめ、まだまだウィルコムじゃないと入れない企業はたくさんあります。また、料金的にはいろんなところが出していますが、トータルコストでの勝負、また既存のPBXとの連携などはウィルコムの強みと言えます。

――ありがとうございました。




(石川 温)

2009/12/21 06:00