世界のケータイ事情

イヌ化のすすめ

 スウェーデンのTeliaSoneraが世界で初めてLTEサービスを開始したのは、2009年12月のことだった。それから約4年。今では、約100カ国でLTEの商用サービスが提供されている。多くの国の事業者が、ユーザーにLTEへの移行を促したり、優位性を示すために、通信速度やネットワークのカバレッジなどをアピールしている。例えばアメリカの大手事業者の場合はこんな具合。

キャリアキャッチコピー
Verizon WirelessAmerica's Largest 4G LTE network
AT&TNation's fastest and most reliable 4G LTE network
T-Mobile USFastest nationwide 4G LTE network

 微妙に表現が違っていて工夫が感じられるが(そうでもないか)、このキャッチコピーを見る限りでは各社の違いはあまり感じられない。

“Be more dog!”(筆者撮影)

 そこへ行くと、英国のO2 UK(O2)のアプローチはかなりユニークだ。2013年8月のLTEサービス開始に先立って、同社が開始したキャンペーンは、「Be More Dog」(もっと犬のように)と何とも不思議なタイトルがついている。LTEと犬に一体何の関係が? という疑問に対し、O2は次のように説明している。

――O2は、犬から多くのことを学べると考えています。犬にとって、人生(犬生?)は驚きにあふれています。退屈なんかしてられません。世界には様々な新技術があり、我々がそれを利用するのを待っているのです。――

 CMに登場するのは一匹の猫。いかにも猫らしく、アンニュイな様子でソファに寝そべったり、窓の外をぼんやりと眺めたりしている。

ナレーション:「かつて私は猫だった。毎日が同じ。たまに気分が乗ることもあるけど、すぐに興味を失う。全てが『別に』って感じ。でも、突然、こんな言葉が私を襲った。『なぜそんなに猫らしくしてるんだ? なぜもっと犬のようになろうとしないんだ?』」

 ゆっくりとドアに向かい、家の外へと出ていく猫。そして、クイーンの名曲「Flash」をバックに、街を駆け抜け、穴を掘り、フリスビーを追いかけ、池に飛び込み、犬たちの先頭に立って草原を疾走していく。「世界は驚きに満ちている。Be More Dog!」

 これまでのところ、O2はLTEユーザー数を公表していないので、果たしてこのキャンペーンの効果が実際にどれほどあったのかはわからない。YouTubeのO2公式ページにあるこのCM映像は300万回以上も再生されており、ハロウィンバージョン、クリスマスバージョンなどシリーズ化しているところを見ると、好評を博しているのは確かなようだ。

 ちなみに、英国最大手のEverything Everywhere(EE)も、LTEの開始に合わせ、かつて人気だったラブラドール犬のCMを復活させた。また、LTE限定ではないが、第4位のThree UKのCMには、スコットランド原産のシェトランドポニーが登場し、フリートウッド・マックの「Everywhere」にあわせて、ムーンウォークダンスを披露している。

 英国人は、保守的とか古いものを大切にするといったイメージがあるが、その通りだとすると「LTE? 別に必要ないし」と、すぐに飛びつくようなことはしなさそうだ。新しい技術やサービスを使うことは、それなりにハードルが高いことなのかもしれない。今後、英国のLTE加入者が順調に伸びていったとしたら、それはきっと動物たちのチャレンジが一役買っているからに違いない。