スマホで楽しむロンドン五輪

 KDDI総研 日野高志
 KDDI総研調査1部。8月末に初めて訪れた後、いったん日本に戻り、一週間後に再度訪問することになったミャンマー。街中にある金ピカの寺院“シュエダゴンパゴダ”の美しさに圧倒される。


 いよいよ7月27日からは4年に一度のスポーツの祭典「オリンピック」、8月29日には「パラリンピック」がロンドンで開催される(一部の競技は開会式に先立ち、7月25日から)。

 今回のオリンピックはこれまでと違い、スマートフォンやタブレットが本格的に普及し、簡単に戸外でネットに接続できるようになって初めての大会でもある。競技結果の情報収集や、会場に行けなかった競技の映像・動画など、いろんな場面でスマートフォンが活躍することになるだろう。ロンドンやその周辺ではオリンピックに間に合わせるよう、インフラの整備も進められている。

ユーロスターの発着駅であるセント・パンクラス駅(筆者撮影)

 たとえば、欧州全域から多くの観光客が訪れると思われるが、ロンドンに大陸から陸路で入るには、“ユーロスター”を利用することになる。ユーロスターとは最高時速300kmを誇り、パリ~ロンドン、ブリュッセル~ロンドンをつなぐ国際高速列車である。大陸(フランス北部リール)~ロンドン間のドーバー海峡を渡る“英仏海峡トンネル”の全長は実に50.5kmに及び、日本の青函トンネルの53.85kmに次ぐ世界第2位、海底部分の距離では37.6kmと世界一の長さを誇る。これまでトンネル内は、ケータイの圏外であったが、現在、設備工事が行われており、オリンピックまでにはこの50kmを超えるトンネル通過時も通話やインターネットが使えるようになる見込みである。

 ロンドン市内に入ってからの移動で活躍するのが地下鉄だ。世界最古の歴史を誇るロンドンの地下鉄は、独特の丸いトンネルの形状に由来して“Tube”(チューブ)という愛称で親しまれている。トンネルのサイズはその古さのためか、たいへん小さく、車両もトンネルに合わせ上部を丸くするくらいギリギリの大きさだ。2011年には駅や車両内のケータイのエリア化について検討されたことがあったが、コストの大きさのために断念している。しかし、ここへきて朗報があった。地下鉄を運営するロンドン市交通局が、無線LANを整備し、駅構内でのデータ通信に対応することを発表した。計画では、ロンドン市内の200以上ある駅のうち、まずは主要な80駅から無線LANサービスをスタートし、年内に120駅のカバーを予定している。オリンピック期間中は列車の運行情報に無料でアクセスできるという。

 では、駅から出たロンドン市内の通信環境はどうだろうか。もちろんケータイのネットワークは市内全域をカバーしているが、ロンドンでもスマートフォン等の普及とともに通信量が増加、携帯電話会社がその対策に追われているのは日本と同じである。そこに世界中から人が押し寄せるため、ケータイのネットワークが混み合うことは容易に想像できる。ここでも無線LANが活躍しそうだ。ロンドンでは市内全域でサービスを提供する大手通信事業者の有料サービスのほか、大手ハンバーガーチェーンをはじめ、多くのレストランやカフェ等で無料の無線LANが提供されている。最初に指定されたページで名前やアドレスなどを入力し、その後、自分で設定したIDやパスワードを入力すればつながるようだ。

テムズ川とロンドンアイ(筆者撮影)

 以上は、ロンドン市内の事情だが、日本にいてもこれまで以上に楽しめそうだ。今回は、NHK、民放のどちらもテレビで生中継しない競技の一部についてインターネット経由で映像が配信されることになった。もちろん、PCだけでなく、スマートフォンやタブレットでの視聴も可能である。

 昨年はウィリアム王子とキャサリン妃のご結婚、つい先日はエリザベス女王即位60周年と記念行事が続くイギリスは、今度はオリンピック一色となるだろう。でも、盛り上がるのは日本も同じこと。がんばれ日本!

2012/6/27 09:00