ギャングもソーシャル

 KDDI総研 藤原正弘
 KDDI総研総務企画部。専門は情報通信全般の社会・経済分析ということになっていが、昨今クルマの情報化に関わる時間が増えている。


 いまどき、ケータイをチェックするのは、電話やメールの着信じゃなくて、SNSの友だちの動向だったりする。ネットの世界の代表的なキーワード「ソーシャル」。アプリもサービスも「ソーシャル」とつければ売れる……、かどうかは知らないが、ソーシャル性を持たないサービスは衰退していくだろう。電話やメールをしなくても、友人の近況が常々わかるのが、mixiやFacebook、TwitterなどのSNSの便利さだが、当然ながら良からぬことを考えている輩にとっても便利だ。

 もともとインターネットは匿名性ゆえ、正体を隠して活動するには好都合だが、匿名でありつつ仲間内だけにはわかるというのは、地下組織のコミュニケーションにはうってつけだ。

 映画や小説の世界でしか知らないが、麻薬や銃器の取引や、誘拐の身代金取引にも都合がいいように思える。昔だったら、取引のサインとして、新聞に「母危篤、すぐ帰れ」といった、尋ね人の広告をだしたりしたようだが(これも昔テレビか映画で見た場面)、それだと第三者を介することになるから、「足」がつく可能性を増やすし、なんといっても時間がかかる。Twitterだったら、すぐサインを送れるし、そのメッセージをサインとしてわかる人だけがサインとして受け取ることができる。たまたま誰かに見られることがあっても、普通はそれがサインだとは分からない。

 これじゃ地下組織がますます栄えるばかりじゃないかと思ったら、捜査当局も指を加えて見ているわけではなかった。海外では、SNSを使って警察が容疑者の情報を集めている例もあるし、また、情報提供者からの密告も安全にできる。さらに、綿密な調査で地下組織のSNSのアカウントを探り当てれば、そこから相手の動きが手にとるようにわかるし、うまく行けば芋づる式に彼らを一網打尽にできるというものだ。

 現に、サンフランシスコの警察はTwitterで麻薬取引の情報提供を受け、ギャングの一味を逮捕することができたという報道や、イタリアでもFacebookを利用していたマフィアのボスが逮捕されたという報道がある。彼は、有名な指名手配犯だったが、ギャングの代名詞とも言える「scarface」という名前でFacebookにアカウントを持っており、逃亡する先々でFacebookに投稿していたようだ。今では、スマートフォンひとつ持っていれば、世界中どこにいても人間関係のつながりという面で、オンラインでいられるのだ。今回の例は、その投稿内容を追っていた捜査官が居場所を割り出し逮捕につながったということである。ちなみに、scarfaceという言葉は、「傷のある顔」の意味で、かの有名なギャング「アル・カポネ」のニックネームでもあったし、アル・パチーノが主演したギャング映画のタイトルでもある。

 普段表に出られないからこそ、ギャングたちは自己顕示欲が鬱積しているのかもしれない。scarfaceと名乗るのもそうだし、SNSの捜査のきっかけになるのは、一般人にはそれと分かるのかどうか知らないが「○○で、○人バラした」というような自慢話なのだそうだ。「tweetは災いのもと」というのが麻薬取引のギャング一味を捕らえたサンフランシスコ群保安官氏のコメントだ。

2010/3/31 11:33