石野純也の「スマホとお金」
mineoがはじめる月額250円の新料金プラン「マイそくスーパーライト」の特徴は? ほかにはないサービスを支えるしくみを解説
2023年2月16日 00:00
オプテージの運営するmineoが、2月22日に新たな料金プランを導入します。「マイそくスーパーライト」がそれです。
mineoは、容量別の「マイピタ」と通信速度別の「マイそく」の大きく2つに料金体系が分かれていますが、マイそくスーパーライトは後者の新料金。ほかの「マイそく」のプランと同様、通信速度が制限される代わりに、月額料金はわずか250円と格安です。“格安スマホ”や“格安SIM”とも呼ばれることがあるMVNOの面目躍如と言える料金設定と言えるでしょう。
速度制限などがある一方で、マイそくはデータ通信が使い放題になります。では、なぜ大手キャリアから回線を借りているMVNOが、通信速度を落とすことで使い放題のサービスを安価に提供できるのでしょうか。ここでは、マイそくスーパーライトの特徴を紹介していくとともに、格安を実現できるMVNOならではの仕組みを解説します。
1年でラインナップを広げるマイそく、32Kbpsのスーパーライトが登場
マイそくは、昨年3月に導入された新しい料金体系。mineoも含め、一般的なMVNOはもちろん、大手キャリア自身もデータ通信の容量別に料金を設定していますが、 マイそくがおもしろいのは、これを速度別にしたこと です。22年3月時点で導入されたのは、通信速度が1.5Mbpsの「スタンダード」と、3Mbpsの「プレミアム」。前者は990円、後者は2200円で、データ容量に制限はありません。
当初は2つの選択肢しかなかったマイそくですが、2022年8月により速度を抑える代わりに料金を下げた「マイそくライト」が導入されます。こちらの料金は月額660円。通信速度はスタンダードの1.5Mbpsより遅く、300Kbpsになります。300Kbpsだと、体感的には、アプリのダウンロードや動画視聴が厳しい速度ですが、本稿のような記事なら少し待てば開けます。ある程度用途が絞られる代わりに安価に維持できるのが、マイそくライトの特徴と言えるでしょう。
この3プランのさらに下を行く料金プランが、2月22日にスタートするマイそくスーパーライトです。冒頭で述べたように、月額料金はわずか250円。日本通信やHISモバイルが290円の料金プランを展開していますが、金額だけで言えばそれをも下回る設定です。ただし、データ通信の速度はマイそくライトよりさらに遅い32Kbps。画像などがあった時点でWebサイトの閲覧も厳しく、ほぼほぼテキストメッセージ専用の料金プランと言えそうです。
通信速度の上限は、基本的に上記のとおりですが、1つだけ例外あります。それが、(主にサラリーマンにとっての)お昼休みの時間帯。正午から午後1時にかけてのみ、いずれのプランも32Kbpsに速度が制限されます。その理由は後述しますが、マイそくスーパーライトは、この 通信速度を全時間帯に拡大した料金プラン とも言えそうです。
バックアップや音声通信のユーザー向き、24時間データ使い放題も
これまでの「マイそく」は、どちらかと言うとお昼休みの時間を避けて使うことでお得になる料金プランでしたが、「マイそくスーパーライト」のように32Kbpsまで制限されてしまうと、使いたくてもあまり使えないのが実情です。“使う”というより、回線を“維持”しておくための料金プランと言っても過言ではないでしょう。いざという時のバックアップとして契約しておくプランというわけです。
「維持はできても、32Kbpsだといざという時に使えないのですが……」とツッコミが入りそうですが、このようなときのためにオプションの「24時間データ使い放題」も用意されています。もともと「マイそく」はデータ通信が使い放題のため、名称がやや矛盾しているようにも思えますが、これは、24時間限定で速度制限を解除するというもの。これを使うと、どの「マイそく」のプランでも速度の制限がなくなり、容量別プランのマイピタと同速度が出るようになります。
「24時間データ使い放題」は、アプリのダウンロードなどで本当に高速通信が必要なときや、正午から午後1時までの32Kbpsに制限される時間帯に通信する必要があるときなどをターゲットに作られたオプション。その意味で、24時間とは言え、1.5Mbpsのマイそくスタンダードや3Mbpsのマイそくプレミアムで役立つ時間帯は限られていました。 一方で、300Kbpsのマイそくライトや、32Kbpsのマイそくスーパーライトでは話が変わってきます。
特にマイそくスーパーライトを契約している場合、事実上、テキストメッセージ以外の通信はかなり厳しいため、この回線を使いたいときには、24時間データ使い放題オプションを有効にすることになるでしょう。普段は通信速度が制限されていて、使いたいときだけオプションを購入するという意味では、コンセプトがpovo2.0に近いと言えるかもしれません。マイそくの中で、さらに異質なのがマイそくスーパーライトなのです。
マイそくスーパーライトの登場によって、mineo回線をバックアップとして持っておきやすくなりました。3月下旬以降には、KDDIやソフトバンクから予備回線サービスが登場する予定ですが、料金的は「数百円の下の方」(ソフトバンク 宮川潤一社長)になることを考えると、mineoも十分対抗できる価格と言えそうです。3キャリアから回線を選べて、かつau回線とドコモ回線はeSIMにも対応するため、予備回線サービスが提供されないキャリアやMVNOのユーザーにも選びやすいのは、同社の強みになります。
無制限かつ速度別の料金体系と相性のいいMVNOの仕組み
MVNOの中でも珍しい速度別の料金プランとなるマイそくですが、むしろ、こちらの方が容量別の料金プランよりも“MVNOの仕組み”との相性がいいような印象も受けます。MVNOが大手キャリアから回線を借りる際の単位が、「MB」ではなく、「Mbps」だからです。もう少しかみ砕くと、 1秒間にどれだけのデータを流せるかというパイプの太さに対してお金を払っている と言えるでしょう。
この価格のことを「接続料」といい、基本的には相互接続という仕組みでサービスを提供するMVNOに対し、メニュー化された料金が提示されています。たとえば、NTTドコモの場合、MVNO向けの資料に次の料金が明示されています。22年度の料金は、10Mbpsに20万3270円、これを超えた際には1Mbpsごとに2万327円がかかります。MVNOが20万3270円を支払うと、1秒間に10Mビット(1.25MB)のデータを流せるだけの帯域を借りられるというわけです。
mineoのマイそくスーパーライトは32Kbpsのため、非常に単純化して割り算をすると、10Mbpsで312回線が同時に通信し続けられることになります。もっとも、これをそのままユーザー向けの料金に転嫁すると、データ通信部分だけで約650円になってしまいます。ただ、通信といっても常時データが流れているわけではありません。マイそくスーパーライトの場合、回線維持のために契約するユーザーもいることから、実際の通信量はもっと減るはずです。
マイそくにデータ容量の制限がついていないことも、帯域課金の仕組みで説明がつきます。1Mbps単位で借りている帯域を、MbpsなりKbpsなりの単位でユーザーに提供しているからです。通信した総容量で課金されていないため、一定時間に流れるデータの流量を抑えられさえすれば、あえて毎月のデータ容量でユーザーに制限をかける必要性はなくなります。その意味で、帯域課金はデータ容量無制限を定額で提供しやすい仕組みです。
一方で、正午から午後1時までの間、32Kbpsに制限されるのも、この接続方法が影響しています。この時間帯はユーザーの多くがお昼休みに入り、一斉に通信を始めるため、MVNOが借りている帯域がひっ迫しがちになります。3Mbpsなり1.5Mbpsなりでガンガン通信されてしまうと、混雑に拍車をかけてしまいかねません。逆に、お昼さえ通信量を抑えられれば、残りの時間の帯域を有効活用することで通信料を下げる余地が生まれます。これを料金プランという形にしたのが、マイそくというわけです。大手キャリアでは、こうした料金体系を採用する意義があまりありません。その意味で、マイそくはMVNOならではの料金プランと言えるでしょう。